ある日、ほぼ日に届いた1通のメール。
映画館でよく目にする「映画チラシ」を
30年以上趣味で集めている方からで、
「家に3万枚ほどあるのですが、
よかったら見に来ませんか?」というお誘いでした。
映画チラシが‥‥えっ、3万枚?!
しかも、この方がすごいのは、
ただチラシを集めているわけではなく、
「俳優別」に分類したファイルをつくり、
その俳優のデビューから最新作まで
出演した全作品のチラシを集めるという、
かなり変わった収集癖をお持ちの方だったのです。
誰に見せるでもなく、趣味で集め続けた映画チラシ。
その貴重なコレクションの数々、
ご自宅におじゃまして見せていただきました!

前へ目次ページへ次へ

06 終わりなき趣味の世界

──
Tさんの趣味について、
ご家族はどんな反応をされているんですか。
Tさん
無反応です(笑)。
ぜんぜん興味はないみたいで。
──
ご友人の方とかは。
Tさん
いまの家に引っ越してきて10年なのですが、
友達を呼ぶこともないですし、
SNSもやっていませんので、
誰かに見せる機会はほとんどないんです。
──
じゃあ、このコレクションを見たのって‥‥。
Tさん
家族と数人の友人。
あとはファイル棚をつくった
リフォーム業者さんくらい(笑)。
──
そうなんですね(笑)。
Tさん
なので、こうやって公に
コレクションの話をするのも、
ほぼ日さんがはじめてなんです。

──
ほぼ日にメールをくださったわけですけど‥‥
どうしてほぼ日だったんですか?
Tさん
私、ずっとほぼ日読者なんです。
それこそ「ガンジーさん」の頃からの。
「生活のたのしみ展」にも何度か参加してますし。
──
わっ、そうでしたか。
いつもありがとうございます。
Tさん
なので、軽い気持ちだったんです。
ほぼ日さんだったら
おもしろがってくれるかなって。
取材されるとは思ってなかったですけど(笑)。
──
メールをしてみようと思われたのは、
何か心境の変化とかがあったんですか。
Tさん
あるときChatGPTに何気なく聞いたんです。
「これこれこういう映画チラシの
コレクションがあるんだけど、どう思う」って。
そしたらChatGPTが、
「個人で持っている域を超えています。
アーカイブと言ってもいいです」と。
──
たしかに(笑)。
Tさん
チラシ自体はそもそも販促物なので、
1枚ずつバラバラに持ってても、
みんなそのうち捨てちゃったりします。
でも、これだけの数がそろえば、
何かの貴重な資料にはなるかもしれないなって。
──
何かに活用できるかもしれないと。
Tさん
私は趣味で集めているだけなので、
これをどうしたいとかはとくにないんです。
でも、ここまで個人で集めて、
しかも俳優別に分類している人も、
なかなかいないと思いますので。
──
配給会社に記録があったとしても、
デジタルデータって可能性はありますよね。
Tさん
もし紙で残っていたとしても、
自分の会社で扱った作品だけでしょうし。
──
そう思うとTさんのコレクションは、
ますます貴重ですね。
Tさん
このコレクションに価値があるのか、
あるいはぜんぜん価値がないのか、
そのへんのこともよくわかっていません。
自分がおもしろいから集めていただけで、
そもそも人に見せるつもりもなかったので。

──
映画チラシを集めていて、
一番うれしい瞬間ってどんなときですか。
Tさん
やっぱり、
ある俳優さんの出演作品のチラシが
すべて手に入ったときですね。
──
ファイルが完成したとき。
Tさん
全作品がそろってファイルが完成したら、
俳優リストのシートに
いつも「済」のハンコを押しているんです。
その瞬間が一番興奮しますね。
──
おーっ、これだ。

Tさん
これを押すときの達成感たるや(笑)。
といっても「完成の基準」も、
自分のさじ加減ひとつなんですけどね。
──
そうなんですか?
Tさん
なかには絶対に手に入らないものもあるんです。
情報としてチラシは存在しているけど、
極端に配布枚数が少なかったり、
どこを探しても出品されないものがあったり。
絶対に世に出まわらないレア物もあります。
とくに昔のものは‥‥。
──
そういうときは、どうされるんですか。
Tさん
そこはもうあきらめて、
それ以外がそろったら「完成」とします。
そうじゃないと心がおちつかない。
──
そうやって考えると、
俳優さんによってファイルの難易度が
ぜんぜんちがうわけですね。
Tさん
それが悩ましい問題なんです。
最近の俳優さんだったら、
根気さえあれば大抵そろう気がします。
オードリー・ヘプバーンくらい昔になると、
集めるのもかなり難しいです。
──
最近の俳優さんだと、
どういう方のファイルをつくっているんですか。
Tさん
最近だとティモシー・シャラメとか、
岡山天音さんのファイルもつくりました。
現在進行系のものだと、
柄本佑さんとか石橋静河さんとかですね。
──
ファイル、増える一方ですね(笑)。
Tさん
一生、増えつづけるでしょうね。
──
まさに終わりなき趣味。

Tさん
あと、この趣味がいいのは、
足腰が鍛えられるところです。
毎週チラシを集めるために、
映画館を何件もハシゴしないといけないので。
──
1日何軒くらいまわるんですか。
Tさん
新宿だと武蔵野館に行ってから、
TOHOシネマズ、新宿ピカデリー、テアトル新宿、
キノシネマ、シネマート、バルト9‥‥。
1回の遠征で1万5千歩以上は歩きます。
新宿行って、渋谷にも行って。
──
えぇ、それを毎週ですか?!
Tさん
毎週、もしくは2週間に1度はかならず。
2週間以上あいちゃうと、
パターンちがいがなくなっちゃったりするんです。
──
1回まわるだけでも、
けっこう集まりそうですね。
Tさん
1か月で100枚前後だから、
1年で1200枚くらいかな。
──
ひゃーー!
Tさん
週末に映画館をハシゴする日は、
もうほんとにクタクタになるんですけど、
全部まわったあとで、
お決まりの飲み屋さんで一杯やるんです。
それが至福のひととき(笑)。
──
チラシを眺めながら(笑)。
Tさん
だいたい土曜日に映画館をハシゴして、
日曜日は家で整理をしています。
すぐに整理しないとどんどん溜まっちゃうので、
何年も週末はそのルーティンですね。
──
それを30年近く‥‥。
Tさん
20代の頃からコツコツはじめて、
気づけば私も60代になりました。
もらったチラシを捨てることはないので、
ひたすら増えていく一方なんです。
たぶんずっと整理する日々がつづくと思います。
もはや人生の一部ですね。
──
整理されてないチラシって、
まだまだあるんですか。
Tさん
大量にあります(笑)。
棚にあるのは完成したファイルだけなので、
じつは未整理のものが大量にあります。
早くなんとかしないと。
──
それでも週末はまた映画館に‥‥。
Tさん
はい、その予定です。
新しい映画は待ってくれませんので。

(おわります)

2026-08-24-MON

前へ目次ページへ次へ