5月31日午前11時からはじまる
「ほぼ日ストアお買いものキャンペーン2020」の
セールの売上の一部を、子どもたちのためにつかいます。
発案した糸井重里の思いをどうぞ。
寄付先となる「むすびえ」さんについても
取材しましたので、あわせてお読みください。

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1.すべての人に開いている場所。 (むすびえ・湯浅誠さんインタビュー)

NPO法人「むすびえ」のみなさんは、
「こども食堂の支援を通じて、
誰も取りこぼさない社会をつくる」
というビジョンのもと、
全国の「こども食堂」への支援を行っています。
理事長を務める湯浅誠さんに、
その活動内容についてうかがいました。全3回です。

■「むすびえ」について
2018年12月にNPO法人化した
「こども食堂」をサポートする団体です。
思いを少しでも共有してくださる方が、
ここで結び会って欲しいという願いから、
「むすびえ(結び会)」と名付けられています。

公式サイトはこちら

※今回の寄付にあたっての
糸井の言葉はこちらです(前日のページへ)

湯浅誠さん。社会活動家・東京大学特任教授。
「むすびえ」の理事長を務めています。 湯浅誠さん。社会活動家・東京大学特任教授。 「むすびえ」の理事長を務めています。

※取材時の2020年5月18日は、
東京都が緊急事態宣言下にあったため、
ZOOMにてオンラインインタビューを行いました。

ーー
よろしくお願いします。
「むすびえ」さんが支援されている
「こども食堂」について、現在は
コロナ危機で形態が変わっているかもしれませんが、
まずはそもそもの定義を教えていただけますか。
湯浅
私たちが定義する「こども食堂」は、
「子どもが1人でも行ける無料または低額の食堂」です。
全国に存在するのですが、名称だけでは判断できなくて、
「こども食堂」だけでなく、
「地域食堂」「スマイル食堂」「にこにこ食堂」
というふうに、いろんな名前が付いています。
――
「こども食堂」という
名称が付いているとは限らないんですね。
湯浅
はい。そして
「子どもが1人でも行けるけれど、
子ども専用食堂ではない」
というのも大きな特徴です。
大人が10人いても、その中で
子どもが1人でも来られるようになっていたら、
「こども食堂」と言っていただいてかまいません。
それが私たちが考えている「こども食堂」の定義です。
――
「子ども専用ではない」ということは、
たとえば、近所の大人であったりとか、
ひとり暮らしの高齢者であったりとか、
誰でも行けて、そこで集える場所‥‥
というようなことでしょうか。
湯浅
まさしくそうです。私たちは、
「子どもを真ん中に置いた
多世代交流型の居場所づくり」と言っているのですが、
子どもを中心に、親世代、高齢者世代といった
多世代が交流する「地域の居場所」ですね。
運営しているのは民間ボランティアの人たちで、
毎日3食を提供しているところもあれば、
月1開催のところもあります。
家の人の帰りが遅い子どもが
ひとりでご飯を食べるときにも気軽に利用できますし、
近所の大人も行っていただけます。

山口県宇部市のみんにゃ食堂(むすびえさん提供) 山口県宇部市のみんにゃ食堂(むすびえさん提供)

――
地域の居場所、と聞くと、
本当に誰でも行っていいんだ、と感じます。
湯浅
そうです。
ただ、これはいまだにそうなんですけど、
「こども食堂」というと、
貧困家庭の子どもを集めて食事させるところ、
というイメージが非常に根強くあって、
「あそこは、経済的に厳しい家庭の、
食べられない子が行く場所なんだ」
というふうに思ってる方が多いです。
――
ああ、そういう限定された
イメージがあるんですね。
湯浅
別に誰かが悪気があって
そう思っているというわけではないんです。
最初に「こども食堂」が注目されはじめたのが
2015年なのですが、その年は、
子どもの貧困問題が非常に注目された年で、
その社会問題とセットで「こども食堂」が
報道で取り上げられたものだから、
人々の頭の中で、「こども食堂」と
子どもの貧困問題がセットになっちゃっているんです。
――
なるほど。
湯浅
実際は、「どなたでもどうぞ」でやっている
オープン型ーー私たちは「共生型」と呼んでいますが、
そういう「こども食堂」が全体の8割です。
残り2割は、たしかに住所なども公開しないで、
経済的に厳しい家庭だけに対応している
「こども食堂」があります。
でも世の中は、この2割が10割だと思っている。
実態と見られ方がずれているんです。
そうすると、
「うちの子があそこに行ったら、
学校でいじめられることになるんじゃないか」
などと親が誤解して、
子どもから「こども食堂」で
いろんな人と交流する機会が奪われかねない。
それはとても「もったいないこと」だと思っています。
そこを直していかないといけない。
「こども食堂」は、もちろんこどもの貧困対策と
無縁な場所ではないですけど、
あくまでそれは学校と同じです。
つまり、学校にもすべての子が行ってますよね。
――
はい、行ってます。
湯浅
学校にはすべての子が行っているけど、
中には課題を抱えた子がいます。
保育園も、学童保育もそうです。
「こども食堂」もそれと同じで、
すべての子が行けるけれども、
中には課題を抱えた子も来ている。
もちろん来てもかまわないし、
むしろぜひ来てほしいと運営する人は思っていますが、
「すべての人に開いている場所なんです」ということを、
ご理解いただくというのは、
やっぱりなかなか簡単にはいかないです。
――
湯浅さんは、「むすびえ」の理事として
「こども食堂」を支援していらっしゃるわけですが、
最初の関わりから教えていただけますか。
湯浅
「こども食堂」は、2012年に
大田区の青果店「きまぐれ八百屋だんだん」を営む
近藤さんという一人の女性がはじめました。
当時は私も存在を知らなかったんです。
新聞などで「こども食堂」を取り上げる報道が増え、
話題になりはじめたのが2015年、
私が関わることになったのもそのころです。
近藤さんが「こども食堂」の生みの親なら、
東京の豊島区に「こども食堂」の育ての親と言える
栗林さんという女性がいるんですけど、彼女から
「こども食堂で全国キャラバンをやりたい」
と相談を受けまして、
同様のことを私も考えていましたので、
そこから、「こども食堂」に本格的に関わりはじめました。
2018年の12月には「むすびえ」という団体を
立ち上げまして、NPO法人として支援しています。
――
「こども食堂」は、
今どれくらいあるんでしょうか。
湯浅
朝日新聞の調査では2016年に319ヵ所、
その後、私たちが調査して
2018年に2,286、2019年に3,718ヵ所です。
2018から2019年の1年で1,400ヵ所増えてます。
ずっと増え続けていまして、
今は、全国に約4,000ヵ所ほどあります。
ーー
そんなにたくさん存在するんですね。
具体的にどのような形で
支援をなさっているんでしょうか。
湯浅
「むすびえ」はまだまだ新しい団体ですが、
行っている支援内容は、大きく分けて3つあります。
1つ目の柱は、「こども食堂」の応援です。
約4,000ヵ所ある「こども食堂」と
私たちが1対1で関係を作ろうとすると、
1対4,000になっちゃうので、ちょっとむずかしい。
今は県ごとに「こども食堂」のネットワークがあるので、
そういう各地域のネットワークと
パートナーシップを結んで、
物資や資金を提供したり、
新しい地域ネットワークの立ち上げを
お手伝いしたりしています。
今、35都道府県にネットワークができていますので、
2022年までには47都道府県全部にネットワークを
作ろうと呼びかけています。
2つ目の柱は、「企業協働」です。
企業や団体、「ほぼ日」さんもそうですけど、
「こども食堂」に関心を持ってくださったときに、
どこを入り口に関わればいいのか
迷われる方がたくさんいます。
そこで、私たちが窓口になって、
物資や資金の寄付をお受けしています。
企業側からすると、
「こども食堂って、聞いたことはあるけれど、
どんな感じなのかわからない」と思われるでしょうし、
「こども食堂」の側からすると、
「企業って、うちを利用しようとするんじゃないの?」
というような心配もあるし、それは言わば
お互いがお互いの姿を見えてないわけです。
そこを、間に立って、ハードルを下げて
繋いでいくという役割を担っています。
3つ目の柱が、「調査・研究」です。
「こども食堂」は、
政策化されていない民間の取り組みです。
小学校が全国に何校あるか、というのは、
文科省による「学校基本調査」で数を出しています。
つまり、調査の時期になると、文科省から
「そちらの自治体にいくつあるか教えてくれ」
と指示がきて、自治体が、
自分の市内の小学校を数え上げて、県に上げて、
県が国に上げて‥‥という仕組みがあります。
だけど、「こども食堂」に関しては、
そういう仕組みがないし、
最初にどこかに登録しなきゃいけない活動でもないし、
全国にいくつあるのか行政は知りません。
行政にも民間にも調査できる団体がないので、
そこを私たちがやっているということですね。
――
たしか数年前に、「こども食堂」の保険に関する
クラウドファンディングを
立ち上げられたのを拝見しました。
それも事業の一環ということですよね。
湯浅
あ、それは2年前ですね。
「むすびえ」の前身団体として行ったプロジェクトです。
全国200の「こども食堂」と一緒に、
「こども食堂」で、万が一怪我をしたときや
食中毒などがおきたときの
傷害などに効く保険料を3年分集めました。
「こども食堂」は民間のボランティアによる活動なので、
「衛生面は大丈夫か?」
と心配される方もいらっしゃいます。
「そこは、こども食堂としても十分気をつけていて、
より安心・安全な場所になるように努力してます」
ということをわかっていただく必要があるので、
そうしたキャンペーンを通して
社会に示していくことが重要だと思っています。

(つづきます)

ほぼ日ストア
お買いもの応援キャンペーン2020
5/31(日)11時〜 6/19(金)11時

上記期間中の「セール」の
売上の一部を寄付します

<寄付先>
NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

※寄付総額はセール終了後に、
あらためてお知らせいたします。

直接、寄付をされたい方は
こちらからどうぞ。

むすびえ公式サイト
「こども食堂を支援したい」

「新型コロナウイルス対策緊急支援」
むすびえさんによる

クラウドファンディングのページです。
(~2020/7/31まで)

こども食堂再開支援Facebookグループ

 

(インタビュー「2」は6/1公開です)

2020-05-31-SUN

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