SNSを見ていて、ある情報にびっくり。
リポストしようと思ったら、
フェイクニュースだった、
ということがありませんか？
わたしはよくあります。
最近、フェイクニュースや
いろんな情報に振り回されているかもしれないと
感じている方に読んでいただきたいです。
フェイクニュース問題に取り組んできた
日本ファクトチェックセンターの古田大輔さんに
フェイクニュースのこと、
情報とのつき合い方を教えてもらいました。
担当は「ほぼ日」のかごしまです。
（取材は2025年6月に行いました）
古田大輔（ふるた・だいすけ）
福岡県生まれ。
大学卒業後1年間の国内外の放浪を経て、
2002年朝日新聞社に入社。
社会部、アジア総局、シンガポール支局長などを経て、
デジタル版の編集を担当。
2015年に退社し、BuzzFeed Japan創刊編集長に就任し、
ニュースからエンタメまで統括。
2019年に独立し、
ジャーナリスト/メディアコンサルタントとして
活動している。
2020年秋から2年間、
Google News Labティーチングフェローとして、
延べ2万人超の記者や学生らに
デジタル報道セミナーを実施。
2022年秋から
日本ファクトチェックセンター（JFC）編集長に就任。
慶応義塾大学や近畿大学で非常勤講師を務める。
- 古田
- 「ヨガが好きな人たちは
反ワクチンの陰謀論にハマりやすい」という報告が
あります。
「なぜ？」と思いませんか？
- ──
- わたしもヨガが好きです‥‥。
なぜでしょうか？
- 古田
- 考えていくと、なるほどって思うんですよ。
ヨガが好きな人たちは、
自分で自分の体の調子を整えたい人が多いんですよね。
そういう人はオーガニックなものを好むことが多い。
また、体調を薬で整えるよりも
自分で整えたいという、自律心の強さがある。
ぼくもトレーニングが好きなので、傾向的には近いです。 - そうすると、体の中に異物が入ることに対して
本能的な警戒心がある。
そうすると「ワクチン」は異物を体に入れるわけですから、
警戒心が生まれますよね。
警戒心がある中で、
「実は、ワクチンって危ないんだよ」
という情報を聞いたら
「あ、やっぱり危ないんだ」と思ってしまう。
自分の警戒心を肯定してくれる情報だからです。 - こういうことをきっかけに
非科学的な情報も受け入れるようになってしまう
ことはあるんです。 - これは一例に過ぎませんが
人間は元々持っている性格とか好みと、
偽情報を信じてしまうことは関連性があるんです。
- ──
- 性格や好みはなかなか変わらないですからね。
- 古田
- 偽情報問題は
インターネットが生まれたからできたわけではなくて、
「流言飛語」という言葉があるように、
ずっと前からあるわけですよね。 - だから、情報弱者の人が騙されるわけではないんですよ。
基本的に、誰でも間違った情報を
正しいと思ってしまう可能性があることは
知ってほしいと思います。
- ──
- アルゴリズムやフィルターバブル、
エコーチェンバー、認知バイアスなどの
言葉を知っていたら
偽情報に惑わされにくくなりますか？
- 古田
- 情報に対する警戒心は生まれますよね。
- メディアリテラシーの中でも
重要だと言われるのが「クリティカルシンキング」。
批判的な思考と直訳される言葉で、
「クリティカルシンキングを心がけましょう」
と言われるんですよ。
ただクリティカルって言っても、
単に揚げ足をとって批判することではなくて、
「自分が得た情報を吟味しましょう」ということです。
でも「吟味する」といっても、
何をどう吟味すればいいかがわからないですよね。 - アルゴリズム、フィルターバブル、
エコーチェンバー、認知バイアスという言葉を
知っていたら、
自分がある情報を見て、
その後にそれに近い情報を次々と見るようになったら、
「私はこの前YouTubeで
この人の動画を見たから、おすすめされているんだな」
と理解ができる。 - そうすると、「今この動画を見ているからといって、
みんなが見ているとは限らない」
と一歩引いて考えられるようになると思います。
- ──
- そうですね。
私が同じ人の動画ばかり見ているのは
アルゴリズムによりおすすめされているからであって、
他の人も自分と同様にこの動画を見ているわけではないと
冷静に考えられるかもしれません。
- 古田
- 「いろいろな情報を見て、確かめました」
という人が、陥りがちな罠があります。
「いろいろな情報」はすべて似たような情報で、
出元は同じという罠です。 - これもフィルターバブルやアルゴリズムを知っていれば、
警戒心を持つことができるので、
知っておいてもらいたいなと思います。
- ──
- あと子どもたちのことも気になります。
今の子どもはデジタルネイティブで
生まれてすぐのときからネットに接しています。
インターネットのアルゴリズムやエコーチェンバーの中で
過ごしていたら、
自分の世界が広がらないですよね。
- 古田
- そうなんですよ。
ぼくが怖いと思っているのは、
新しいものを知る時間や機会が奪われてしまうこと。 - たとえば、ぼくは料理を好きになるチャンスが
あったかもしれない。
だけどアルゴリズムで
好きなトレーニングの動画をおすすめされるから、
そればかりを見てしまい、
料理を好きになる可能性が奪われてしまう
危険性があるわけです。
このことを「認知過程の自由がない状況」と言います。 - 何かの情報を知るときに、
自分で自由にいろいろな情報を集めたいじゃないですか。
幅広い情報を集めて、情報を取捨選択して
自分の認知を広げ、深めていきたいですよね。
だけど、ふと気づけば、偏った情報を見せられて、
気づかないうちに自由を奪われている状況になっている。
これがいまの時代の怖さなんですよね。
- ──
- 大人も認知過程の自由が奪われているけれど
子どもへの影響はとくに大きそうです。
- 古田
- そうなんですよ。
第一にできることとしては、
親がこの状況を理解しておく必要があります。 - YouTubeは子どもにとっても
次々と自分の好きな動画が流れてくる
天国みたいな場所。
ゲーム実況を見たら、
その子どものところには大量のゲーム実況の動画が
おすすめされます。
そうすると他のものに関心を持つ機会を奪われてしまう。
親側がこのしくみを理解しないと、止められませんよね。
- ──
- 実際にどう止めるのかは難しいですね。
外に連れ出したりして自然の中で遊んだり、
子どもにはいろいろな体験させたいんですけど、
あまりにもYouTubeの魅力が強すぎて。
- 古田
- 日本でも教育現場の先生が
メディアリテラシーを教えられる教材を作る動きはあります。
ただ、まだまだ足りてないと思います。
ぼくたち日本ファクトチェックセンターでも
教材を作って、配っていますが全然、足りていませんね。
- ──
- 心配になりますね‥‥。
大人も子どももインターネットを使うときに、
フィルターバブルの中にいる状態をイメージできたら、
一歩前進かもしれませんね。
（明日につづきます）
2025-09-28-SUN
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