こんにちは、ほぼ日の奥野です。
光石研さん主演でテレビドラマにもなった漫画
『デザイナー渋井直人の休日』の最新刊が出たので、
作者の渋谷直角さんと話してきました。
直角さんとわたくしと渋井直人は、ほぼ同世代。
50代のデザイナー渋井さんをとりまく、
おしゃれと加齢とペーソスとが交錯する日常を、
描く直角さんも、読むわたくしも、
少しずつ肌身で「実感」してきているようです。
おじさんによる、
おじさんのための‥‥かはわからないけど、
「俺たち、おじさん」について(?)、
わざわざ渋井さんの好きそうなおしゃれカフェで、
おじさんトークしてきました。

>渋谷直角さんのプロフィール

渋谷直角(しぶやちょっかく)

1975年生まれ。名前は本名。小山ゆう先生の『おれは直角』から名付けられた。マガジンハウスの『relax』でライター仕事をはじめ、同誌でマンガも描くようになり、以降、いろいろな雑誌やwebで主にマンガを描いている。

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第4回 おじさんには「気合」が必要だ

直角
ぼく、若いバンドのライブを観に行ったりとか
けっこうするんですね。
そのうちメンバーと仲良くなったりすると、
「次はゲストで入れますんで」
って気を遣って言ってくれたりするんですけど。
──
つまり「関係者枠」で、タダで入れるように。
直角
まあ、本当は、そっちのほうがいいんですけど、
20コくらい下の子に
タダでライブに入れてもらうって、
「ダサいよな」って思ってる自分がいるんです。
──
なるほど。ダサい。わかります。
そして「本当はそっちのほうがいい」‥‥って、
自分に正直ですばらしいですよ。
おじさんだってタダで入りたいですもんね。
本当に目の前に渋井さんがいるかのようだ。
直角
まあ、本心ではタダがよかったりしても、
「いや、大丈夫。
ちゃんと自分で買って入るから」って言ってます。
それでも、若い子的には
「いちおう、入れときますね」になるんで、
もう先手を打って、先に買うようにしてるんです。
──
そこまでしてるんだ。年の功!
直角
「いやいや、もう買ったから本当に大丈夫」って。
すると
「わあ、いつもすいません」ってなるんですけど、
「こいつ俺のことカッコいいと思ってるのかな?」
が、ちょっと疑問だったんですよ。
──
わはは、直角さんはつねに正直でいいなあ(笑)。
このカッコよさが、伝わってるかどうか。
でも、だからといって、
カッコいいって思われたいわけでもないですよね。
直角
そうなんだけど、
この美学は知ってほしいなと思ってます。
──
おじさんの美学‥‥。
直角
ずっと「ぜんぜん言ってくんねぇな!」みたいに
思ってたんで、
3年くらい経ったときに自分から言ったんです。
「俺、若い子のライブに
ゲストで入れてもらうのはカッコ悪いと思ってる」
ってことを。
そしたら、そこでようやく
「あ、そうだったんですね。カッコいいですね!」
って‥‥。
──
やっぱり伝わってなかった!
直角
そうなんですよ。だから、
自分で言っといてめちゃくちゃ恥ずかしかったです。
若いころ、自分の出るイベントがあったり、
本を出したりしたとき、
きちんと自腹で買ってくれる先輩って、
めちゃくちゃカッコいいなぁって、思っていたので。
──
大人のカッコよさを感じますね。実際ありがたいし。
でも、言い方が曖昧になりますけど、
カッコいい人って、
若い人にも対等に付き合ってほしいという気持ち
あるんじゃないかという気がします。
直角
そうそう。むやみに偉ぶるよりね。
それには「道化」を演じられるような覚悟というか、
マインドが必要だとは思うんです。
だから、
「自分で下げた自分」を埋め合わせてくれるような
自分の核となる何かを持っていたら、
心身の健康を保てるのかなとは思うんですけど。
──
自分にすら下げられっぱなしじゃ
生きていけませんもんね。いくらおじさんと言えど。
直角
そうなんですよ。
ただやみくもに若い子たちにナメられてるだけでは、
さすがにツラいです。
──
そこで、どう自分自身を保つかについては‥‥。
直角
やっぱり仕事をがんばるしかないんじゃないかなと。
──
生み出したもので見せていく。徹底的に。
それが、おじさんの生きる道。
その点、直角さんは、だいぶ「見せて」ますもんね。
ご自身の作品が、映画になったりドラマになったり。
直角
これはずっと言ってるんですけど、
ぼく、NIGO®さんみたいになりたかったんです。
憧れていたから。
当然、NIGO®さんにはなれませんでした。
でも、漫画でお金を稼げるようになったことは、
まあまあ、よかったのかなと思います。
さすがにここから人生の軌道修正もできないし。
──
あ、そう思われますか。
直角
ここ最近‥‥49、50、51とか、
そのへんの年齢に差し掛かってくるとわかった。
ああ、もうだいたい
輪郭どおりの自分になってるなあと感じますね。
つまり
「もっと大きなはずの自分を探す」時期は、
完全に終わってる。
──
ミスチル的に歌えばね。そうですか。
直角
何年か前までは、
俺は、もうちょっといけるんじゃないかなって
思ってたんですけど。
このいまの自分の枠の中でどうするか‥‥しか、
もうないんだろうな、と。
──
それは「あきらめ」ですか。
それとも、もう少し「達観」的な何かですか。
直角
どうだろう‥‥。今年で50になったんですけど、
これからの50代の人生は、
もう楽なほうへは逃げないと決めてはいるけど。
──
逃げない?
直角
しんどいことばっかりしようと思ったんです。
──
カッコいい。
直角
でしょ?(笑) ぼく、50になったからには
いちばんしんどいことやろうと思ってる。
具体的には考え中なんですが、
いまのぼくの日々のルーティンの仕事のうえに
めっちゃしんどいのを載っける‥‥
しかも、誰からも頼まれていないやつを。
──
それは、超絶カッコいいですよ。
直角さんの50代から目が離せないじゃないですか。
ぼく、カッコいいという価値観は、
いつまでも大事にしたいなと思ってるんですね。
直角
うん、うん。
──
でも、その「カッコよさの基準」というものが、
年齢によって変わってきたんです。
直角さんは、どうですか。
いま自分の思う「カッコいい」を言葉にすると。
直角
まずは、若い人にバカにされるおじさんですね。
今日ずっと言ってますけど。
それ以外で言えば、年に何回か、
ゴリッゴリにファッションを決めるおじさん
カッコいいと思ってます。
年に何回か、
パーティーでもライブでも何でもいいんですが、
上から下までぜんぶ、バッキバキのやつで行く。
実際、そういうライブを観たことがあって。
──
それは、お客さんたちが?
直角
そう、みんな同い年くらいだったんですけど、
往年のルードボーイ&ルードガール、
みたいな人たちが大集合していたんですよ。
おじさんもおばさんも、
みんなモッズとかスカとかフィフティーズ、
みたいなカッコしてタバコ吸っているんです。
最高だなこの空間、みたいな。
──
ただ単に「見た目」だけで言ったら、
当然、若いころの方がシュッとしてたのかも
しれないけれど、
また別のカッコよさがあったってことですね。
直角
そう、みんな同じバンドや音楽が好きで、
そこへ精一杯のおしゃれをして来てるんです。
もう服が体型に合ってないくらいの人も
いるんですけど、
あれくらい気合入ってたら、
ぜんぜんいまっぽくなくてもカッコいいです。
──
気合。
直角
そう。おじさんこそ「気合」です。
そこだけだと思う。
オレたちおじさんに残された、最後の希望は。

(つづきます)

2026-03-27-FRI

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