
フランス帰りのレ・ロマネスクTOBIさんに
あるとき、聞いてみたんです。
「シャンソンって悲しげな歌が多くない?」って。
そしたら、TOBIさんは
少し笑いながら「うん、みんな悲しいよね」って。
でも、その悲しみは、涙だけに彩られない。
ときにあたたかく、ときにユーモラスに、
人生まるごとを包み込むような大きさがあります。
演歌歌手の神野美伽さんが
「はじめてのシャンソン」で歌う予定の13曲を、
一曲ずつ、勝手気ままに、とりとめもなく、
TOBIさんとおしゃべりしました。
(歌唱順に話したわけではありません)
だまされて、老いさらばえて、すべてを失って。
それでもなぜか、どの歌も、どこか明るい。
人の人生の悲喜こもごもを、包みこんでしまう。
それが、シャンソンの優しさなのかも。
さあ、一緒に13の歌をめぐる旅に出ましょう。
担当はシャンソン係の「ほぼ日」奥野です。
ボン・ヴォヤージュ。
- ──
- ぼくは不勉強で知らなかったんですけど。
シャルル・トレネの名曲で、
世界中で愛されている‥‥そうなんです。
- TOBI
- トレネは「歌う狂人」と言われて、
暗いイメージのシャンソンの「陽」の部分を
一手に担っている人ですね。 - この歌はよく知らなかったけれど、
さぞかし明るい歌かと想像して聴いてみたら。
- ──
- どうでした?
- TOBI
- 注目したいのは、恋する「あなた」との
「すばらしい夢」も時に流され、
「残るのは冷たい風の音」……という部分。 - 冷たい風の音以外残っていない状態って。
- ──
- すべてを失いすぎている、と。
いくらなんでも。シャンソンとはいえ。
- TOBI
- 気づけば何も残ってなかったという歌が、
レ・ロマネスクにもあるんです。 - 「ジャン・フランソワの女」と言って、
タンスも冷蔵庫もフライパンも
家財道具一式、
便座も便座カバーまですべて持ってかれた
あわれな女の歌なんだけど。
- ──
- それは、ご自身の体験を元にしてますね?
サラリーマン時代の。
- TOBI
- はい、あれはまだアタイが
新入社員だったころの話‥‥。 - ある日、出社したら、社長が夜逃げして、
会社はもぬけの殻、スッカラカン。
コピー機やデスク類はもちろん、
蛍光灯もじゅうたんも電熱便座も、
金になりそうなものは、すべて。
ゴミ箱のゴミさえ捨ててあったわ‥‥。
- ──
- 綺麗さっぱりとね。
そうか、あの体験をもとにして書いた曲が、
「ジャン・フランソワの女」だったのか。 - あたたかい便座までなくした女のもとにも、
「冷たい風の音だけ」しか
残らなかったのでしょうか。
- TOBI
- あるいは、この歌の女性も
「夜逃げ」されたのかも知れない。
モンマルトルのアパルトマンを購入した翌日、
帰って来たら、部屋はもぬけの殻。 - 残っていたのは、冷たい風の音だけだった。
- ──
- せつない! そのシャンソンは、せつない。
そして、身も心も寒い‥‥。
- TOBI
- 便座も冷たい。
- ──
- さらに言うならば、その女の人には
「冷たい風の音」の他にもうひとつ、
「アパートのローン」も残っています。 - つまり、ふところにもすきま風が。
- TOBI
- すさまじい曲ですよ、そうだったとしたら。
「残されしローンには」。 - たぶん、ぜんぜんちがうと思うけど。
(つづきます)
撮影:福冨ちはる
2025-11-12-WED
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演歌歌手の神野美伽さんが歌う
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