フランス帰りのレ・ロマネスクTOBIさんに
あるとき、聞いてみたんです。
「シャンソンって悲しげな歌が多くない?」って。
そしたら、TOBIさんは
少し笑いながら「うん、みんな悲しいよね」って。
でも、その悲しみは、涙だけに彩られない。
ときにあたたかく、ときにユーモラスに、
人生まるごとを包み込むような大きさがあります。
演歌歌手の神野美伽さんが
「はじめてのシャンソン」で歌う予定の13曲を、
一曲ずつ、勝手気ままに、とりとめもなく、
TOBIさんとおしゃべりしました。
(歌唱順に話したわけではありません)

だまされて、老いさらばえて、すべてを失って。
それでもなぜか、どの歌も、どこか明るい。
人の人生の悲喜こもごもを、包みこんでしまう。
それが、シャンソンの優しさなのかも。
さあ、一緒に13の歌をめぐる旅に出ましょう。
担当はシャンソン係の「ほぼ日」奥野です。
ボン・ヴォヤージュ。

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08  ラ・マルセイエーズ

TOBI
フランス国歌、歌うんだ。
──
はい。かの有名な「ラ・マルセイエーズ」です。
曲名でピンとこなくとも、
みなさんきっと、聴いたことがあると思います。
これって「フランス革命の歌」なんですよね。
TOBI
そう。それも「そうとう勇ましい革命の歌」。
「敵の息の根を止めよう」とか‥‥
精いっぱいオブラートに包んで言ったとしても
「やつらを倒せ!」みたいなね。
──
そうだったんですか。
自由・平等・博愛を寿ぐとかっていうよりも。
TOBI
7番まであるんだけど、
箇所によっては「血みどろの革命歌」ですから。
「祖国は危機に瀕している」
「武器を取れ」「汚れた血で大地を潤せ」‥‥
サビの部分では
「やつらの汚れた血でわれらの畑をひたひたに」
とかなんとか。
──
なんと! 知らなかった~。
そういう歌を、ふだんから歌ってるんですか。
フランスの人たち。
TOBI
歌うというより、気づいたら流れてる感じかな。
──
われわれ日本人が「君が代」を歌うのって、
入学式とか卒業式くらいで、
日常的には、あんまり耳にしないですけど、
フランスの場合は‥‥? 
TOBI
革命記念日、軍事パレード、オリンピックとか、
あとは国民的な休日には流れます。
この曲を耳にするたびに、フランスの人たちは
「ああ、あの革命で
われわれは自由や平等という人間の権利を
勝ち取ったんだ!」と思い出しているんですよ。
──
戦意を高揚させる部分もあるってことは、
そういう歌を国歌にしなければならないという、
切羽詰まった状況だったと。逆に言えば。
TOBI
フランス革命のまっただ中、つまり
当時の革命政府が周辺の国に攻め込まれてたり、
内も外も大変なときに
国歌として制定されているので、
ああいう勇ましい歌詞になってるんでしょうね。
──
多大な犠牲のうえに成就した革命なわけだから、
フランスの人たちにとっては、
フランス革命って本当に大きな誇りなんですね。
TOBI
そうして勝ち取った自由・平等・博愛の精神を
忘れないようにする、
それが「ラ・マルセイエーズ」なんです。

(つづきます)

撮影:福冨ちはる

2025-11-08-SAT

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