相変わらず、
「テレビや映画ですてきな芝居をしてるあの人の、
舞台での姿はご存知ですか!?」
‥‥と言いたくて言いたくてたまらない
演劇ライター、中川實穗です。こんにちは。

今回ご登場いただくのは、安藤玉恵さんです。
舞台、映画、テレビと幅広く出演されていて、
最近では、東京ガスのCM「母の推し活」や、
「100分de名著ーアトウッド著『侍女の物語』『誓願』ー」
での朗読なども話題になりました。

安藤さんは、
大学時代に演劇サークルに誘われたことが
キャリアの始まりという、舞台の人。
どうしていつもそんなに素敵な
お芝居ができるのか、
それが知りたくて、あれこれうかがいました。

 

Photo:Mitsunori Ikeda
Hair&Make up:Eriko Yamamoto
Styling:Kei(salon de GAUCHO)

 

題字:ほぼ日

 

>安藤玉恵さんプロフィール

安藤玉恵(あんどう・たまえ)

俳優
東京都出身。
早稲田大学演劇倶楽部で演劇を始める。
2003年に『ヴァイブレータ』(廣木隆一監督)で映画デビュー。
以後、多数の舞台、映画、ドラマ作品に出演。
『夢売るふたり』では第27回高崎映画祭最優秀助演女優賞を受賞。
今後の出演に、映画『平場の月』(11月14日公開)、
Eテレ『未病息災を願います』(レギュラー出演)など。
次回、出演舞台はBunkamura Production 2025/DISCOVER WORLD THEATRE vol.15 『リア王』
(作:ウィリアム・シェイクスピア、上演台本・演出:フィリップ・ブリーン/2025年10月~11月上演)
初の書籍・エッセイ本『とんかつ屋のたまちゃん』(幻冬舎)を2025年5月28日に発売。

公式X:https://x.com/tamaeando

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第3回 まず自分が作品をおもしろいと思っている

──
ここからは、現在のお話をうかがいたいのですが、
いま舞台でのお芝居については
どんな風に思われていますか?
安藤
いま現在は、
やっと台詞をちゃんと言えるようになったな
と思っています。40代。
お客さんが怖くなくなってきて。
──
前は怖かったのですか?
安藤
怖かったです。
台詞が言えるようになったってことと、
お客さんが怖くなくなったってことは、
近いのかもしれない。

──
へえ! どうしてなんでしょう。
お客さんが怖くなくなったことに
きっかけはありますか?
安藤
大きな舞台で、
冒頭で一人でしゃべるシーンがあったんです。
全部で30か40ステージぐらいあったと思うんですけど、
演出家が毎回、そのシーンが終わると来てくれて、
どうだったか話してくれたんですよ。
お客さんがこんな感じだった、
ってことも含めて言ってくれて、
あれが大きかったかなと思います。
岩松了さんですけど。
M&Oplaysプロデュース『結びの庭』
作・演出:岩松了/2015年3月上演
素舞台で、一人で真ん中に立って、
最初10分ぐらいしゃべるんですけど、
そういう経験もそれまでなかったから。
──
「台詞をちゃんと言えるようになった」というのも、
どういう感覚なのか気になります。
安藤
なんだろう。
楽譜だったら、音符が書いてあって、
作曲家がクレッシェンドとか休符とか
全部指示してるじゃないですか。
それを理解できて、実践できるということですかね。
──
「作曲家」は、演劇で言うと誰ですか。
安藤
(戯曲を書く)作家ですね。
作家の意図は楽譜のようには書かれてないんだけど、
行間やト書きを含めて理解できるようになって、
かつ「おそらくこの音だろう」とか
「この身体だろう」ということを
脚本から予想できるようになったのかな。
それに近いかもしれないです、
「ちゃんと言えてる」って自分で思っているのは。
相手役もいることだから、
自分一人でできるわけじゃないんだけど、
自分がしっかり読めていれば、
相手役と「もらえるし、渡せる」というのも
うまくいくような気がしますね。
これは独りよがりじゃないんですよ。
相手も相手で、ちゃんと読んできてるから。
──
それをうまく受け止め合うということですか。
安藤
そうです。
――
私は、安藤さんが出演されている作品を観ると、
「作品がおもしろかったな」という感想になるんです。
それで2、3日後に、
「あ、安藤さんのお芝居がすごかったんだ」
みたいなふうに思ったりするんですよ。
安藤
ありがとうございます(笑)。
──
で、どうしたらそうなるのかな、みたいなことを
よく考えるんです。
安藤
わかんないですね。
──
そうですよね(笑)。ご本人ですもんね。

安藤
でもひとつ言うなら、
まず私が作品をおもしろいと
思っているからだと思います。
私の役より。
──
ああ!
安藤
ということが大きいかもしれないなと思いました。
脚本を読んで「おもしろい」と思ったものを
「おもしろくしよう」と思って、出てるから。
だから自分がどうしたいとか、
自分をこういうふうに見せたいとか
っていうことじゃないんですよね。
役と作品全体と、
あとは演出家がやりたいこと、です。
──
出る作品は選びますか?
安藤
選びます。
それができるようになったのは
最近ですけどね。
──
作品に入るうえで
稽古までにどんな準備をされますか?
安藤
台詞をまず吟味しますかね。
最初に1回、脚本を読んで、
だいたいその第一印象で
ほぼイメージできますでしょ。
それはみんなが初読で小説を読むのと一緒です。
「この役で」って言われてるから、
その役中心に読んじゃうんですけど、
でもだいたいイメージできるじゃないですか。
どういうものになるのか、
どういう世界で、どういう人なのか、
ということが分かるから、
それがすごく重要ですね。
──
第一印象が大事。
安藤
稽古をやっていくとだんだん
最初にイメージしたものを忘れちゃうんですよ。
だから書いておきます。
最初になにを感じたか、ってことを。
そこからぐるーっと一周して、
稽古終盤ぐらいになってくるとそこに戻ってきますね。
いろいろ迷走して。
──
迷走するんですか。
安藤
それも楽しんでるんですよ(笑)。
いろいろやってみたいなと思って、
いろいろやってみた結果、最初の感じになります。
それが大事なんだろうなと思ってます。

(つづきます)

2025-07-26-SAT

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  • 安藤さん初のエッセイ集、発売中

    タイトル:とんかつ屋のたまちゃん
    著者:安藤玉恵
    発売元:幻冬舎
    定価:本体価格1400円+消費税
    発売日:2025年5月28日

    ご本人朗読によるオーディオブックはこちら

    安藤さんの次回出演作品

    Bunkamura Production 2025
    DISCOVER WORLD THEATRE vol.15
    『リア王』
    NINAGAWA MEMORIAL

     

    <東京公演>
    日程:2025年10月9日(木)~11月3日(月・祝)
    会場:THEATER MILANO-Za

    <大阪公演>
    日程:2025年11月8日(土)~16日(日)
    会場:SkyシアターMBS

    作:ウィリアム・シェイクスピア

    上演台本・演出:フィリップ・ブリーン

    出演:
    大竹しのぶ 宮沢りえ 成田 凌 生田絵梨花 鈴鹿央士
    西尾まり 大場泰正 松田慎也 和田琢磨 井上 尚 
    吉田久美 比嘉崇貴 青山達三
    横田栄司 安藤玉恵 勝村政信 山崎 一

    <ミュージシャン>会田桃子(Vn.)、熊谷太輔(Perc.)、平井麻奈美(Vc.)

    公式公演ページ

    企画・製作
    :Bunkamura