劇団「ヨーロッパ企画」の
上田誠さんの名前を聞いたことがありますか。
映画『サマータイムマシン・ブルース』や
『リバー、流れないでよ』、
ドラマ『時をかけるな、恋人たち』の脚本、
映画『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』
の日本語版脚本などを手がけられている方です。
ヨーロッパ企画は、その上田さんが主宰し、
京都を拠点に活動する、旗揚げから28年の劇団で、
上田さんがすべての本公演の脚本・演出を手がけます。
いつ観てもおもしろい、仕掛けのある舞台を
つくっていらっしゃる上田さんに、
演劇ライターの中川實穗がお話をうかがいました。

>上田誠さんのプロフィール

上田誠(うえだ・まこと)

京都出身。ヨーロッパ企画代表。劇団のすべての本公演の脚本・演出を手がける。2010年、構成と脚本で参加したテレビアニメ『四畳半神話大系』が第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞。同年、バッファロー吾郎が主催する大喜利大会「ダイナマイト関西2010 third」優勝。2017年、『来てけつかるべき新世界』で第61回岸田國士戯曲賞を受賞。2024年、第68回岸田國士戯曲賞 選考委員に就任。2024年、映画『リバー、流れないでよ』で第33回日本映画批評家大賞脚本賞受賞。2026年6月19日公開の映画『君は映画』で長編映画監督デビューする。なお同映画は、ブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭でホワイトレイブン賞と観客賞を獲得。

 

▶︎上田誠さんX
▶ヨーロッパ企画サイト

前へ目次ページへ次へ

第1回 活動量が減らない劇団でいたい

──
上田さん、今日はありがとうございます。
上田
いえいえ京都まで来ていただいて。
──
ヨーロッパ企画の拠点であるヨーロッパハウスに
おじゃまできてうれしいです。
今日は、あらためて、上田さんの演劇の話を
うかがいたいと思ってやって来ました。
上田
はい、わかりました。

──
ほぼ日の學校で、
ご自身のルーツをお話しされていたので、
その記事を読んだのですが、
「劇団員と演劇をやりたくてやっている」と
おっしゃっていたのが印象的でした。
大学時代に旗揚げして28年も経ちますが、
28年ずっとそう思いながらやられてるんですか?
上田
そうですね。
「劇団で演劇をやる」っていうのが
やっぱおもしろいです、僕は。
──
どんなところがおもしろいんですか。
上田
いきなり他のジャンルにたとえるのもあれですけど、
「バンドやろうぜ!」みたいな感じで
バンドやるって楽しいと思うんです。
僕もその感覚で始めて、
その楽しさが今も続いているというような感じですね。
──
やろうぜ、で始めるのは楽しそうですけど、
長く続けるのは大変ですよね。
バンドも結構な割合で解散しますし。
上田
そこは、楽しさと大変さが違うというか。
楽しいは楽しいんですよ。
そして大変も大変なんです。
これ、混同されがちなんですけど、
楽しいけど、
続けようとすると、日々のさまざまな
創意工夫の積み重ねみたいなのが、
絶え間なく必要な感じで、
それが大変さだったり立ち行かなさでもある。
バンドでも、人数が多ければ多いほど、
たぶん維持って大変になると思うんですよ。
燃費が良くないから。
──
はい、はい。
上田
っていうことで言うと、
ある程度の人数の劇団は
やっぱりその燃費感みたいなことが、
初期は情熱でやれても、
だんだん障壁になってくるようなことは
あるかもしれないですね。
でも楽しいのは楽しいです、はい。
──
障壁はどうやって乗り越えるんですか?
上田
『演劇と氷山』っていう連載も
ミシマ社さんでやっているのですが、
僕はよく氷山に例えるんです。
大きな船を‥‥大きくもないか、
ある程度のサイズ感の船を操縦するときに、
氷山が近くに来てから気付いても
もう避けられないじゃないですか。
つまり、どれだけ早く氷山を察知するか。
それが結構あります。
氷山が見えてしまったらもう終わり、みたいな。
氷山にぶつかるまでを楽しむゲーム
みたいな感じですね。
──
なんか、結婚生活というか‥‥夫婦みたいな。
上田
夫婦よりも難しいと思います。
基本的にぶつかって沈むんで。
氷山と、船底の亀裂は、
気づいたら
取り返しがつかない水の量になってたりするんで。
──
主宰の上田さんだけが、氷山を見てるんですか?
上田
ヨーロッパ企画は
スタッフもいれば役者もいるんですけど、
みんなお互いになんだかんだ
しゃべったりアラート出したり
し合ってるかもしれないですね。

──
私自身は、ずーっと誰かと一緒にいるのは苦手なので、
いつもすごいなと思っているんです。
劇団公演も定期的にやられていて、
それも毎回ツアーだから期間も長いし、
劇団公演以外の、
上田さんが作・演出を手がける外部の公演も
大体、劇団員の方が出演されている。
映画でもドラマでもそうだし、
関西ではヨーロッパ企画の
バラエティ番組もありますよね。
上田
ありますね、はいはい。
──
仕事でこんなにずっと一緒にいる人たちって
けっこうめずらしくないですか?
劇団って長く続いていくと大体、
だんだんそれぞれで活動し始めるじゃないですか。
上田
ああ、それは、僕が演劇を始めた若い頃、
なにもわかってなかった頃に、
だいぶ上の劇団の人たちを見ていて、
年齢と共に活動量が減っていくのがなんか残念で。
バンドとかでもそうですけど、
初期はわーっと活動してるけど、
後期になると出すアルバムが
5年に1回みたいになったりする。
なんでなんだろうな? って。
ずっと活動している団体なんて
すごいおもしろそうなのにって思ってたんですよ。
実際に劇団の活動を続けてくと、
こういう事情で難しくなるんだなとか
わかってはくるんですけど、
でも、若い頃の自分がそう思ってたってことは、
たぶん今の若い人とかお客さんも、
そう思ってくれているに違いないという、
ちょっと確信というか期待のもと、
僕らはなるべくチームで活動し続ける、
活動量があまり減らない劇団として
やっていくほうがいいかなって。
そのほうが劇団としてわくわくするかな
っていうのがずっとはありますね。
僕はシンプルに
「やりたい」っていうのがあるんですけど。
──
ちなみに意見がぶつかることとかはないんですか?
表現のこととかで。
上田
でも、センスとかのことはもう、
僕だったり他のメンバーがつくるものなら
「その人のもの」って感じなので、
そこはあんまり話したことないかもしれないですね。
──
もう信頼して。
上田
というか、その人がつくるものには乗っかるしかない
っていう感じなんじゃないですかね(笑)。
僕も、メンバーがやることに乗っかる場合は、
やっぱりその人に任せてます。
──
わー、そうですか。
上田
デザインとか戦略みたいな、
話し合って答えが出ることと、
その人のアートに関わることは別、
というふうな思いがあるかもしれないです。
まあ、それでも結構なんか
センスの合う人たちが集まったのは
あるかもしれないですけど。
──
大人な感じがします。
若い時からそうですか?
上田
センスの点でぶつかったことは一回もなくて、
でもそれは、「まぁそういうもんか」
みたいな感じなんじゃないですかね(笑)。
言ってその人が納得するものでもないしな、みたいな。
ただもちろん「ここが伝わりにくい」とか、
そんなのはお互い言いますよ。
「こうしたほうが伝わりやすいんじゃない?」とか。

(つづきます)

2026-06-26-FRI

前へ目次ページへ次へ
  • 上田誠初監督による下北沢青春ギミック映画
    『君は映画』

     

    2026年6月19日(金)より全国公開

    監督・脚本:上田誠

     

    出演

    伊藤万理華 井之脇海
    藤谷理子 金丸慎太郎
    前田旺志郎 菊池日菜子 金子鈴幸 三河悠冴 今井隆文 /
    尾関高文(ザ・ギース) 高佐一慈(ザ・ギース)
    石田剛太 酒井善史 土佐和成 角田貴志 諏訪雅 永野宗典

     

    製作:ヨーロッパ企画/トリウッド

    ▶︎ 公式サイト