吉本ばななさんが
ツレヅレハナコさんの料理本のファンで、
ご自宅に遊びに行くことになったので
それをコンテンツにしませんか?
ついでに料理もごちそうになっちゃいませんか?
と言われたので「ぜひ!」と答えました。
もとはといえば、「ほぼ日の塾」の卒業生、
池田るり子さんがつくった「偏愛の人。」という
コンテンツがきっかけでした。
ツレヅレハナコさんの「異常なたまご愛」を
テーマにしたこの読み物は、
『ツレヅレハナコの愛してやまないたまご料理』
という料理本へと発展。
その出版を記念して、
前々からファンだと公言していた
吉本ばななさんをツレヅレハナコさんの
ご自宅の食卓にお招きし、
たくさんの料理でもてなすことになったのです。
そんなわけで、
たのしくておいしい夜のはじまりはじまり。
進行は池田るり子さんにお任せします。
たのしいおしゃべりとおいしい料理。
これ以上のものって、ないんじゃない?
進行&編集:池田るり子
イラスト:カケヒジュン
- ──
- ばななさんも、ハナコさんも、
本当に食いしんぼうですよね。
食べることへの意識が似ているというか。
- ばなな
- そうですね。
たぶん、本当に求めてるものは、
食だけじゃないんですよ。
食べることにまつわる、
ニュアンスっていうのかな。
お店に入るときの気持ちとか、
メニューを選んでるときの気持ちとか。
たぶん本当に求めてるものはそこなんだな、
っていうところは共通項を感じます。
- ハナコ
- 確かにそうですね。
瓶ビールが飲みたいわけじゃなくて、
「しゅぽ!」ってやりたいために、
わざわざ瓶ビールをケースで買ったりしてます。
ちょっとしたことがたのしみだったり、
たのしいなと思えることが増えた方が
やっぱり人生は豊かだな、と思うし。
- ばなな
- うん、そこをたぶん目指してる。
そこに向かって一日をもっていってる、
っていうところが似ているのかな。
- ハナコ
- ずっと何を食べようか考えているし、
冷蔵庫の中に食べ物がいっぱい入ってるのに、
外に買い物に行ったら、
「あ、これ、今買わなかったら
もう食べられない気がする」と思ったら、
買う! ってなる。
- ばなな
- たまに、食に対する姿勢が
ぜんぜん違う人と旅先で一緒になったりすると、
本当に気持ちが沈みます。
そして別行動になります(笑)。
- ハナコ
- うん、旅は食が合う人としか行かないですね。
- ばなな
- 旅先の食は、すごくがんばりますよね。
耳で聞き、ネットで探し、街を歩き。
後悔したくない! みたいな。
- ハナコ
- まさに。
でも、すっごい細かくお店をめぐる
スケジュールを決めるんだけど、
出会っちゃうんですよね、
途中で、よさそうな店に。
あぁ、なんかここ、絶対いい店な気がする! って。
- ばなな
- 店がまえでわかりますよね。
- ハナコ
- 通りかかって気になると、そこが追加されて、
でももう1軒も行くぞ、みたいになって、
どんだけ食べるの? という状態になる。
- ばなな
- 二皿ずつ、何軒か行ったりとかね。
- ハナコ
- ちょっとでもいいから入りたいんですよね、
気になる店って。不思議なことに。
あと、いい店って、注文した後も、
ずっとメニュー見てません?
- ばなな
- はいはいはい(笑)。
つぎにこの店に来たらこれにしよう、とか。
- ハナコ
- 注文を待ちながら、
今日は勝負のAパターンにしたけど、
こっちのBパターンの組み合わせも
悪くないな、とか。
- ──
- (笑)
- ばなな
- 一人だと頼めるものが限られてるから、
つぎはこれとこれにしよう、
って真剣に考えたりします。
- ハナコ
- だから、お通しが出てくる店だと、
「あぁー、キャパが」ってなる。
- ばなな
- そうそうそう、
お通しが3つ並んでるような店とかね。
- ハナコ
- これで一品分じゃん、みたいな(笑)。
お金とかの問題じゃなくて、
胃と肝臓の問題なんですよね。
- ──
- 「胃と肝臓の問題」(笑)。
やっぱり食とお酒は切り離せないんですね。
- ハナコ
- そうですね。つくる料理も、
もともとお酒に合うものが中心になります。
ハーブやスパイス、発酵食品など
癖があるものが好きだから、
どうしてもお酒のつまみっぽくなりますよね。
お酒が飲めて本当によかったなって心底思います。
- ばなな
- 私もいつもそう思ってます。
酒を飲むために健康でいよう、って。
- ハナコ
- 私、最近、さすがに飲みすぎなんじゃないか、って
思ってた時期に健康診断があって。
絶対、肝臓が悪くなってる‥‥って怯えてたんです。
それで、あまりに心配なので、肝臓内科がある病院を
わざわざ選んで健康診断をやってもらったんですよ。
ここなら、何かあったらすぐに、
肝臓内科にスライドできるに違いないと思って。
- ──
- (笑)
- ハナコ
- 結果を聞く時、
私はむちゃくちゃ悲痛な面持ちで行って。
そしたら先生がデータ見ながら、
「うーん、お酒飲むねぇ?」って。
私も「はい、すごい飲むんです」って。
- ──
- 結果を聞く前に、そのやり取り(笑)。
- ハナコ
- でも、なんと、
「まぁ、そこまで問題はないよ?」って言われて。
いやいや絶対そんなわけないと思って、
「でも先生、インターネットで見たんですけど!」って、
一番医者にいやがられる
「インターネットで見た」患者(笑)。
「手が赤いのは肝臓が悪いって見ました!」とか、
「最近すごい鼻血が出るんですけど、インターネットに、
それは肝臓が悪いからって書いてあって!」
とか聞いたら、めっちゃため息つかれて。
- ばなな
- (笑)
- ハナコ
- キッパリと、
「ぼくは検査数値を見ちゃってるからね。
これで出血傾向とかは、あ・り・ま・せ・ん!」
って言われて、
「もう帰れ」くらいの感じで帰されて。
- ばなな
- すばらしいことだ(笑)。
- ハナコ
- そう、だから、それはそれでよかった、と思って、
そのあとすぐ飲みました。
昼から荻窪の「鳥もと」に一人で行って。
- ──
- すぐ飲んでる!
- ばなな
- いいことですねぇ。私も、胃カメラ飲んで、
その帰り道に「ハシヤ」があるな、と思って。
あの、こってりおいしいスパゲティ屋の。
ハマグリと唐辛子のやつを頼んで。
- ハナコ
- 胃カメラの後に(笑)?
- ばなな
- そう。もっとやさしいものを食べとけばいいのに。
それでも私は食べたいものを食べるんだな、って
そのとき思いました。
ハシヤでははずせないメニューなので。
- ハナコ
- でも、その店の前を通ったなら、
かならず食べねばならないもの
ってありますよね‥‥。
- ──
- わかります‥‥。
- ハナコ
- そういえば、私、ばななさんにお会いしたら
ぜひお伝えしようと思っていたことがあって。
いまさらなんですけど。
- ばなな
- なんでしょう。
- ハナコ
- 私、前に出した台所エッセイ本とかでも、
「台所に住むのが夢」って書いてるんです。
それで、いまのこの家をつくって、
その夢が叶ったなと思っていて。
ずっと台所にいるから、
リビングがいらなかった説が出るくらいなんです。
- ばなな
- すごく素敵なお家ですよね。家の本も読みました。
- ハナコ
- でも、この前、あらためてばななさんの
『キッチン』を読み直してたら、
「キッチンに住みたい」って、
一番最初の行に書かれてる!
もう30年前に書かれてた!
自慢気に言ってたけど、わー! って思って。
- ばなな
- (笑)
- ハナコ
- 自分が最初に言ったみたいに、
いろんなところに書いてたけど、
すみませんでした。
っていう、思いを伝えられればと思って‥‥。
- ばなな
- でも、それは、みんな思ってると思いますよ。
台所で寝たいですよね、飲みながら。
やっぱり、近くにある方がいいでしょ。
弱っていたら、多くを管理できなくなるから、
食べるところと寝るところが、
全部近くにある方がいい。
- ──
- ハナコさんは、台所で寝たことはあるんですか。
- ハナコ
- はっ! まだない。私としたことが!
今日、寝ます!
- ばなな
- あははははは。
(吉本ばななさんとツレヅレハナコさんのお話は これで終わりです。
最後まで読んでいただき、 ありがとうございました。
ごちそうさまでした。)
2022-08-09-TUE
-
ツレヅレハナコ さんが
大好きなたまごを
さらにおいしく食べるための
100個のレシピを考えた本、
『ツレヅレハナコの愛してやまないたまご料理』が
発売になりました。
吉本ばななさんもおすすめのレシピや、
かんたんにできる味玉4種、
たまごかけご飯12バリエ、
つまみにもおすすめのゆでたまご珍味のせ12バリエ、
世界中で愛されるごちそうたまごメニュー14種など、
よく知っているはずのたまごが、
「こんなにおいしかったんだ!」と
驚くレシピが見つかるはず。
そして、対談ではふれられなかった、
ツレヅレハナコさんが
たまごの「たまこちゃん」を
アイドルプロデュースするマンガもついています。
暑い夏のおともに、
ぜひ、お読みください。ご購入はこちら。