映画『モテキ』を、 ほめさせてください。(c)2011映画『モテキ』製作委員会
大根仁さんプロフィール 大根仁監督 × 糸井重里

第3回 森山未來さんに、拍手を。
糸井 久保ミツロウさんが漫画のラフで
50ページのストーリーを描いてきて、
それで、どうなるんでしょう。
大根 ぼくが脚本化します。
そしたらまた久保さんが続きをすこし描いて、
ぼくが脚本に。
また10ページ描いてきた、脚本に。
という感じです。
糸井 漫画を、脚本に。
すこしずつ足していくんですね。
大根 ときどき久保さんが止まっちゃって、
ぼくがちょっと追いこしたり。
糸井 あ、追いこすことがあるわけだ。
大根 脚本が原作を追いこすって
そんなの聞いたことないですけど。
糸井 ないですよね(笑)。
大根 途中で東宝に第1稿を出さなきゃならないとき、
久保さんの手が止まってたんで、
「ごめん、とりあえずおれ、先行くから。
 あとでついてきて」
みたいな感じでいったん最後まで書いて、
あとから久保さんと修正する、という。
「こんなんじゃダメですよ!」
「なんでだよ!?」
「大根さん、わかってない!」
「じゃあ描けよ!」
「描きますよっ!」みたいな。
糸井 はあー、
すごいですね、そのふたりの蜜月ぶりは。
大根 関係性が最初からよかったと思うんです。
やっぱり原作者っていうのはどこか、
たてまつられちゃうというか。
糸井 敬して遠ざける、みたいになりますよね。
大根 なりますね、そうなんです。
糸井 ていうことは、
おふたりは打ち合いができるわけだ。
大根 「これダメじゃん」というのを
お互いに言える関係でした、最初から。
糸井 なかなか他にないでしょう、そういうのは。
大根 ない、ですね。
糸井 ないですよね。
聞いたことないですよ、
脚本が原作を追い越したとか。
大根 追い越したときは、
さすがにどうかと思いましたけど(笑)。
糸井 いや、このふたりならあるんでしょうね。
大根 でも、その‥‥
ぼくが追いこした部分っていうのは、
ドラマ版のヒロインたちの
その後のエピソードなんですよ。
糸井 ドラマ版の女性が出てくるんですか。
大根 そう、やっぱりぼくは、
土井亜紀とか中柴いつかとかを
もう1回みたかったんですよね。
だからほんとうに、
元カノを忘れられない状態で(笑)。
糸井 ああー、なるほどその話(笑)。
元カノが、
前のドラマのことが忘れられない。
大根 脚本に書いてたんです、
ドラマ版ヒロインとの再会シーン。
糸井 書いちゃいますよね、忘れられてないですから。
大根 そんなぼくにくらべて、
森山未來くんは最初からずっと、
「過去のヒロインはぜったいに出しちゃだめだ」
と言ってたんです、一貫して。
糸井 すばらしいですね、そのアドバイスは。
大根 なのにぼくは、
「とはいえ未來くん、
 前のヒロインがTVに出てくれば、
 ドラマファンはよろこぶよ」と。
糸井 うーん(笑)。
森山さんはなんとこたえましたか。
大根 「ドラマ版であれだけやり切った彼女たちを
 もう一回出すというのは、
 それは監督、失礼ですよ。
 新しいヒロインたちにも失礼です」
糸井 拍手をしますよ、ぼくは。
すごい発言ですね。
大根 はい。
糸井 以前、森山さんに会ったときにもぼくは、
この人は若いのに
すごいことを言うなぁって思ったんだけど、
今のそれもすごい発言だなあ。

(c)2011映画『モテキ』製作委員会
大根 そうですね。
でも‥‥ドラマ版ヒロインとの再会シーンも、
悪くない脚本だったんですよ。
土井亜紀がまた登場してくる‥‥。
糸井 まだ元カノのことを(笑)。
大根 最初の脚本にも書いたんで、
一応オファーもしたんですよ。
そしたらみごとに断られました。
糸井 はあー。
大根 「私たちはやり切りましたから」
糸井 それもつまり、
森山未來さんと同じ意見じゃないですか。
大根 同じなんですよ。
糸井 かっこいい。
大根 それでもぼくはやっぱり出てほしくて、
「出てよ」みたいなメール出して、
「いや、ほんとにもうムリだから」
みたいな返事がきて。
なんなんだこのメールのやりとりは!
糸井 それ、おもしろい(笑)。
大根 「そんなこと言わないで、頼むよ」
「私はかげから応援してるから」
「いや、でもさぁ」
って、すごいしつこい男みたいな(笑)。
糸井 ああー(笑)。
ドラマの続きだったら、
それはあると思うんですけどね。
大根 そうなんですよ、ドラマなら‥‥。
でもやっぱり、映画『モテキ』という
今カノに向き合わなきゃいけない。
つきあうことは決まってるんだから、
この子のよさを見つけなきゃいけない。
でもぜんぜん見つからないから、
元カノにすがるっていう状態が
ずっと続いてたんです。
糸井 すがりたい気持ちはわかります。
でも新しくつくる映画の中に
ドラマの元カノを上手にまぜるのは、
そうとう難しいことですよね。
大根 ええ。
だから、今カノのよさを探す作業というのが、
クランクインしてもずっとありましたね。
脚本を書きながら、
撮影を進めながら、
「これ、ドラマよりおもしろいのか?」って。

(つづきます)

2011-10-08-SAT


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