映画『モテキ』を、 ほめさせてください。(c)2011映画『モテキ』製作委員会
大根仁さんプロフィール 大根仁監督 × 糸井重里

第2回 ドラマがおもしろすぎたから‥‥。
糸井 ドラマ化される前のころを思い出すと、
『モテキ』のチームはすごかったですよね。
大根 そうですか。
糸井 「なんだ、このチームは?!」っていう、
うらやましさがありました。
宣伝の勢いが、もう(笑)。
大根 勢いが(笑)。
糸井 深夜ドラマの宣伝をするのに、
みんな、ものすごい一生懸命なんですよ。
あの時期の、なんて言うんでしょう‥‥
力はないけれども、
一生懸命バットを振っている感じは
ほんとによかったですねぇ。
風がきましたから。
大根 ブンブン振っといてよかったです(笑)。
糸井 もうブンブン振ってましたよね(笑)。
その制作チームに、
たしか女性の人がいらしたでしょ。
その人がほんとにすばらしくて。
大根 あ、それはえーと、
たぶんこの女性を中心にした
スタッフではないかと‥‥。

糸井 あなたですか。
なんであんなにみんな一生懸命になれたんですか?
女性 なんででしょう‥‥。
もちろん『モテキ』という作品自体が、
好きだっていうのはあります。
あとは、ツイッターというものが
すごくこの作品に合っていて、
みんなでつぶやくのが楽しかったんです。
糸井 自分たちがたのしかった。
女性 はい。
つぶやいてるうちに自分たちがどんどん、
この作品とチームを好きになるんですよ。
お客さんの反応が、
すごく素直であたたかくて。
友だちがいっぱいいるみたいになるんです(笑)。
糸井 そうだった、見ててそんな感じでした。
大根 ドラマを観たあとなんかは、
ちょっと話したくなるし。
その意味でもツイッターに向いていましたね。
糸井 漫画だと、読んだ人たち同士が話すのは
なかなか難しいんですよ。
テレビドラマになったら
一気にばらまけるから、
同じタイミングで同じテーマの話ができる。
大根 そうですね。
テレビはそこが大きいと思います。
糸井 とはいうものの、
ぼくはまず、漫画で興奮したんですよ。
テレビ東京の女性に
メールで教えてもらったんです。
「今度ドラマ化する漫画がおもしろいです」って。
女性 あ、そのメールはわたしが。
糸井 え! そう、あなたですか。
ほんとうにすばらしい人ですね(笑)。
メールを読んで、すぐにピンときて、
漫画を買って、それからですよ。
ドラマもどんどんたのしみはじめて現在に至る。
大根 ありがとうございます。
糸井 DVDもね、買うんです。
一度は観たし、録画もしてあるのに買うんです。
大根 恐縮です。
こんなにほめられていいのかどうか(笑)。
糸井 いやいや、
まだ映画の話に行ってないですから。
大根 そうですね、そういえば。
糸井 よし、もう、じゃあ、ぴょんと飛んで
映画に行っちゃいましょう。

そもそもが、
終わったはずの話ですよね。
大根 そう、そうなんです。
糸井 原作者の久保ミツロウさんは、
「これで終わり」とはっきり言ってたわけです。
新しい話を作って映画化という話を、
どう口説いて了解してもらったのでしょう。
大根 ぼくは、原作の終わり方を
まったく気に入ってなくて、
「これは久保さん、この終わり方よくない」
って、ドラマのときから言ってたんです。
糸井 ドラマでは最後を変えてますよね。
大根 ええ。だから今回も、
「久保さん終わったつもりでも、あの終わり方じゃ
 実は終わってないんじゃないの?」
っていう話はしたような気がします。
「まだぜったい書けるはずだ」って。
糸井 そこまで話すんだ。
大根 「たとえば1年後にセカンド・モテキがきて、
 主人公もちょっとだけ成長してて、
 なんか就職して働いてる、
 みたいな設定でどうかな」という話をしたら、
「ちょっと考えてみます」と。
糸井 なるほど‥‥。
最初にぼくが素直に思ったのが、
「そうか、映画は別な話なんだ」
ていうところだったんですよ。
これ、いまだにリメイクだと思い込んでる人が
いるかもしれないですよね。
大根 そうですね。
糸井 はっきり言っておきましょう。
みなさん、ドラマ『モテキ』と、
映画『モテキ』は、ぜんぜん別のストーリーです。
大根 ありがとうございます(笑)。
糸井 「ドラマであれだけウケたんだから、
 同じストーリーでいこう」という意見も、
会議をしたら出ちゃいますよね、きっと。
大根 最初にそれを言われました。
「別キャストでもう一回ドラマを
 作り直す方法もありますよ」って。
糸井 その選択はなかった。
大根 ないですね。
原作『モテキ』をいちばん愛してるのは
久保ミツロウで、
ドラマ『モテキ』のいちばんのファンは、
ぼくなんです。
だから、それをもう一回やるのはありえない。
やるんだったら、新しいもの。
そうなると、じゃあ新しい話は
ドラマを超えられるのか‥‥。
糸井 そこだよねぇ。
大根 それはきつかったですね。
前の彼女が良すぎる、みたいなことで。
糸井 そうだ(笑)、前の彼女が、
つまりドラマがおもしろすぎたから。
大根 元カノのことを忘れられないのに、
新しい彼女と付き合うっていう(笑)。
糸井 しんどい(笑)。
大根 しかも、映画化しようって言ってるくせに、
ドラマ版にいちばん引きずられてたのは
じつはぼくだったりしたんです(笑)。
糸井 それはいけません。
大根 そうしたら久保さんが、
最初の打ち合わせから2週間後ぐらいに、
「ちょっと思いついたんで、
 一晩徹夜して書いてみました」と、
50ページぐらいのえんぴつ描きの
漫画のネームを見せてくれたんです。
ニューヒロイン・長澤まさみ演じる、
みゆきと出会って、
「本当のモテキだ、これ!」
というところまで。
それがもう、ものすごくおもしろかった。
前の原作を超えてるくらいおもしろかった。
みゆきというキャラクターの魅力も
これまでで最高だと思って、
「あ、これで行ける」と。
糸井 ‥‥すごいですね、久保先生。
ドキドキしてきました。

(つづきます)

2011-10-07-FRI


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