映画『モテキ』を、 ほめさせてください。(c)2011映画『モテキ』製作委員会
大根仁さんプロフィール 大根仁監督 × 糸井重里


糸井 これはまた、すごいね‥‥。
ここで、初対面のかたと対談を(笑)。
大根 (笑)
糸井 うちの社員がこっそり飾り付けてたんですよ。
なんだかすみません、
はじめましてなのに、こんなファンシーな場所で。
大根 いえ、きょうはよろしくお願いします。
ドラマのときから応援していただいて、
ありがとうございました。
糸井 こちらこそですよ。
あのときはドラマ化にかこつけて
おもしろい座談会をさせてもらって。
大根 その前日に久保(ミツロウ)さんから
「明日いよいよ糸井重里と会います」
というメールがきたんで、
「かましてきてくれ」と返事をしました(笑)。
糸井 かましてましたよぉ、怖いくらいに(笑)。
大根 久保さんは常にああいう部分があるんですよ。
『モテキ』の映像化をよろこんでいたのに
いざ形になってくると、
「私の原作を好き勝手にしやがって」
みたいなことを言う(笑)。
糸井 言いながら、お城にこもっちゃう(笑)。
大根 やっぱり、なんていうか、
ほめられることに慣れてないんです。
糸井 きょうもほめますよ、ぼくは。
大根 よろしくお願いします(笑)。
糸井 まずですね、
ドラマがあれだけおもしろかったから、
「あんまり期待しないようにしよう」
とすごく注意をしながら
ぼくは映画の試写会にお邪魔したんです。
大根 はい(笑)。
糸井 そしたらもう、
ドカーンとやられて帰ってきました、ほんとうに。
大根 ありがとうございます。
糸井 映画化については、
すぐに「やるよ」って思えたんですか?
大根 いやいや、まったく思えなかったです。
ありえないと思ってました。
糸井 ですよね。
そこがすごくポイントだと思って。
大根 映画化の話には、「ないです」と、
はっきりお断り申し上げてました。
糸井 そのお誘いは東宝のかたからですか。
大根 そうですね、東宝のプロデューサーから。
テレビの第1回目が終わった直後に、
「これは映画になりますよ」
って言われたんですけど、
「いや、ドラマで終わりです」と。
糸井 きっぱり。
大根 きっぱり。
糸井 それが、どこで‥‥?
大根 まず、ドラマのDVDが出たとき個人的に
キャンペーンツアーをやったんですよ。
全国12、3箇所を回りました。
そのときに、
「あ、ほんとうに『モテキ』は好かれてる」
という実感があったんです。
ファンの人たちの熱量は、
いままでやったものと明らかに差があって。
糸井 なるほど。
大根 そこでファンの人にずいぶん、
「映画にしてください」と言われました。
糸井 言われるでしょうね。
大根 それとほとんど同じ時期に、
今度はテレビ東京でお世話になってる人から
「映画にしませんか」って言われたんです。
糸井 ほぉ‥‥。
大根 「仕事は、オファーがきてやるもの」
という考えが、もともとぼくにはあるんです。
やってほしいと頼まれることが、
そのまま自分の実力なんじゃないか、という。
糸井 わかります。
大根 これだけいろんな人から
「やってくれ」と言われてるんだったら、
まあ、タイミングなのかなと思って。
糸井 映画化を考えはじめた。
大根 考えはじめました。
糸井 そこに迷いはなかったですか。
大根 ほんとにいいのか? っていうのは、
やっぱりありましたね。
実際、動きはじめて、
久保さんや森山未來くんに最初に話したときは、
自分と同じリアクションでしたから。
「いやいや、ないない。
 今さら何をやれっていうんですか」と。
糸井 意見が一致してるわけですよね。
大根 してるんです。
そこで今度は自分がプロデューサーになって、
ふたりを口説く作業になります。
糸井 その時点で、自分は完全にやる気になっていた。
大根 なってましたね。
糸井 そこの心境の変化を
もうちょっとくわしく知りたいんですが、
「ドラマで終わり」という最初の意志を
何がそんなに強くひっくり返したんでしょう?
それはきっと、
「頼まれたから」だけではないですよね?
大根 ‥‥そうですね。
その理由は‥‥きょう糸井さんに会ったら
話したかったことでもあるんですが、
伊丹十三さんの存在です。
糸井 伊丹さん。
大根 ぼくは、伊丹っ子なんですよ。
18歳くらいのときに読んだ本で、
『「マルサの女」日記』っていうのがあって。
きょう持ってきたんですけど‥‥。

糸井 そうかぁ、伊丹さんか‥‥。
大根 映画監督ってここまでやるのかと、
この本を読んで思いました。
取材、キャスティング、脚本、宣伝、
フィニッシュまでやるのが映画監督だと。
それで、いざ業界に入ってみたら‥‥
糸井 そんな人はいない(笑)。
大根 「あれ? いないなぁ」と思って(笑)。
糸井 伊丹さんが特別なんです。
大根 でもぼくの中では、
映画監督というのは伊丹さんだったんです。
伊丹さんが映画を撮るに至ったその経緯に、
すごくあこがれていました。
映画監督でデビューするとき伊丹さんは、
それまでやってきたものをつぎ込んでますよね。
演技はもちろん、テレビの仕事とか、書き物とか。
糸井 ええ。
大根 自分を重ねるのはおこがましいんですが、
ぼくもここまで、
節操なくいろいろやってきました。
糸井 そうか、
大根さんも自分が練習してきたことをぜんぶ
『モテキ』に入れてますね。
大根 そうなんです。
ドラマの演出とか‥‥
糸井 PVだとか。
大根 文章を書くことや、
ライブを撮る仕事もずっとやってたので、
それもぜんぶ『モテキ』につぎ込みました。
で、それを映画化するという話は‥‥
「あ、これってもしかしたら伊丹十三のやり方に
 ちょっと近づけるかも?」って。
糸井 要するに、
ものすごくあこがれていたおもしろいことが、
このチームだったらできるって思えたんですね。
大根 そうです。
糸井 よーくわかりました。
いや、今回いちばん訊きたかったことなんです。
すっきりしました。
あとはもう、ほめるだけです。
大根 (笑)
(つづきます)

2011-10-06-THU


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