MOOMIN LOVE
重松清×『ダ・ヴィンチ』横里隆+「ほぼ日」武井 おじさん3人、ムーミンを語る。

第11回 スナフキンに憧れながら。

  横里 重松さんの作品の中で
スナフキン的な登場人物が
出てきたことってありますかね?
 
  重松 ない。
出せないタイプなんだよね。僕の小説の中には。
だから、憧れるんじゃないかな。
 
  横里 ムーミンはいっぱい、いますよね。
 
  重松 そう、ムーミンとさ、
スニフばっかりいるなって感じだよ。
ハードボイルドなんだよね、スナフキンて。
 
   
  武井 そうですね、ハードボイルドな人ですよね。
 
  横里 スナフキンが出てくると
全部そこで解決しちゃうし、
さらっちゃいますもんね。
 
  重松 さっき、ほら、『男はつらいよ』の
寅さん説があったけど、
『木枯らし紋次郎』とかね、
そんな感じもするんだよね。
ちょっとニヒルでね。
 
  武井 うん、うん、うん。
 
029
▲第29話「離れ離れの家族」
  久保 アニメの中で、公園にかくまわれた子どもたちを、
スナフキンが救ってあげるシーンがあるんですね。
それで子どもたちが懐いちゃって
スナフキンにずーっと付いてきちゃうんですけど、
この子ども向けのはずのアニメなのにも関わらず、
スナフキンはその子たちに向かって、
「僕は子どもが苦手なんだ」と。
 
  さん
にん
わはははは(笑)。
 
   
  久保 「どう扱っていいか分からないけれども、
 来たければおいで」って言って
一緒に移動するんですけど、
このセリフをよく言わせたな、
というのがビックリで。
何かちゃーんと原作の
エッセンスていうのが残ってて
面白いんです。
 
  重松 絶対にスナフキンが言わないであろうセリフは
言わせないってことなんだよね。
それがいちばん大事なんだよね。
俺はね、ミイがムーミンに言った
「あんたって、ほんとに
 あんた自身を騙すのが上手ね」
って言葉が‥‥。
 
これとても印象に残っている言葉です。
第1回で話題にのぼった
ムーミンの代わりに
灯油でアリを全滅させた後のやりとり。
ピシャリと言ってのけた。
  横里・武井 うわー!
 
  重松 俺、結構、くるわけ、グサーっと。
 
  武井 ドキー、ドキッ。
 
  重松 あ、今、俺、自分を騙してるよーとかさ(笑)。
そういえばさ、たぶん、
ムーミンの世界にいちばん似てるのって、
いがらしみきおの『ぼのぼの』かもしれない。
あの、スナドリネコさん、
スナフキンぽくない?
 
  横里 ぽいです。
 
  重松 そういう名言をぱっと言ってさ。
 
  武井 ほんとだ。
 
  重松 シマリスくんがいたりとかさ、
 
  武井 「いぢめる?」
 
  重松 ね。
 
  武井 そう考えると、ムーミンに影響されてる人、
多いかもしれないですね。
いやはや、切りがないですね。ムーミンの話は。
結論めいたことを言うと‥‥
 
  重松 ムーミンを語るってことが、
そのままやっぱりスナフキンを
語ることになるんだよ。
 
  武井 そうですね、最初から最後まで
スナフキン軸でしたね。
 
   
  横里 アフォリズムみたいなものを
スナフキンがきっちりとこう、
言葉にして表現してくれてるんで。
 
ああ。そういえば、
以前フィンランドのおばさんたちと
ムーミンの話を
していたときのこと。
仕事をバリバリやってる女性は
なぜかきまって
自分をフィリフヨンカさんに
重ねたり、
わが子にフィリフヨンカ呼ばわり
されたりしてました。
フィリフヨンカの呪縛。
で子供たちにムーミンママを
見習ってよとか言われてるのに、
心にミイ、みたいな。
  重松 そうそうそう。
で、たぶんさ、おばさん3人が集まったら
話がミイになると思う。
だからムーミンが真ん中にいるんだけども、
カウンターとして、スナフキンとミイの
存在感が際立ってるよね。
 

 

  武井 久保さん、このアニメ―ション作るときに
原作にないものっていうのは、
もうゼロから書き起こしたんですか?
それとも何かからヒントが?
 
  久保 基本的にはコミックと原作と
言われてるんですけれど、
オリジナルのキャラクターが
付け足されてたりとか、
ちょっと作られてたりとかするものがありますね。
ただし脚本も全て英語に訳して、
トーベさんにファックスで確認をいただいたと。
 
   
  重松 じゃ、トーベさんもオッケー出してるんだ。
 
  久保 はい、ご覧になっているものです。
 
  重松 武井さんさ、フィンランドのお父さんたち、
おじさんたちってさ、ムーミン、好きなの?
 
  武井 それが、ムーミンは子どものもの、
みたいな感じだったんですよ。
訊いたことあるんですけど、
「うん、知ってるよ」という程度で。
これも、森下さんに聞きたいんですけど、
僕が聞いた限りでは、そうでした。
 
フィンランドでは原作を
読んだことがない男性、
とても多いのです。
アニメが始まってからは
子育てしながら読み聞かせで
ムーミンの原作に目覚めた
って人たちが増えました。
アニメの影響は大きいですね。
そのアニメの印象が強すぎて
子供のものと考えられてしまうようです。

 

  横里 へえー。
 
もともとキャラクターグッズという
文化があんまりない
国だったんです。
それが理由で手にする
人が少なかった。
おまけに最初は
子供向けばかりでしたからね。
ところがです! ここ数年、
自分で自分用にスティンキー、
モラン、ニョロニョログッズを
買っていかれる方がいるんですよ。
さらに奥さんにスティンキーの
パンツとかパジャマを
買われてるおじさんもいます。
  重松 こんなふうにマウスパッド使ったり
鞄に付けたりしてないわけね。
俺たちみたいに。
 
  武井 してないんです。
 

 

  重松 みんな、大人になってんじゃん、
フィンランドの親父はー。
 
  武井 あんまりそうは思えないんですけどねー。
ムーミンパパだから。
 
  横里 ちょっと分かるのは、
日本の大人たちって
世界的な意味では
あんまり大人になりきってない。
 
ムーミングッズも
大人をしっかり意識した
デザイン重視のものがでてきて、
やっと男性のお客さんが
増えた印象があります。
  重松 なってないな。
うん、うん。
 
  横里 それはいい意味でもあって。
なので、僕たちはまだこういうふうに身の回りに、
ムーミングッズをおいておけるんじゃないですか。
 
  重松 俺‥‥、スナフキンに憧れながら、
ムーミンパパになったよ。
 
  横里 武井さんと僕はさ、
スナフキンに憧れながらもムーミンのままだね。
 
  重松 ムーミンだよね。
 
  武井 たぶんムーミンのままなんだ‥‥。
 
  横里 ムーミンパパにもなれないんだよ。
 
  武井 うん、なれない。
 
あ、私もムーミンで
エントリーさせてください!
(しっぽも持ってますゆえ)
  重松 ムーミン2人とムーミンパパでしょ。
やっぱ体形が同じなんだよな。
 

 

  さん
にん
(笑)。
 
  久保 さいごに、みなさんの好きなエピソードを
おたずねしてもよいでしょうか。
 
  重松 俺は『地球最後の龍』。
 
013
▲第13話「地球最後の龍」
  久保 ムーミンが龍の子をひろって育てるんだけど
スナフキンにだけ懐いちゃって、
というお話ですね。
 
002
▲第2話「魔法の帽子」
  横里 ぼくは飛行オニの話かなあ。
ムーミンが変身しちゃう『魔法の帽子』‥‥。
いや、やっぱり洪水の話にしようかな。
『浮かぶばけもの屋敷』
『離れ離れの家族』
『喜びの再会』三部作。
日本も今年、大変な年でしたけど、
ムーミンの中では災害の話もすごく、
前向きに捉えられてるんですよね。
 
30
▲第30話「喜びの再会」
   
  重松 うまくまとめたね、今!
 
036
▲第36話「クリスマスって何?」
  武井 ぼくはクリスマスを知らないみんなが
わからないなりに祝う話
(『クリスマスって何?』)、
いや、灯台守が出てくる話かな。
(『灯台に明かりのともる日』)
 
026
▲第26話「灯台に明かりのともる日」
  久保 どうもありがとうございました。
 
ずっとずっと伺いたかった方々の
ムーミンのお話が伺えて幸せです。
冬眠をこらえて
起きてたかいがありました。
ありがとうございました。

 

  重松 ほんとお世話になりました。
ありがとうございました。
 
  武井 ありがとうございました!
 
  横里 楽しかったです!  

2012-01-09-MON

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