『VIVANT』や『半沢直樹』シリーズなど、
大ヒット作品に主演し、
いまや日本を代表する俳優のひとりとして
誰もが認める堺雅人さんは、
じつは20年以上前から
ほぼ日とつながりがあるんです。
糸井重里ともときどき会って、
濃く長いやりとりを交わす仲。
そんな堺さんと糸井が「生活のたのしみ展」のときに
開催されたトークショーでたっぷり語り合いました。
思えば、ふたりの公式な対談はほとんどはじめて。
堺雅人さん独特の役者論から学生時代の思い出まで、
思った通り、いえ、思った以上に
おもしろい時間になりました。
- 糸井
- 福澤監督の撮影の話を聞いていると、
自分と視点が近い気がしますね。
ぼく、社長をやめて会長になったんですけど、
いま思うと、社長のときって、
社員にすごく気をつかってたんです。
- 堺
- そうなんですか。
- 糸井
- つまり、社長にとっては、
社員が壊れないで無事にやっていくことが
いちばん大事なんです。組織ですから。
- 堺
- はい、はい。
- 糸井
-
だから、社長のときは優しいんです。
でも、会長になって、組織のことは
ある程度まかせた、という立場になると、
社長のときに言わなかった
「ほんとはこうしてほしい」ということを
気にせず言うようになったりする。
- 堺
- でも、長いスパンで考えると、
そっちのほうがよかったりしませんか。
- 糸井
- そうかもしれないけど、
嫌な思いをさせるかもしれないし、
せっかく伸びてる芽をつむかもしれない。
自由につくれる立場になったら、
キツくなるんですよね。
- 堺
- 会長になると変わるんですね。
- 糸井
- クリエイティブ担当の人に戻ったんですよ。
だから、ちょっと嫌ですよ、そんな自分が。
- 堺
- (笑)
- 糸井
- 夢見がわるい、会長は。
ちょっとそのあたりは模索中です。
- 堺
- ぼくはまだ52歳なんですけど、
70とか80とかになったときに、
乱暴に好きなことを言う、
会長みたいな役者でいたいです。
- 糸井
- でも52歳はね、社長になるときですよ。
- 堺
- ああ、社長なんですね。
- 糸井
-
どう言ったらいいかな、
ひとりひとり、みんなすごいんだから、
そのすごいみんなの力が発揮し合うと、
こんなおもしろいことができるぞっていうのが
社長のおもしろさなんですよね。
沼田に行く人も、沼田に行かない人も、
何もしないっていう人にも価値がある。
これから彼女と待ち合わせなんです、
って言って帰る人がいても、
そいつのよさまでも活かせるのが
50代の社長の仕事なんですよ。
- 堺
- そっか。じゃあ、いままさに。
- 糸井
- そうですよ。
だって、ドラマやっててもさ、
それこそ砂漠で阿部寛の足跡を
消してる人とかがいるわけでしょう。
- 堺
- はい。
- 糸井
- 扇風機を回してる人とか、
全員必要じゃないですか。
そうじゃないと『VIVANT』みたいな
作品なんてできないから。
そういうことを、たぶん監督やってる
福澤さんは知ってるはずですよね。
- 堺
- そうですね。
焚きつけながら、フォローもしてる人なので。
- 糸井
-
いい弁当の日はみんなの機嫌がいい的なことも、
たぶんわかってないといけないですよね。
だから、「ほんとうはぜんぶ知ってるよ」
みたいなところと、
「そこ見てたらキリがないよ」
みたいなことを、両方やらなきゃいけない。
- 堺
- やあー、いいですね。
そういう俳優になりたいなあ。
「それ言い出したらキリがないよ」
って言ってみたいです。
- 糸井
- (笑)
- 堺
- 「わかるよ、わかるけど、
それ言い出したらキリがないからね」って言いながら、
自分もそれにこだわる気持ちはとてもよくわかる、
っていう俳優でいたいですね。
- 糸井
-
それは、年齢に関係ないというか、
いまの堺雅人もできてるときがあるんだと思いますよ。
なんか、若くってもさ、
この人がいてよかったな、この人すごいな、
みたいなことだってあるでしょう。
若いときに、ちいさい作品やってるときの堺雅人は、
案外、人から見たら、そういうことしてたかもよ。
- 堺
- ですかね。
- 糸井
- うん。
- 堺
-
でも、たしかに、その後に
主役を張るようになる人の若い頃って、
見たことあるんですけど、そういう感じですよね。
たとえば、高橋一生さんとか、
すごい人は役の大小にかかわらず、
やっぱりずっと見ていたいというか。
- 糸井
- 自分のことは見えないだろうけど、
堺くんもそうだったんじゃないかな。
- 堺
-
そうなりたいですね。
いい役者さんって、いるだけでいいんですよ。
たとえばドラマでその人が
あんまり活躍しないクールがあっても、
いるだけで、なんか現場がよくなる。
いい役者さんがいると、そうなるんですよ。
この人がいると20%ぐらい
現場のクオリティが保証される。
- 糸井
- 大きい役でも小さい役でも。
- 堺
- はい。
- 糸井
- そういえば、堺くんは、
ちっちゃい映画とかにもけっこう出るよね。
あるいは、故郷の宮崎の朗読会みたいな仕事とか。
- 堺
- はい。ぼく、大きくても小さくても、
モチベーションあんまり変わらないんですよ。
お客さんがほとんどいなかったりとか、
身内だけとかでも大丈夫ですし。
劇場の大きさもそんなに考えないですし。
- 糸井
- そうやって両方の仕事に加われるのは、
すごく恵まれてることなのかもしれない。
そのうえで、一番やりたいことは
なんなんだろうっていうのが、
これから見えてくるんじゃないですかね。
- 堺
- ああー、だとしたらたのしみです。
(明日に続きます)
2026-09-08-TUE
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