国語とからだの役者論 国語とからだの役者論
『VIVANT』や『半沢直樹』シリーズなど、
大ヒット作品に主演し、
いまや日本を代表する俳優のひとりとして
誰もが認める堺雅人さんは、
じつは20年以上前から
ほぼ日とつながりがあるんです。
糸井重里ともときどき会って、
濃く長いやりとりを交わす仲。

そんな堺さんと糸井が「生活のたのしみ展」のときに
開催されたトークショーでたっぷり語り合いました。
思えば、ふたりの公式な対談はほとんどはじめて。
堺雅人さん独特の役者論から学生時代の思い出まで、
思った通り、いえ、思った以上に
おもしろい時間になりました。
第8回 いるだけで現場がよくなる
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糸井
福澤監督の撮影の話を聞いていると、
自分と視点が近い気がしますね。
ぼく、社長をやめて会長になったんですけど、
いま思うと、社長のときって、
社員にすごく気をつかってたんです。
そうなんですか。
糸井
つまり、社長にとっては、
社員が壊れないで無事にやっていくことが
いちばん大事なんです。組織ですから。
はい、はい。
糸井
だから、社長のときは優しいんです。
でも、会長になって、組織のことは
ある程度まかせた、という立場になると、
社長のときに言わなかった
「ほんとはこうしてほしい」ということを
気にせず言うようになったりする。
でも、長いスパンで考えると、
そっちのほうがよかったりしませんか。
糸井
そうかもしれないけど、
嫌な思いをさせるかもしれないし、
せっかく伸びてる芽をつむかもしれない。
自由につくれる立場になったら、
キツくなるんですよね。
会長になると変わるんですね。
糸井
クリエイティブ担当の人に戻ったんですよ。
だから、ちょっと嫌ですよ、そんな自分が。
(笑)
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糸井
夢見がわるい、会長は。
ちょっとそのあたりは模索中です。
ぼくはまだ52歳なんですけど、
70とか80とかになったときに、
乱暴に好きなことを言う、
会長みたいな役者でいたいです。
糸井
でも52歳はね、社長になるときですよ。
ああ、社長なんですね。
糸井
どう言ったらいいかな、
ひとりひとり、みんなすごいんだから、
そのすごいみんなの力が発揮し合うと、
こんなおもしろいことができるぞっていうのが
社長のおもしろさなんですよね。
沼田に行く人も、沼田に行かない人も、
何もしないっていう人にも価値がある。
これから彼女と待ち合わせなんです、
って言って帰る人がいても、
そいつのよさまでも活かせるのが
50代の社長の仕事なんですよ。
そっか。じゃあ、いままさに。
糸井
そうですよ。
だって、ドラマやっててもさ、
それこそ砂漠で阿部寛の足跡を
消してる人とかがいるわけでしょう。
はい。
糸井
扇風機を回してる人とか、
全員必要じゃないですか。
そうじゃないと『VIVANT』みたいな
作品なんてできないから。
そういうことを、たぶん監督やってる
福澤さんは知ってるはずですよね。
そうですね。
焚きつけながら、フォローもしてる人なので。
糸井
いい弁当の日はみんなの機嫌がいい的なことも、
たぶんわかってないといけないですよね。
だから、「ほんとうはぜんぶ知ってるよ」
みたいなところと、
「そこ見てたらキリがないよ」
みたいなことを、両方やらなきゃいけない。
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やあー、いいですね。
そういう俳優になりたいなあ。
「それ言い出したらキリがないよ」
って言ってみたいです。
糸井
(笑)
「わかるよ、わかるけど、
それ言い出したらキリがないからね」って言いながら、
自分もそれにこだわる気持ちはとてもよくわかる、
っていう俳優でいたいですね。
糸井
それは、年齢に関係ないというか、
いまの堺雅人もできてるときがあるんだと思いますよ。
なんか、若くってもさ、
この人がいてよかったな、この人すごいな、
みたいなことだってあるでしょう。
若いときに、ちいさい作品やってるときの堺雅人は、
案外、人から見たら、そういうことしてたかもよ。
ですかね。
糸井
うん。
でも、たしかに、その後に
主役を張るようになる人の若い頃って、
見たことあるんですけど、そういう感じですよね。
たとえば、高橋一生さんとか、
すごい人は役の大小にかかわらず、
やっぱりずっと見ていたいというか。
糸井
自分のことは見えないだろうけど、
堺くんもそうだったんじゃないかな。
そうなりたいですね。
いい役者さんって、いるだけでいいんですよ。
たとえばドラマでその人が
あんまり活躍しないクールがあっても、
いるだけで、なんか現場がよくなる。
いい役者さんがいると、そうなるんですよ。
この人がいると20%ぐらい
現場のクオリティが保証される。
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糸井
大きい役でも小さい役でも。
はい。
糸井
そういえば、堺くんは、
ちっちゃい映画とかにもけっこう出るよね。
あるいは、故郷の宮崎の朗読会みたいな仕事とか。
はい。ぼく、大きくても小さくても、
モチベーションあんまり変わらないんですよ。
お客さんがほとんどいなかったりとか、
身内だけとかでも大丈夫ですし。
劇場の大きさもそんなに考えないですし。
糸井
そうやって両方の仕事に加われるのは、
すごく恵まれてることなのかもしれない。
そのうえで、一番やりたいことは
なんなんだろうっていうのが、
これから見えてくるんじゃないですかね。
ああー、だとしたらたのしみです。
(明日に続きます)
2026-09-08-TUE