『VIVANT』や『半沢直樹』シリーズなど、
大ヒット作品に主演し、
いまや日本を代表する俳優のひとりとして
誰もが認める堺雅人さんは、
じつは20年以上前から
ほぼ日とつながりがあるんです。
糸井重里ともときどき会って、
濃く長いやりとりを交わす仲。
そんな堺さんと糸井が「生活のたのしみ展」のときに
開催されたトークショーでたっぷり語り合いました。
思えば、ふたりの公式な対談はほとんどはじめて。
堺雅人さん独特の役者論から学生時代の思い出まで、
思った通り、いえ、思った以上に
おもしろい時間になりました。
- 糸井
- ぜんぶ文字にするという堺くんに、
文字じゃないところから
受け取る大事な情報もある、
ということをわざと言ってみたいんですけど。
- 堺
- はい(笑)。
- 糸井
- あの、たとえば、
「ちっちゃいジャイアント馬場」が
いたとしますよね。
- 堺
- えっ、ぇぇえ?
- 糸井
- 仮に(笑)。
いま急に思いついただけなんだけどね。
- 会場
- (笑)
- 糸井
-
このくらいのちいさいジャイアント馬場がいて、
「ぼくのプロレスを見てください」って言ったら、
やっぱりそれは大きさが足りなくて
おもしろくない‥‥あ、これはこれで、
なんかめずらしいからおもしろいか?
この例は、まちがったかな‥‥。
- 堺
- (笑)
- 糸井
- でも、まあ、
「ジャイアント馬場」を期待する人は、
「え、こんなちっちゃいの?」って
なっちゃいますよね。
- 堺
- 期待とは違うものを受け取っちゃいますね。
ジャイアント馬場さんはやっぱり大きくないと。
- 糸井
- そうだと思うんですよ。
動きとか技がみんな同じだとしても
ダメですよね。
- 堺
- ダメですね。サイズ感は大事ですね。
- 糸井
- そういうことを人は感じ取ってますよね。
- 堺
- 同じことを、
阿部寛さんで、ぼくは感じました。
- 糸井
- あ、阿部寛さんは、デカいですよね。
- 堺
-
阿部さんは、デカいし、
ただ台詞をしゃべってるだけでも、
なんというか、ぜんぜん違うんですよ。
おもしろいところはものすごくおもしろいし、
かっこいいところは
ため息が出るぐらいかっこいいんです。
でも文字にしてみたら、なんてことない。
- 糸井
- はい、はい(笑)。
- 堺
- ジャイアント馬場さんも、
ロープからこう入ってくるだけで、
うわぁって見惚れちゃうと思うんですよ。
阿部寛さんもそれと似ていて。
- 糸井
- うん、うん(笑)。
- 堺
- モンゴルの砂漠に負けない阿部寛。
- 会場
- (笑)
- 堺
- それはもう、
文字で書きようがないじゃないですか。
でも、しゃべってることは、なんか、
「突入だ!」とか言ってるだけなんですよ。
- 糸井
- あははははは。
- 会場
- (笑)
- 堺
- そのかっこよさは、たぶん、
『VIVANT』の脚本を書いてる福澤監督も‥‥
あっ、福澤さんは、わかってるかもしれない!
- 糸井
- むしろ当て書きをしてますよ、明らかに。
- 堺
- 福澤さんはやってますね。
- 糸井
- やってるでしょうね。
でも、いまの話全体を感じ取っている、
ということは、あなたは見る側としては
ぜんぶわかってるということじゃないですか。
- 堺
- はい。
- 糸井
- そのへんを知っていて、
たぶん判断もしてるじゃないですか。
- 堺
- してます、してます。
- 糸井
- ということは、文字だけじゃないですよね。
- 堺
- ‥‥不得手だと思ってるのかなぁ。
- 糸井
- どうなってるんだろう。
- 堺
- 文字しか最終的には再現できないというか、
再現できないことは、それはなんか、
大きなおまけなんですよね、ぼくにとって。
- 糸井
- ああ、なるほど。
- 堺
- はい。できても、おまけ。
だから、それができないとしても、
お給料の分は働きたい、というか。
- 糸井
- たとえば、堺くんは台詞を言っているときに、
目の大きさだって変えてるわけでしょ。
カメラがいまここを撮っているから、
目を見開く、みたいに。
- 堺
- はい。それは基本的な技術ですね。
- 糸井
- ということは、そこは言葉にできている。
- 堺
- できてます。
- 糸井
- それ以外に、あとで見返したら、
これのおかげでよかったなみたいなことも、
あるでしょう。
- 堺
-
テイクを重ねていくと、ありますね。
たとえば、声が出なくなりそうなときに、
ちょっとかすれた声でしゃべって、
「あれ、いま、どこに力を入れてるんだろう?」
というようなときは、
予想しない演技になったりします。
- 糸井
- それを意図してやったりはしない?
- 堺
-
ぼくはしないし、できないですけど、
『VIVANT』の福澤監督はきっとやってますね。
福澤監督ってほんとうに
おもしろい撮り方をするんです。
彼はラグビーの選手なんですけど、
人間の体力的な限界を知ってるんですよ。
たとえば、テイクを何回も重ねるとき、
あまりに何回も何回も回数を重ねていくと、
人は防御本能で少し手を抜くんですよ。
それをさせないために、
力を抜くぎりぎりのところでやめるんです。
- 糸井
- ああー、おもしろいですね。
- 堺
- 28回テイク重ねるとしたら、
26回目ぐらいで、あと1回で限界だと思って、
カメラ位置の編成を変えて、
最後に撮れるやつを27回目で狙う、みたいな。
- 糸井
- だんだん選手の方もわかってくるでしょうね。
- 堺
- そうですね。
でも、ゲストの方が多い現場なので、
ゲストの方は最初、戸惑われますよね。
- 糸井
- ここまでさせるんだ、って。
- 堺
- びっくりされますね。
「まだやるんですか?」みたいな。
- 糸井
- 堺くんはもう慣れてるんですね。
- 堺
- ぼくは『半沢直樹』からやってるので(笑)。
「もう何回目だ?」っていう
会話が出なくなったころに終わる。
数えてるうちは終わらない。
- 糸井
- すごいですね。
- 堺
-
すごくめずらしい例でいうと、
『VIVANT』のときに、
いろんな波長がうまく合っちゃって、
1回目のテイクで
「もう、これ以上できません!」っていうのが
撮れちゃったことがあるんですよ。
そしたらカメラ位置をぶわーっとぜんぶ変えて、
あと2回で終わるようにしてくれたんです。
「あと2回で終わりますから」って。
- 糸井
- でも、そこで終わりにはしないんだね。
いま100点なんだけど、あと2回撮れば
もっと高い点数が出るかもしれない。
- 堺
- そうですね。
「死ぬ気であと2回やれ」っていう
メッセージだと僕は思ったんですけど。
- 糸井
- そのあたりはスポーツとも似てますね。
チームのメンバーを壊さないようにするってことと、
その人たちの力を最後までぜんぶ発揮させて、
すごくいいプレイをさせよう、
っていうのと兼ね合いですよね。
- 堺
- ああ、そうですね。
(明日に続きます)
2026-09-07-MON
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