国語とからだの役者論 国語とからだの役者論
『VIVANT』や『半沢直樹』シリーズなど、
大ヒット作品に主演し、
いまや日本を代表する俳優のひとりとして
誰もが認める堺雅人さんは、
じつは20年以上前から
ほぼ日とつながりがあるんです。
糸井重里ともときどき会って、
濃く長いやりとりを交わす仲。

そんな堺さんと糸井が「生活のたのしみ展」のときに
開催されたトークショーでたっぷり語り合いました。
思えば、ふたりの公式な対談はほとんどはじめて。
堺雅人さん独特の役者論から学生時代の思い出まで、
思った通り、いえ、思った以上に
おもしろい時間になりました。
第4回 書いた人が壊す自由
写真
糸井
ものを書く神様も、空中から取り出した
その音楽を写譜してるようなものだから、
書式にした時点で違ってるかもしれないよね。
だから、丸(「。」)の位置も、
もしかしたらほんとうはつぎの文の
頭の文字にくっついてるのかもしれないけど、
あくまでも書式として、そう表記していたり。
でも、たとえば石川啄木は、
「三行分かち書き」
(五・七・五・七・七にこだわらず
自由な三行で短歌を表す書き方)
で書いたりしますよね。
糸井
はい。
あれが、こういうふうに読んでほしい、
という意図だったとすると、
台本の句読点にもそれがあるかもしれない。
糸井
俳句は句読点から離れて
つなげているものがいっぱいありますよね。
あるんですよ。
でもそれは意図してつなげてらっしゃるから。
写真
糸井
そうですね。
だから、俳句くらい短いと、
つくり手が、句読点というか息継ぎについて、
考えたりする余地があるのかもしれない。
そうかもしれないです。
糸井
逆にいえば、脚本家が
「弁護士が長々と弁論する」
という場面の台詞を書くとき、
その息継ぎについて厳密に表現する
ということは難しいでしょうね。
それは、自然の木を描くときに、
葉っぱを一枚一枚模写するみたいなものだから。
そうですね。長い文章だと、
一息で言える範囲というのもあるので、
そこは現場の演奏家の判断に
委ねてもいいのかなという甘えがあるんですけど。
糸井
甘えじゃなくて、
たとえばベートーベンを弾くときも、
楽譜は同じでも演奏者によって
表現は変わりますよね。
あれ、ベートーベン自身は
こう弾いたんじゃないか、
っていうことじゃないと思うんですよね。
そうですね。
糸井
あるいは、つくった人と一緒に、
さらにつくってるっていう感覚なのかな。
あの、脚本と役者と両方やってる人が
いるじゃないですか。野田秀樹さんとか。
はい。
野田さんはたぶん、プレイヤーのときは、
ちょっと切り替えて
やってらっしゃるんじゃないでしょうかね。
糸井
脚本家が役者もやってるときって、
わざと自由にやってる気もするんです。
なんというか、書いたのは
「この野田秀樹だぞ」とか、
「唐十郎だぞ」って、知らしめてというか。
唐十郎さんのお芝居って、
ぼく、知らないんですよ。
糸井
唐さんも、自分で台本を書く人なんだけど、
ある意味、ひどいよ(笑)。
会場
(笑)
そうなんですか(笑)。
写真
糸井
俺の出番なんだからぜんぶ俺がさらうぞ、
っていうような意思の塊で。
もうね、みんながせっかくつくった
それまでのお芝居の流れをぶち壊しにするくらい、
「唐十郎」として出てくる。
でもそれは座長としてはありがたいですね。
糸井
ああ、そうか、そうだね。
ありがたいです。
つまり、演じるこちら側が、
「書かれたものをそのまま再現しないと怒られる」
みたいな空気のときに、
「いまだよ、いまをたのしめ!」
っていう方が教祖としていらっしゃると、
これはらくだ、ってなりますね。
糸井
ああ、そうか。
その意味では、野田秀樹もそうですね。
そういうことだと思います。
糸井
なんか、変な声出したりね。
野田さんはやってますよね、そういうことを。
「ここは自由だよ」みたいな感じで。
あれを脚本書いてる人がやったら、
書いてない立場の人も、
自由のおすそ分けをもらえますよね。
そう思います。
糸井
書いている人がそれを壊すんだからね。
あと、芸人さんも、自分でネタを書かれて、
それを自分で表現するでしょ。
あれも、たぶん野田さんのようなことですよね。
糸井
そうだ、そうですね。
その意味では、
芸人さんのライブのつくり方も、
とても興味があります。
糸井
あの、余計な間を取ったりつくったり、
みたいなことは、書いた側しかできないね。
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できないし、それを自由にやっても、
一定の笑いの方程式を
外さないっていうのがすごいなと。
糸井
舞台でネタをとばしちゃった、
っていうのは、よく言ってますもんね。
それでもちゃんとパッケージとして
たのしめるものになるから、
ほんとうにすごいですよね。
糸井
それが「芸」というやつですね。
(明日に続きます)
2026-09-04-FRI