祝・対談の
真っ白なレアチーズケーキ

国谷裕子さんと
イトイさんの対談がスタートしました



国谷さん、
ずっと憧れです。

対談スタートを記念して
勝手にお祝いのケーキなどと思いまして。



さかのぼれば、30年前。。。
(文字にしてみると、すごい歳月という実感が。)
NHKでキャスターを始められた頃、
大学生だったわたしは、
たまたまアルバイトしていたのです、
おなじ場所で。

いや、
アルバイトと言えるほど、ちゃんとしてなかったです、
白状すると。
「NHKに遊びに来てるのって、キミくらいだよなぁ」
と言われてました。同窓の先輩から。
ぼんやりしたアルバイト生でしたけど、
忘れられない光景があるのです。



帰りが深夜になったある晩、
ひとりで西口と呼ばれる玄関に向かっていたら、
数メートル先に、国谷さんの後ろ姿がありました。
OAを終え、反省会も終え、
コートを肩から羽織って、腕にはたくさんの資料を抱えて。
コツコツとヒールの音だけが、半分、暗くなった廊下に
響いてたのを覚えています。

画面のなかの、すっと背筋の伸びた佇まいと
局内での穏やかだけれど、キリッとした横顔と。
その奥には、
資料と向き合う膨大な時間や
明日に対峙するための準備や
ひとりで静かに挑まれる瞬間の連続なのだろうな。。。
と、いつも以上に華奢に見える背中に
感じたものでした。



実は、この対談の時にも
こそっと居させてもらったのですよね。
イトイさんと国谷さんが、リラックスしながら
テレビという枠を超えて、
決められた時間やテーマにしばられず、
自由に会話なさる様子を
間近で聴いて、見ていました。
たのしかった。。。



比較するとわかりやすいかもしれないので、
例えば、わたしがイトイさんに会いにきたら
「わー、おひさしぶりです。チョコ、持ってきましたー」
とか、なるわけです。
割愛しますよね、この導入。文字にしなくていい会話です。
国谷さんは、違います。
静かで、やわらかなのだけど、言葉数が少なく、
ひとこと目から文字にできる対談になっていました。
対談の初回、今日の出だしをご覧いただければ。)

しかも、振りかぶって投げてるわけじゃないのに
問いかけが、剛速球です。横から見てると。
え?今、すこーんと
キャッチャーミットに入りましたよね?みたいな。
イトイさんはイトイさんで、ものすごく楽しそうに
打ち返してるわけです。



そして、なんか深い。。。

この説明になってない感想もどうなんだ?と思いますが、
難しい言葉の応酬じゃないのだけど、
核心的な問いかけと、その意図をわかった上での
軽やかな答え、
それを即、理解しつつ、次の球が投げかけられて。。。と
続いていくさまは、
見応え、聴き応えなんてモノじゃありませんでした。



正直にいってしまうと、
平易なことばで、たのしくやり取りが
はずんでいるのだけど、
1/3、いや、半分くらい、
ついていってなかったと思います。対談の内容に。
なんとな〜く、「こういう意味なのかな?」
と思いながら、けっこう一生懸命耳を傾けてましたが、
真意を理解できてるか?と聞かれたら、
そこまで自信ないのが、本音です。







こういう状況、あるのですよね。
あれは、こういう意味だったのかなぁ。。と思いつつ
どこかで探りながら、その会話やことばをずっと携えて
仕事したり、暮らしたり、歳を重ねたりしてるうちに
ひょこっと何かのきっかけで、その時のことばが浮かんで
「あれは、こういうことだったのかな」なんて
再び、噛みしめることが。



即座に、「わかる!」と反応できるのも
気分いいのですけど、
なんとなく消化しきれなくて、反芻しながら
胸のうちにその会話やことばが宿ってる感じも、
いいですよね。
牛か?と思いますけど。



対談記念のケーキは、
シンプルなレアチーズケーキにしてみました。
足さないし、盛らない。
最良の素材が的確なバランスで調和してるから
長く愛され続けて、
その信頼を決して裏切ることのない真っ白なひと切れ。

赤坂『しろたえ』のレアチーズケーキは
しっかりコクがあって、チーズの酸味もきいていて、
大きなカットじゃないのに、その過不足のなさが
絶妙な逸品です。



時間があったら、
いや、できればなくても
このおふたりの対談を読んでいただいてですね、
もしも、すみずみまで理解できたら、
おしえていただきたい。。。
そんな気持ちです。

みんな総じて、プロとか玄人になっていくというか
なりたがってしまいがちですけれど、
肩書のある玄人を超絶うわまわるアイデアや知識を
体内に持ちつつ、
目線はあくまでまっさらな素人という道を貫く
ふたりの達人。。。おそるべし
と、実感した至福のひとときでした。



あたたかくなってきましたけれど、
いつもと違う春ですよね。

この対談の時に、
国谷さんからわたしにまで頂きものをしました。
白い可憐な蘭の鉢でした。
ここふた月ほどで8割方の仕事がキャンセルになったりと
そわそわもします。
しますけれど、
まっすぐな茎の先で、小さな白い花がだんだんと
開いていくのを見てると、こらえる時はこらえつつ
丁寧にやっていこうという気持ちになります。







あ、蛇足ですが、
若い頃にサボテンを枯らしたこともありまして。
サボテンを枯らす女子がテーマみたいなドラマが
たしか、そのあと放送されたのですけど、
え?これはレアってこと?ポピュラーってこと?
ダメなの?セーフなの?と若干、自分の中で混乱しつつ
やっぱり人には言わないでおこう、と思ったものでした。
国谷さんに初めてお会いしたのと同じ頃だから
もう時効なので告白しましたが、
可憐な白い蘭。。。
ぜったい枯らさないようにしよう。と誓っています。







冬きたりなば、春遠からじ。
ゆっくりと、よい春に向かいますよう。


わたなべ まり

 

 

2020-03-19-THU

●西洋菓子 しろたえ



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