[──]
でも、歴史が深い一方で、六本木のミッドタウンに出店したりとか、とらやさんておしゃれなイメージもありますよね。

[小田社長]
そうそう、そうなんですよ。

[──]
たしか、今のパッケージデザインや広告、お店のディスプレーなどのクリエイティブディレクターをつとめているのはサン・アドの葛西薫さんですし。

[小田社長]
あの‥‥とらやさんにはゴルフボールのかたちをした最中があってね。

[──]
ええ、はい、ありますね。
たしか「ホールインワン」という名前で。



[小田社長]
あれが作られたの、大正時代なんですよ。

[──]
えっ、そんなに昔なんですか?
すごくモダンな感じがしますが‥‥。

[小田社長]
ようするに、まだ「ゴルフ」というものがほとんど世に知られてないときに、あんなデザインの最中をつくっているわけ。

そういう「進取の精神」も兼ね備えてる。

[──]
当時は、かなり斬新な見た目のお菓子だったんでしょうね。

[小田社長]
しかも、それが今でも、何十年も続いてるわけですよ。

[──]
ああー‥‥。

[小田社長]
斬新なデザインを数百年という「厚み」が支えているからこそ、一時の流行に終わらせずに廃れず、何十年も、続けていけるんですよ。

[──]
なるほど、なるほど。

[小田社長]
だから、ぼくが「自問自答」するときのひとつの座標軸として
「とらやさんだったら、こんなことするかなあ」
というのがあるんです。

[──]
ええ。

[小田社長]
「ああ、しない、しない。
 やっぱりやめとこう」って(笑)。

[──]
へぇー‥‥。

[小田社長]
時間に耐えうるものと、ファッション性と、その両軸のバランスのよさ‥‥ですよね。

とらやさんが500年も続けてこられたのには、続けてこられただけの、理由があると思う。

<つづきます>


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