その3 飯島さんの、いろんな勉強。

──
さきほど「薬膳の本」という話がでましたが、
そういえば飯島さんは、
数年前に、薬膳を学ばれていましたよね。
中国の大学の東京校に行って。
飯島
はい、卒業しました。
もちろん、それを生業にしている料理人は、
いつでも全部暗記していて、
人の舌の色とかで判断し、
その人の身体をよくする料理をつくります。
わたしはまだまだなので、
その都度調べなくては薬膳料理ができませんから、
声を大にして言えるほどではないんですけれど。
──
さっき、おっしゃった「畑」っていうのも?
飯島
農園で、野菜作りを、
週1回ですが、習いました。
1年くらいでしょうか。
──
「野菜を作るって、どういうことだろう?」
「おいしい野菜って、なんだろう?」
っていうことですね。
飯島
そうです。
野菜が畑でどんなふうになっているかなどは、
青果店で見ているだけではわからない。
驚きの連続でした。
ブロッコリーひとつにしても、
畑で育っている状態から、
食べる部分はとても少なかったり。
──
飯島さんって料理についての
勉強というか、好奇心がすごいです。
たしかインド料理を習っていたことも。
飯島
そういえば、以前、
レストランの学校にも行ったことがありますよ。
レストランとか居酒屋で成功してる人から、
話をきくんです。
──
ということは、経営のための学校?
確かに、CMの仕事なんかでも、
「居酒屋を丸ごと作ってください」って、
言われることもあるでしょうけれど。
飯島
はい。「こういう感じで、店って作っていくんだ」
という勉強になりました。
お店をはじめる人って、
その地域に合った店を作ろうとする人や、
自分がその料理が好きだから、
その料理を、地域を問わずつくりたい人など、
いろんなタイプの人がいるそうなんです。
──
そうか、飯島さんが料理で表現する仕事は、
一皿で完結はしない、ということですよね。
つねに、料理の向こう側に「食べる人」がいて、
そこには喜びがあり、
そしてその料理をとりまく社会があって‥‥。
そして今はワインの勉強中とお聞きしました。
飯島
今は、そうですね。
ワインは、飲む機会が多いんですが、
この仕事をしているからか、同席のかたから、
何でも知ってるって思われちゃうんですよ。
──
「飯島さんに任せれば間違いない」って?
飯島
そうなんです。
「選んで」って言われるんですけど‥‥。
──
ぼくらも言ってしまいそうです。
飯島
せっかく選ぶチャンスがあるのに、
わからないで選ぶのはもったいないなぁと。
それで「よし!」と勉強を始めました。
そうすれば、自分の飲みたいワインを
注文できるじゃないですか。
──
ソムリエの資格をとるわけでは‥‥。
飯島
それはないですね。
ただ、ソムリエの試験の季節の前に、
集中講座が開講されるので、
そこに行ってみたりもしています。
そういう勉強をしてると、
先生について、クラスのみんなと一緒に、
フランスに行くツアーにも参加できるんですよ。
シャンパーニュとか、ブルゴーニュとかの
作り手さんのところに行けたり、
そこのおいしいレストランに行けたり。
──
わあ、それはいいですね!
なかなか個人では行けませんから。
飯島
ちょっとね、そういう、
おいしいものの直感が働くんですよ(笑)。
──
飯島さんって
「おいしいもの直感」、すさまじいですよね!
ロケ先とかで食事に迷ったとき、
「このお店!」と思い切って入ると、
たいてい、おいしい店に当たるでしょう?
飯島
当たります、当たります。
でも直感だけじゃなく、情報も駆使しますよ。
たとえば、京都に行くとなったら、
『ミーツ(Meets Regional)』とか買うじゃないですか。
──
はい、関西版の情報誌ですね。
飯島
でも、行く時に買うんじゃなくて、
しばらく寝かせておいたのを、持って行くんです。
──
えっ?
飯島
必要のない時に買っておいて、
3ヶ月以上、寝かせてから使うんです。
だって、出たばっかりの所って、
混んでるじゃないですか。
──
あぁ、そうですね!
で、その間に、評判も聞こえてきますし。
飯島
そうそうそう。
──
すごい! インターネットの情報も?
飯島
見ます。でも、満点がついているようなお店より、
賛否両論あるほうがいいなと思ったり。
──
自分も「否」のほうに回る可能性がありますものね。
それと、飯島さんはお友達のネットワークがあるから、
いろいろなおいしいものの情報が入ってきそうですね。
飯島
そうですね。福森道歩さんとか、
京都に住んでいる友達に聞いたりとか。
それから、あまり通えていないんですけれど、
世界の料理を知るために、語学も必要だなって、
英会話にも通い始めました。
外国でレストランに行ったとき、
せっかく説明してくれてるのに、
すこしもわからなくて。
──
確かに、メニューとか、食材だと、
難しい言葉もちょっと覚える気が出ますよね。
飯島
そうなんですよ。
──
飯島さんは、そんなふうにして
個人的な興味が仕事に繋がっていくんですね。
飯島
もともと、あんまり、考えてから
行動するタイプじゃないんですよ。
けれども後で振り返ると、
そういうことが多かったなって思います。
ですから、自分がやりたいことって、
やっておいたらいいって思うんです。
いつか、繋がるのかもしれないですし。
──
これだけ忙しくて、その時間を作るのは、
本当にすごいです。
飯島
そんなに、みなさんが思ってるほど、
忙しくないんですよ。
「忙しいんでしょう?」と警戒されてしまって、
本業の依頼が来ないのは困ります(笑)。
──
たとえば、些細なことでも、ご飯会とかでも、
「あのひと、忙しいから誘わなかった」とか、
くやしいですよね。
飯島
あります、あります(笑)。それに、
「これはもう、大仕事だ!」みたいな
ご依頼ばかりでは、チームの負担も大きいので、
どうぞ気軽に御依頼ください。
──
それ、書いてもいいですか(笑)?
飯島
もちろんです。
(つづきます!)
2014-01-27-MON