その2 テーマは「あつまる」。

──
そして今回の本のテーマは、「あつまる」です。
飯島
はい。本のまえがきにも書いたんですけど、
「LIFE女子会」「LIFE合宿」を
やっているんですよ、
という読者の方がいらして。
──
そうなんですってね!
週末にみんなであつまって、
『LIFE』のレシピをいくつか
みんなでつくって食べるんだそうですね。
飯島
それをヒントに、こんどは
みんなであつまる場を楽しむための
料理の本がつくれたらいいなと思ったんです。
近い仲間で集まるわけですから、
主催者がいてゲストがいる、
みたいな堅苦しさは抜いたあつまりにしたいなと。
糸井さんも、そういう場に行くと
なんだか居心地が悪いんだよというお話をなさっていて。
──
「作ってる人が、背中向けて
 寂しそうにしてるのは嫌だな」って。
じっさい作り手が寂しいわけじゃないんでしょうけど、
食べるだけという立場のひとはそう思ったり、
遠慮を感じてしまうこともありますよね。
飯島
わかります、わかります。
──
「そこをなんとかしてほしい」っていうのが、
飯島さんへの、糸井からの大きな宿題でした。
飯島
わたしにもひとりぐらしの友達が大勢います。
ひとりでいることを選んでいる人もいるけれど、
みんな、たまには、
家族みたいな感じで集まりたい、
それが会う時は必ず外食ばかりでは、辛いですよね。
──
昨年末に掲載した、サカキシンイチロウさんの連載で、
不景気になってクリスマスに外食をする人が減ったと。
クリスマスって、昔は、町へ出て、ご飯を食べて、
お酒を飲んで、ドンチャン騒ぎして、
バブルの時代なんて、レストランの予約も取れないくらいの
人気があって、お金がバンバン回ってた。
けれども今はみんな、家に帰って楽しんでる。
それを悲しく思うとう飲食店の人に、
サカキさんは、こんなふうに言うんです。
「プロの手助けがなくても、
 自分たちでクリスマスという特別な日をたのしめる人が、
 それだけ増えたと思えばステキなことじゃないですか。
 家族や仲間が年に一度、
 シアワセな気持ちになりたいと思うときに、
 かつてのように忙しくないというコトを、
 よろこぶココロの余裕を持ちましょう」
って。
本来、集まって食べるって、そういうことだから、
そういうふうにぼくらの食生活が成熟したと思って、
喜ぶべきだ、っていうお話です。
飯島
そうですよ。レストランの人も、
そんな日は家に帰って食べましょうよ。
──
糸井の、堤清二さんの話もそうですが、
「みんな、仕事だけじゃなくて、
 大事なところは、別にあるはずだ」っていう考え方って、
すごくたいせつだと思うんです。
そういう時に飯島さんの『LIFE』シリーズは、
なんて役に立つんだろうと、本当、思います。
今回、「苦手な人は、これをやってください」
みたいな記述をなるべく、入れましたよね。
飯島
はい。誰もが調理に参加できるように。
──
しかも、本を編集し終わって思ったんですけど、
結構、どれも簡単めです、今回のレシピ。
飯島
そうですね。
そして、梅干しとトマトを使うレシピが
あんがい多いなって、
校正をしていて思いました(笑)。
──
それは「マイブーム」的な?
飯島
もうずっと好きなんですよ。
これは、出汁みたいなものなんです。
そういう意味では、鰹節と昆布のように、
調味料みたいな感じで使ってるんですよ。
──
そうか「うま味」なんですね。
いまや国際語にもなっている「UMAMI」。
飯島
しかも身体にいい。
『ごちそうさん』では
いろんなタイプの料理を作っているんですが、
すごく疲れてる人が出てくるシーンで、
食材を選ぶのに、薬膳の本などで調べると、
梅は、効能が飛び抜けているんですよ。
──
へぇ!
飯島
すごいんですよ。とにかく、もう。
そういうところも好きな理由のひとつです。
撮影とかで残った醤油に、
梅干しの種を漬けておくのも、おいしいですよ。
梅肉を叩いて使うため、10個くらいの種が残ると、
それに醤油を注いでおいて、
焼き魚とか、大根おろしにかけたり。
──
出汁も出るし、酸味も出るから!
飯島
そうですよね。ちょっと爽やかな醤油になりますよ。
──
そしてトマトのうま味もすごいですよね。
いまやトマトといえばイタリアですが、
そもそもイタリアには唐辛子もトマトも
ジャガイモもなかった。
ローマ時代、うま味って、魚醤だったんですよね。
で、トマトが、南米から交易で伝わってから、
魚醤文化が廃れてしまうくらい、
トマトのうま味が席捲したんですって。
飯島
本当、いい味になりますよね。
実際に、トマトにはグルタミン酸があって、
これは昆布と同じですよ。
──
おいしいわけですね。
今回、トマトの料理といえば
「トマトライス」があります。
飯島
「トマトスパゲッティ」もあります。
──
それぞれ、トマトを擦り下ろして使います。
『副菜』の本では、トマトを擦り下ろしたものを
おそうめんのつゆにしたことがありました。
飯島
使いやすいですよね。
──
今回、『LIFE』の1、2、3巻と違うところは、
これまでがコロッケやしょうが焼きなどの
「定番料理」だったのに対し、
いわば「名もなき料理」といいますか。
飯島
そうですね。
──
本を作る過程において、1、2、3巻の時は、
「みんながいちばん食べたいもの」から
メインディッシュを決めて、テーマを決めて、
撮影をするまでの間に飯島さんが
「研究」をする、そんなつくりかたでした。
飯島
そうですね。
──
みんながおいしいと思う味を知りたいから、
人気があるお店を何軒か回ってみる。
試作の過程で、どう作ったら、作りやすいかを考える。
トーナメント制、勝ち抜き戦みたいに、
すこしずつ味を変えて作り込んでいきました。
そして『副菜』本は、そういう時に、傍に添えていた、
オリジナルの小さな料理を集めた本でした。
で、今回は「あつまる」というテーマにそくして
飯島さんに考えていただいた料理がならんでいます。
飯島
そうですね。
もともとつくっていたレシピもありますし、
今回のために考えたものもたくさんあります。
これまでの『LIFE』シリーズと同じように、
「そうめん」っていうテーマが決まったら、
自分で、いろんな所に行ってみましたし、
これまでに食べたおいしいものの記憶やメモをさぐったり。
「そういえばこんなそうめんを食べたな」とか、
「こういうのもあったら、おもしろいなぁ」とか、
そんなふうに作っていったんです。
それこそ、韓国で食べた、豆乳の麺を応用したり。
──
きな粉の入った豆乳麺ですね。
あれ、おいしかったなあ。
ぜんぶおいしいんですけれど(笑)。
飯島
はい。また、畑を習っていた時に、
畑で食べたそうめんの、野菜のお汁とか。
──
畑も習っていたんですね?!
すごいなあ。
(つづきます!)
2014-01-24-FRI