七十二候【第五十候 菊花開 きくの はな ひらく】

各地で菊の品評会や菊まつりが開かれる頃です。
旧暦九月九日は重陽(ちょうよう)の節句。
別名「菊の節句」といい、中国ではこの日、
菊の花を浸した菊花酒で不老長寿を祝う習慣がありました。
それが平安時代に日本へ伝わり、
宮中では高貴な人々が菊花酒を飲みながら
歌を詠み花を競う「菊合わせ」を楽しみました。
菊の花に真綿をかぶせて夜露と香りを移しとる
「被綿」(きせわた)という風雅な習わしも知られています。
── 冬至が始まりますね。
「一年でいちばん昼が短く、
 夜の長いとき。」
は~、早く暗くなっちゃうんだよな~。
あずま女 冬至というのは
この日から日が長くなってくる日、
ということで。
── あ、そうか!
希望のある日なんですね。
あずま女 そうなんです。
十二月のうちに
もう春が始まるという。
── なるほどね。
京おとこ もともとクリスマスもそうなんですよ。
冬至のお祭りっていうのがあって、
それをクリスマスにしたという。
冬至は昔から世界中で
お祭りをしてたんですよ。
── 夏至祭、冬至祭はフィンランドでもありました。
北の国は
もうまったく日が出っぱなしの日と
まったく出ない日、みたいなことだから。
あずま女 極端に違うんですもんね。
京おとこ あんまり俳句の話をしてないですけど、
この季節の俳句、好きなんですよ。
『へろへろとワンタンすするクリスマス』
っていう。
これ絶妙に良くないですか。
あずま女 脱力系ですよね(笑)。
京おとこ これやっぱりワンタンですからね。
あずま女 ワンタンですから。
京おとこ ラーメンでもないし。
── 秋元不死男さん。
京おとこ この句を詠まれたのは昭和25年なんですよ。
戦後一挙にクリスマスっていう風習が
入って来たんだと思うんですよね。
そうそう、クリスマスのサンタクロースが
赤と白っていうのは
コカコーラのキャンペーンですからね。
あずま女 あ、そうなんですか!
京おとこ ええ。アメリカの。
でもみんな、もともとそうだと
思っているじゃないですか。
日本も敗戦直後、アメリカのクリスマスが
なんかわけわかんないぞ、っていうなかで
一気に入ってくるわけです。
そこで「へろへろとワンタンすする」わけです。
あずま女 絶対サンタ帽かぶってますよ。
京おとこ 三角のトンガリ帽。
ふふふふ(笑)。
あずま女 昭和のクリスマス。
さて、旬は何でしょう。
── 「河豚(ふぐ)」でございます!
あずま女 おお!
京おとこ 河豚です!


── 今シーズンから
東京での河豚の規制がゆるくなったんです。
出せる店が増えたんですよ。
あずま女 免許がゆるくなったんですか?
── いえ、毒のある部分を除いたものを使って
調理して供してもよし、
という話だったと思います。
京おとこ 河豚取扱責任者みたいな
そういう人がいなくても出せるわけですね。
── イタリアン、フレンチなんかでも
河豚を使ったレシピが登場するかもしれませんね。
そもそも、スーパー行くと売ってますからね。
加工したものは。
あずま女 ああ、そうですよね。
考えてみると、こどもの頃って
河豚って言ったら一夜干しでした。
普通に家で炙って食べてました。
── そうですよ、鍋も刺身も大人になってからです。
ぜんぜん食べたことなかったです。
でも関西のボンは小さい頃から?(笑)
京おとこ いやいやいや!(笑)
でも大阪の人って好きですよね。
── あ、京都は違う?
京おとこ うん。大阪の人が
河豚や蟹に燃えるんですよ。
── 「てっちり」ですか。
京おとこ てっちり、てっさ。
あずま女 河豚はやっぱり関西に負けますよね。
店の数が違いますもの。
京おとこ そう、関西は安いですし。
── つまり、産地が西にあるから?
京おとこ そうでしょうね。下関とか。
── 『飲食事典』によりますと
「千葉県のほうでは富籤と同じで
 『滅多に当たるものか』という心で
 『トミ』という」そうですよ。
「関西地方では澄んで『ふく』という」。
これ、ダブルミーニングじゃないですかね。
「いずれも豚のごとく肥大するから河豚と書く」。
あずま女 海なのに。
── 「これが遡る長江(揚子江)は
 河海の区別がつかないくらいだから
 やや上流の南京あたりで
 河豚といったのではないだろうか」と。
「我が国で食用したのは
 有史以前の太古時代であったらしく
 各所に現存する貝塚からは
 この遺骨が出土する」と。
なるほど‥‥。
河豚。おいしいですもんね。
生でも干しても。
京おとこ 大人になってから
「鰭酒」を飲んだ時は感動しました。
── おいしいですよね!
京おとこ これは大人だ、と(笑)。
── なんか変なことしてますよね。
鰭炙って、酒に入れて飲むって。
京おとこ ジャバジャバ漬けてねえ。
あずま女 火をつけますよね、
上でポッって。
── ああ、つけますね。
京おとこ 香ばしい味ですよね。
あずま女 確かに魚の香りはするんですけど
どちらかというと
鰭を一回炙って
きつね色になったところを
入れるので、
ほんとに香ばしいですよね。
── さて、次は「蓮根」でございます。
これ、冬に収穫するの、
寒いでしょうねえ。
あずま女 冷たいですねえ!
── 泥沼に‥‥!
ありがたいですね。
京おとこ こどもの頃でいうと
蓮根っていうとおせち料理って
感じがしました。
あずま女 しましたね。
酢の物にしたり。
── 確かに冬の煮物にはよく。
五目豆にも細かく刻んで
入れたりしてましたよ。
あずま女 ちらし寿司に入れました?
京おとこ ああ、入れましたね。
── ああ、入れますね。
酢を通すとシャキシャキするんですよ。
通さないとホクホクするんです。
きんぴらもうまいですね。
あずま女 おいしいですよねえ。
京おとこ 思いだした。
おせちは縁起物なんです。
「見通しが良くなる」とか。
あずま女 穴を見ると!
── なるほど!
さて、「柚子」ですね。
この季節は柑橘が順番に
出てくるんでいいですね。
柚子は食べて良し、
風呂にして良し。
やっぱり冬至の柚子湯のところから。
「冬至には柚子湯に入り、
 南瓜を食べる習慣がある」と。


あずま女 南瓜ってただ茹でるんじゃなくて
小豆と煮ますね、確か。
冬至の南瓜って。
── そうなんですか?
その習慣なかったです。
京都はいかがですか。
京おとこ 冬至、食べます食べます。
どっかの寺で食うんじゃなかったかな。
あずま女 またお寺ですか!?
── 京都はなんでもお寺さん(笑)。
京おとこ 「ボケ封じ」なんですよ。
あずま女 柚子湯もありますね。お風呂の。
こどもの頃、柚子って
高いものってイメージがあったから、
丸ごとぼこぼこ入れるの
もったいないなあって思ってたんですけど、
けっこう豪快に入れないと
香り出ないですよね。
── 中でほぐして
ぐじゅぐじゅにして
よく怒られました。
京おとこ そうだ、思いだした!
── なにをですか。
京おとこ 南瓜です。
京都は確か
「おかぼのたいたん」
っていうんですよ。
あずま女 おかぼ。
── おかぼって何ですか?
京おとこ 南瓜のことです。
── 南瓜をおかぼ!
あずま女 「お」がつくんですね!
さすが~。
── みやびー。
京おとこ 「ん」のつくものを
冬至で食べると良い、
っていうのもあるんですね。
南瓜は「南京(なんきん)」でしょう。
ほかにも人参、蓮根、銀杏、
金柑、寒天、饂飩。
旬のもので「ん」がつくっていう、
そういう語呂合わせでしょうね。
── 「お・か・ぼ」。
あずま女 いいことば聞きましたね。
今度京都行ったら言ってみます。
京おとこ おかぼで通じると思いますよ。
あずま女 大丈夫ですかね、
料理屋で注文するときに
「おかぼ」。
京おとこ 「おかぼのたいたん」って言えば
だいたい出てくるんじゃないですかね。
── 微妙な発音が真似できないです。
おかぼのたいたん。
「た」にアクセントがあるのが。
京おとこ 「タいたん」ですね。
── 「たいタん」とか言っちゃいますね。
京おとこ はははは。
── タいたん。
京都弁難しい! ありがとうございました。
次回は「麋角解 さわしか の つの おつる」。
12月26日にお会いしましょう。
2012-12-21-FRI
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