七十二候【第五十候 菊花開 きくの はな ひらく】

各地で菊の品評会や菊まつりが開かれる頃です。
旧暦九月九日は重陽(ちょうよう)の節句。
別名「菊の節句」といい、中国ではこの日、
菊の花を浸した菊花酒で不老長寿を祝う習慣がありました。
それが平安時代に日本へ伝わり、
宮中では高貴な人々が菊花酒を飲みながら
歌を詠み花を競う「菊合わせ」を楽しみました。
菊の花に真綿をかぶせて夜露と香りを移しとる
「被綿」(きせわた)という風雅な習わしも知られています。

あずま女 菊って育てるのむずかしいですよね。
子どもの頃、学校で経験しました。
京おとこ へえー。
あずま女 夏休み家に持って帰るんですよ、鉢で。
これがだいたい枯れちゃうの。
秋にみんなで持ち寄って
きれいに咲いたのを
みんなで並べてお祭りしましょう!
‥‥のつもりが、夏休みの間に枯らしちゃう。
家によっては親が買って持たせたりとか、
苦労をけっこうする(笑)。



京おとこ ちいさい頃、「菊人形展」っていうのを見に行って、
どこがおもしろいのか、
さっぱりわからなかったですねえ。
あずま女 菊人形こわいですよね!
京おとこ ひらかたパークでやってたんです。
京阪の電車乗って
見に行きましたけど、
これをなぜ見るのか、っていうのが
わかんなかったですね。
蝋人形よりこわいですよね。
あずま女 金田一耕助な感じです。
── 横溝正史の「犬神家の一族」ですね。
あずま女 あの映画を見てから
こわくなっちゃったのかもしれない。
── けれど、それ抜きにしても、
なんだかおどろおどろしいものがありますよね、
菊人形って。
あずま女 たしかに大人になってから見ても
なかなかわからない世界です。
── 生(いき)人形ってあるじゃないですか。
江戸から明治期なのかな、リアルな等身大人形。
ああいう見せ物っぽい
おどろおどろしさがありますね。
あずま女 それに、牡丹とか朝顔などの園芸家にとっては
見せ場って必要じゃないですか。
菊もそうだったんでしょうね。
── むずかしくて華やかだから
腕の見せ所なんでしょうね。
さて、この時期は、菊もそうですけど、
「小豆(あずき)」が旬です。
ちょっと和菓子屋の倅として異論があるんですけど、
本に赤飯の写真がありますが、
江戸文化圏の和菓子屋は小豆で赤飯を炊きません。
「ササゲ」です。
なぜなら、お武家様は小豆で炊いた赤飯は
小豆の腹が割れるので。



あずま女 切腹に通じ、縁起がわるいということですね。
── と、厳しく言われて育ちました。
あずま女 和菓子屋さんでしたら
さぞかしおいしいのを
召し上がってたんでしょう。
── 蒸しおこわ、すっごくおいしいです。
炊きかたを教わったんですけど、
むーずかしくて!
「ホドを打つ」っていう作業があって、
蒸して、一回水をかけるんですよ。
あずま女 そういえば、お菓子屋さんでお赤飯って
不思議だなと思ってたんですけど、
もともと京都はどうなんですか。
お菓子と餅屋が分かれてたって
聞いたことがあるんですけど。
京おとこ ああ、そうかもしれないですね。
── ああ、きっと違うでしょうねえ。
京おとこ 別のカテゴリーっていうか
ジャンルかもしれないですね。
── 餅はもっと庶民的なものですよね。
上生菓子は
ぜんぜん違う職人の技ですよね。
あずま女 「出町ふたば」とか、
ああいうところが餅屋の流れだとか。
もともと別のものだったのが
だんだん両方できるように
職人さんもなっていって
今は和菓子屋さんで頼む感覚ですよね。
お赤飯はやっぱり。
── そうですね。
「とらや」でも注文を受けていますね。
和菓子屋は餅米を使いなれていますからね。
あずま女 あ、そっか。そういうことか。
技術が。
お赤飯おいしいですよね。
京おとこ コンビニのおにぎりでも
ぼく、ついつい赤飯を選んじゃいます。
「白蒸(しらむし)」ってあります?
東京に。
あずま女 しらむし? ないです。
京おとこ 赤飯の、白い版っていうか
豆抜きですよ。
これ、おいしいんですよー。
あずま女 お餅をつく前っていうことですね。
── 餅米を蒸すんだ。
おいしいに決まってますよね!
あずま女 味つけとかしないんですか。
京おとこ しないですね。
あずま女 甘くもしょっぱくもしないの?
京おとこ ええ。
で、赤飯に並んで売ってたりしますよ。
── 発音はなんと?
京おとこ 「シらむし(シにアクセント)」って
言うんです。
全員 シらむし!(練習)
京おとこ これはぜひ東京でも
流行ってほしいなあ。
── これはいつ食べるんですか。
赤飯のようにおめでたい時みたいな
決まりはあるんでしょうか。
京おとこ いつでもいいんです。
あずま女 おにぎりの代わりみたいに?
京おとこ そうです、そうです。
── おかずは?
ごま塩で食べるんですか。
京おとこ ごま塩ふる時もあれば、
ふつうにご飯として。
── へえー。
あずま女 ぜったいおいしいと思う!
わたし、関東もんにもかかわらず
道明寺が好きなんですよ、桜餅は。
だから、よくわかります。
やっぱり餅米のつぶつぶ!
── あと、タイの東北部も餅米ですよね。
あずま女 あ、はいはい!
マンゴー乗っけて食べたりしますよね。
── サラダとかと一緒に食べたりとか。
京都にそれがあるなんて、うらやましい。
京都行った時に、その気で見たら
いっぱいあるんでしょうね。
京おとこ たぶん、目に入ってないんだと
思いますよ。ええ。
それから、豆ご飯に白蒸っていう、
いわゆる緑の豆に
白蒸の組み合わせもあります。
あずま女 もっちりしておいしそうです。
やっぱり餅米って、
うるち米より高級な感じですよね、
── ありがとうございました。
糯米で盛り上がってしまいましたね。
次回は「蟋蟀在戸(きりぎりす とに あり)」。
10月18日にお会いしましょう。
2012-10-13-SAT

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