メールを読みます。その4

ほぼ日
では、次のおたよりへ。

30年近く前に飼っていた、柴犬のアン。
昔のことなので、散歩は連れ歩くのではなく、
鎖を外して放し飼いというやり方でした。
鎖を離すと矢のように田んぼの向こうへ飛んでゆき、
ボスである父が頃合いを見計らって口笛を吹くと、
どこからでも飛んで戻ってきました。
鋭く遠く響くその口笛は
子どもにはとても真似できるものではなく、
口笛から程なく聞こえてくる足音に、
父をうらやましく思ったものです。
しかし姿や仕草より、
足音がいちばん記憶に残っているというのも、
不思議なものですね。

もらってきた日は
ひと晩中鳴いて家族を寝かせてくれなかったのも、
いまではいい思い出。
あの頃の自分たちに、フィラリアに対する
ちゃんとした知識があったら、
もっと長生きさせてあげられたかなぁなんて、
6年余りという連れ添った時間を
振り返って思います。

(Ring)

ほぼ日
30年近く前のお話です。
放し飼いすることもあったんですね。
友森
うん、昔は。
町田
ええ犬やね。
〈姿や仕草より足音がいちばん記憶に〉
とありますが、犬が走ると
そんなに音、します?
田んぼのようなところで‥‥。
ほぼ日
ドドッ、ドドッ、ドドッ。
町田
それ馬や(笑)。
でも、したんだね。
〈知識があったら、もっと長生きさせられた〉
6年か‥‥。
友森
柴犬は、16、7年は生きますね。
いまは長生きですよ。
町田
30年前って、西暦でいうと?
ほぼ日
1985年でしょうか。
町田
ちょうど株式のバブルがはじまったころですか。
コンビニなども、そんなになかった時代ですね。
友森
そっかあ。
ほぼ日
コンビニって、なかったですねぇ。
町田
その頃、東京に来てビジネスホテルに泊まって、
ライブが終わり、
缶ビール飲もかなと思っても、
夜の11時を過ぎていた場合、全部
「売切」「売切」「売切」「売切」
となっていましたね。
ほぼ日
ビールやお酒の自動販売機が
悲しい状態になっていました。
友森

買えないんですか?

町田
買えない。
いまはコンビニがあるから不便はないけど。
だから、いまとはずいぶん違う時代ですよ。
友森
この犬は、口笛によく反応したんですね。
町田
遠くのほうにいる犬を
口笛の合図で動かす技術って、あるんですね。
友森
そうですね、犬笛があるぐらいですし。
そういえば牧羊犬ってどうしてるんでしょうか。
あれも、笛で呼ぶのかなぁ。
町田
うちは、フーッと口笛吹いても
見るだけですよ。
犬が見るので、こっちが手振るとか(笑)、それだけ。
友森
吹いてもみんな
首かしげて見るだけ
ですよね。
町田
でも、この犬は、
呼ばれたのがうれしくて
走ってきたんでしょう。
友森
うん、そうでしょうね。
町田
柴犬って、忠実性はあるけど、
そんなになんでも言うこと聞く犬じゃないですよね?
友森
でも、飼い主のことは
けっこう聞くんじゃないでしょうか。
犬ってひとりで自由にしてるより
飼い主と一緒にいたいので、
ひとりで走っていても、
お父さんが呼んでいる、あそこにいる、と思って
喜んで来たんでしょうね。
町田
走ってきて、
「あ、かしこいな」と
評価されるのもまた
うれしかったでしょうし。
しかし、いまや2015年、
フィラリアの知識も広まりまして。
友森
そうですね。
500円くらいのお薬を
月1回飲ませるだけで。
町田
6年だった寿命が‥‥
友森
16、7年になる。
町田
いまは簡単な時代になりましたね。
ほぼ日
知り合いのラブラドールが
40kgある大きいオスの子で、
17年生きましたよ。
友森
あ、ラブで17年はすごいかも。
ほぼ日
医療の発達と知識が浸透したおかげで
みんな長生きになってます。

(つづきます)

2015-03-20-FRI