田中泰延+古賀史健+燃え殻+永田泰大+糸井重里「書くについての公開雑談。」
第8回
泰延さんが急に二枚目問題。
糸井
田中さんは、どうやって書いてるんですか?
あの異様に長い映画評。
田中
あれはですね、明日が締め切りで、
今夜中に書かないとしばかれるって夜に、
10時間かけて、
ほとんど泣きながら徹夜で1万字を‥‥。
糸井
冒頭の、パソコンの画面ひとつ分くらいは、
ウォーミングアップというか、
何の関係もないようなことが続きますよね。
田中
ええ、まずは、あの部分を書いとかないと、
残りを書けないんです。
糸井
いきなり本題には入れない。
田中
無理なんです。
糸井
そういう体質になっちゃったんだ。
永田
あの、泰延さんのツイッターで、
急に二枚目のときが、あるじゃないですか。
糸井
あるある(笑)。男女のこととか。
永田
あれって‥‥。
田中
えーーーと(笑)、
はい、なんか気持ち悪いやつでしょ?
永田
ま、気持ち悪くはないけど(笑)。
田中
あれはですね、大阪人としては
いわゆる「ツッコミ待ち」なんです。

カッコつけて書いてるのは、
「おまえ、何カッコつけとんねん!」
というのを待ってるんです。
永田
ツッコまれてないじゃないですか。
田中
だから、ものすごい失敗してるんです。

ものすごい恥ずかしい思いをしたまま、
無限の電脳空間に、
カッコつけた言葉が消えていくんです。
会場
(笑)
燃え殻
本当?
糸井
ツッコミ待ち的なツイートでも、
ちょっとテクニックを感じさせるのは
アレですよ、
すごくおモテになる先輩の発言。
田中
はいはい、はい(笑)。

あの一連のツイートは、
僕が言ってるんじゃないんだけど‥‥
というスタイルにして、
客観性をキープしようとしてます。
糸井
でも、あの二枚目性は、育ててほしいですね。
日本の文化総資産の観点からも。
会場
(笑)
糸井
浅生鴨さんだって、
ほら、二枚目を出すときがありますし、
その部分がゼロって、
人格として無理なんじゃないですかね。
燃え殻
あぁ。
永田
ただ、糸井さん自身は、
かなり少ないほうですけどね、そのへん。
糸井
まあ、僕は人類のなかで、
もっとも二枚目性が少ない気がするけど、
それでも、ありますよ。

褒められたいなあ‥‥みたいなのはさ。
田中
以前ね、糸井さんにね、
大阪の僕の仲間と宴会している場所に
お越しいただいたんですけど‥‥。
糸井
もうね、ひっどいところなんですよ。

そこにいる全員が、
酔っ払いで、お下品なんです(笑)。
会場
(笑)
糸井
で、そういう宴会に僕がひとりでね、
群馬で生まれたのに、
「東京から来ました」って言って。
田中
いっさいお酒を飲まれない糸井さんに、
30人の大阪の酔っぱらいが、
いっせいに絡んでいったわけですけど、
糸井さん、あのグループにいたら、
大阪という土地で
ちょっとでも二枚目を出すってことが、
いかにリスキーかという‥‥。
糸井
あぁ、地獄でしょうね。
田中
そうなの。本当にそうなんです。大阪は。
糸井
二枚目という、日本の文化総資産の量を、
だいぶ減らしてるよね、大阪で(笑)。
田中
天野祐吉さんも、おっしゃってましたね。

「カッコよさを茶化す、笑うってことが
 ひとつのカウンターカルチャーに
 なっているから、
 きちんとカッコつけるっていう広告が、
 成立しづらくなった」みたいな。
糸井
「ロックって何?」って言ったときに、
「モノを壊すこと」じゃないですよね。

この前、横尾忠則さんと細野晴臣さんと
3人でしゃべってて、
「ロックとは、繰り返しである」
というふうに、決めてきたんですけど。
燃え殻
「決めてきた」って(笑)。
糸井
そっちの定義のほうが、ロックですよ。

モノを壊すことだったり、
お父さんに反抗することなんかよりも。
田中
うん、そうですね。
糸井
ですから、
二枚目にツッコミを入れるようなことも、
どうでしょう、
今後、何割引きかにしてみては(笑)。
田中
はい、そうですよね‥‥。

あのときは、みんな、もうずっと前から、
糸井さんの奥さんが誰かなんて、
絶対に全員が知ってるに決まってるのに、
酔っ払って寄ってきて、
「糸井さん、糸井さん、あんた、奥さん女優?」
とか、
「いまさら、そんな絡み方あるかい!」
みたいな感じになって‥‥すみませんでした!
糸井
ああいうところでさ、
泰延さんが書いている二枚目風の原稿を
「小冊子にまとめたので、
 みなさんに50円でお売りします」
とかやったら、どうなるんでしょうかね。
田中
大笑いというか‥‥怒られさえしますよ。
糸井
楽園追放ですね(笑)。
永田
快感はないんですか?
あ、俺、いいの書けたぞ‥‥みたいな。
田中
それは‥‥あまりない‥‥かな。
永田
ないんですか?

でも、それでもたまに書くってことは、
少しくらい、何かないと。
田中
‥‥まあ、そうですね、そのときは、
「なんか、俺、
 ちょっとカッコいいかもしれない」
と、思ってるかもしれない‥‥。
永田
やっぱり(笑)。
田中
かもしれないんだけど、
それに対して誰からもツッコミがないので、
まったく、救いがない。

その繰り返しをしてるんですよ‥‥。
<つづきます>
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