理解力と人格。いま「一緒にはたらきたい人」とは?

ほぼ日と関係の深いおふたりが、
「人を採用するときに大切なこと」について
たまたま同時期に、別々の場所で話されました。
ひとりは、人材紹介会社、
KIZUNAパートナーズの河野晴樹さん。
もうひとりが、レオス・キャピタルワークスで
ファンドマネージャーとして働く藤野英人さん。
河野さんは「理解力」をはたらく人の
もっとも重要なポイントとして挙げ、
藤野さんははたらく人の機能ではなくて
「人格」こそが大切だと言いました。
人材紹介と投資運用という
異なるお仕事をされているおふたりですが、
大切にしていることはなんだか似ているようです。
糸井重里と3人で「はたらくこと」について
たっぷりと語りました。
全7回にわたっておとどけします。

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とじる

第3回俺、投資の仕事が好きなんだ。

糸井
藤野さんもいろいろ苦労されていますが、
特に大きなできごととしては‥‥
藤野
2008年のリーマン・ショックですね。
資産運用会社を経営していましたが、
実質破綻をし、社長を辞任しました。
持っていた株をすべて売却して、
役職もない、いちサラリーマンになったんです。
糸井
それまで社長だったのが、
いきなり平社員に。
藤野
そうです。そこからがんばって‥‥
また社長に復帰するという、
めずらしい経験をしています。
糸井
すごい経験ですね。
藤野
その経験を通して、
1つ自分の中で大きく変化したことがありまして。
それは「俺、投資の仕事が好きなんだ。」
という気持ちが一番大事だということです。
糸井
大事なものが変わったんですね。
藤野
リーマン・ショック前は、
機能と人格の話でいうと、どちらかといえば
機能で人を採用していました。

資産運用をしている会社というのは
仕事の役割が明確に分かれているので、
役割に対して能力が高い人を雇うほうが
会社にとって業績もあげやすく、
よい、とされていたんです。
糸井
人格よりも機能重視だったと。
藤野
そうです。
人格よりも機能で人を雇っていたので、
会社への思いや理解はおろそかにしていました。

ですがリーマン・ショックで
会社が大きなピンチに巻き込まれ、破綻になり‥‥
その破綻の大きな要因になったことが、
社員それぞれの考えの方向性が
バラバラだったことでした。
糸井
音楽の方向性の違いで解散する
バンドのような。
藤野
そういうことだと思います。
「何が大事なのか」
社員それぞれの考え方が違うので、
気持ちがひとつにまとまらず
ピンチを乗り越えられなかったんです。
糸井
そうでしたか。
藤野
破綻した後、
社員の給料は大きく下がりました。
業界の中での地位も悪くなりました。

それでも働きたいと残ってくれる社員がいた。
私も平社員になってもこの会社に残りたいと
働きました。そして気がついたことが、
「俺、投資の仕事が好きなんだ。」という気持ち。
糸井
純粋にこの仕事が好きなんだと
気がついたんですね。
藤野
そういう気持ちを持った人だけが残って
結束して仕事をしたことで、
だんだんと雰囲気がよくなったんです。
そこで機能よりも人格が一番大事だと、
私は気がついたのだと思います。
糸井
どんな雰囲気になっていったんですか?
藤野
好きっていうのは
ケンカをしない仲良しグループ、
ということではありません。
純粋にこの仕事が好きで、
おもしろくしたくて、
そのためには意見を言い合うこともある。
でも、ケンカのあとでも
みんなでごはんを食べに行ける、
そんな関係です。
糸井
いい関係ですね。
藤野
しかも破綻する前にくらべて
成績が劇的によくなりました。
糸井
ほお。
藤野
以前も成績の悪い会社ではなかったのですが、
純化されたことで、
成績の出方がより鋭くなりました。
糸井
純化ですか。
藤野
投資が好きで好きでたまらない人たちに
会社が純化されたことで、
私たちは一皮むけたんです。

他の純化できていない会社をみると、
業績が出にくくなることにも
気付けるようになりました。
糸井
それで、人格が大事だとわかったんですね。
藤野
そうです。
「この仕事が好きだ」という人たちと
たのしく仕事をすることにつきるなと思いました。
河野
僕もそういう人たちと働きたいですね。
藤野
先ほどの河野さんの話だと、
「俺、投資が好きなんだ」という人は
個でみているからみつかるんだと思います。
河野
きっとそうですね。
糸井
2人の話がこんな風につながるんですね。
おもしろいです。

(つづきます)

2017-06-01-THU

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プロフィール

河野晴樹

1962年生まれ。
慶應義塾大学卒業後、株式会社リクルートに入社。
若手からエグゼクティブまで幅広く
人材紹介事業の運営を推進してきた。
一方新卒学生の採用面接をはじめ、
数多くの人事をこなしてきた「人材オタク」。
2005年、人材紹介事業をおこなう
KIZUNAパートナーズ株式会社の
代表取締役社長に就任。
主としてエグゼクティブの人材紹介を手がけている。
ほぼ日の就職論特集の際に、
「面接試験の本当の対策」に登場いただいた。

藤野英人

1966年富山県生まれ。
早稲田大学卒業後、国内外の資産運用会社で
日本株のファンドマネージャーとして活躍。
2003年にレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。
代表取締役社長・最高運用責任者(CIO)として、
成長する日本株に投資する「ひふみ投信」を運用し、
高い成績を上げ続けている。
明治大学商学部の講師も長年務めている。
現在、日経電子版の「NIKKEI STYLE」にて
コラムを連載中。
ほぼ日には「どうして投資をするんだろう?」
「恋と投資の話」で登場いただいた。
著書として『投資家が「お金」よりも大切にしていること』、
『ヤンキーの虎』など多数。
最新の著作に『投資レジェンドが教えるヤバい会社』がある。