Drama
小林薫『俺はシブイか?!』対談。
おたがい若いときから知っているので、
あらためて会って話すのも妙なもんなんだけれど、
稽古を終えた夜中に、たのしくしゃべりました。
(ライブ版を少し編集してテキストにしたものです)

せっかくですから、
小林薫さんの舞台の案内を、ここに掲載させてください。

脚本/演出    岩松了
 出演 小林薫 樋口可南子
『悪戯』公演のお知らせ

◆東京 2000年5月19日(金)〜6月4日(日)
 シアターコクーン 
 全席指定   S席7000円
        A席5000円
   コクーンシート3500円

◆大阪     6月23日(金)〜6月25日(日)
 シアター・ドラマシティ

◆福岡     6月27日(火)・6月28日(水)
 メルクパルクホール福岡

・チケット取り扱い
 Bunkamuraチケットセンター 03-3477-9999
チケットぴあ 03-5237-9988
・チケットに関するお問い合わせ
 Bunkamuraチケットセンター 03-3477-9999
・公演に関するお問い合わせ
 PUG POINT 03-3470-7670
 

『悪戯』のパンフレットより。

【その1・「中継を文章に」のお願い。】

【その2・お好み焼き屋で、暮らしていた。】

【その3・パン屋をつくろうと思う。】

【その4・芝居をしたいなあ】

【その5・岩松了さんの演出について】

【その6・ドラマはどこにあるか】

【その7・競馬や安心など】

【その8・モンゴルに惹かれている。】

(※生中継ライブのごく一部をお送りしています)


糸井 シンプルになることが
かえって豊かだということ、ありますよね。
小林 ないことが豊かだと思うときは多い。
糸井 要らないんだと知るまでは、
必要な気がしていて、
その「見えない必要」に追われるんだよ。
海外にいる間には、週刊誌を読まない。
なかったら要らないということは、
もともと要らないんですよ。
ぼくに必要なのは、タバコだけです。
それももうすぐ辞めますけど。
・・・そうなると、だんだんと
スカスカのフカフカになると思うんですよ。
小林 え、ぼくは逆に、
スカスカにならないと思うんですけど。
糸井 ただの棒みたいになっちゃうと思います。
風が吹いたら飛んじゃうし、
それでいいと思うんですよ。
何十年かしか生きないんだから、
ちょうどいいじゃない。
小林 見えていないことのほうが豊かなこともあるし、
シンプルなことのほうが強かったりしますよね。
外国に行ってみると、
「これはすごい豊かだなあ」
と思うときが、よくあるでしょ?

モンゴルで丘の上に立ったときに、
動いているものが何もなかったんですよ。
そんな光景って、あんまりない。
360度のパノラマで、
動いているものが、ひとつも見つけられない。
糸井 詩だね、その風景が。
小林 色即是空の「空」っていうのは、
もしかしたらこういうことなのかもしれない、
と、ぼくは勝手に解釈しているんです。

「色即是空」は、
インドから日本に入ってきた言葉だけど、
日本では実際に「空」を実感することはない。
だからこれは、
抽象的な観念なんだろうと思っていたけど、
モンゴルにいた時には、その「空」が、
実在しているという感じが、すごいあったんです。
助けを呼ぼうにも誰も来ない・・・
「ここに我あり」だけなんです。
糸井 記憶として残る場所なんだ。
小林 モンゴルは、
めちゃくちゃ気持ちのいいところです。
遊牧騎馬民族と農耕民族って、全然違う。
中国で崖を登ろうというときに
パジェロを運転している現地のひとに、
登ってくれと言っても、登らない。
昔日本人が緞帳をつけて
テレビを飾っていたみたいに、
あそこではパジェロが家具になっていたから。
車が大事で登れないんです。
「これはどこかで見たことがある。
 この心根は日本でも見た。つまり農耕だ」
ぼくは、そう思ったの。

モンゴルのやつは、
パジェロ4台くらいで走っていると、
誰も「競争だ」なんて言っていないのに、
他のやつより早く着きたくて、
負けたくないっていって車を飛ばすんです。
それで一台がスタックしちゃう。
彼らは友情があるから集まって、
その1台を助けようとするんだけど・・・
まあ、余計時間がかかるんです(笑)。
糸井 競争したおかげで。
小林 そういうやつらなんですよ。
でも農耕とどっちが心熱いかっていうと・・・。

農耕では、地縁が出ますよね。
土地に対する信仰が強くなるんです。
お墓もつくらなきゃいけない。
モンゴルには、もともとお墓がないんですよ。
そこで生きてゆく術は「何も持たない」ことです。
最小限の荷物。
引っ越すときも、1時間くらいでゲルをたたむ。
あとに何も残さないのは、かっこいいです。

何も持っていなくて貧しいのですが、
逆に、友達には何でも分け与えるんですよ。
めしもいいものを食わせるし、
嫁さんまで与える。
その考え方は、いいなあ、と思います。
もちろん、ほんとに遊牧で暮らすことには、
もっと厳しさもあるのでしょうけど。

・・・でも世界帝国を築いた中でも、
ハンガリーからイスラムから全部というのは、
フビライ=ハンの時の元しかないんですよね。
糸井 その強さに対して
俺らはかっこいいなって思うのかなあ。
ぼくが赤城山で埋蔵金やってたときの気分は、
そういうことなんですよ。
地元の土建屋のひとと、
毎日そういうつきあいをしてたの。

(注)
カグチさん話などで最高に盛りあがった部分は、
小林さん&darlingの
声の調子なしでは伝わりきらないので、
今回のライブ中継文字バージョンでは
涙をのんで省略をいたしました。


(おわり)

小林薫さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林薫さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2000-05-23-TUE

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