岡村靖幸×糸井重里結婚への道 完結編

岡村

「かわいげ」についてはどう思いますか？
日々の生活の中で余裕がなくなり、
人はかわいげがなくなっていって
しまうんじゃないかなあと、思うんです。
そうすると相手の行動について
「しょうがない」なんて思えなくなりそうで。
たとえば忙しい時に仕事のことを口出しされたら‥‥

糸井

具体的に言われているんですか？

岡村

いえいえ（笑）
あの、かわいげのないことを言われ悲しくなって
しまうことが多かったんです。
でも、その人は相手が僕ではなかったら、
かわいげがあったのかもしれない。
僕がその人のかわいげのなさを、
引き出してしまったかもしれないと思ったんです。

糸井

なるほど。
でも、その状況って相手は岡村さんに
心を開いていますよね。

岡村

開いていますね。

糸井

親しくなるとかわいげを保つのは
難しいかもしれないです。
他人の方が気を遣うから、
かわいげは保たれるかもしれない。

岡村

余裕がない時にかわいげがある言動ができれば、
相手を許せると思うんです。
たまに会う人なら気にならないんですが、
毎日会う人はそこが大事なのかなって。

糸井

俺のこと、
理解してるはずじゃなかったのかって？（笑）

岡村

言葉尻がかわいげないだけで、
精神的に辛そうだなって。

糸井

まあ、でもきっと、言っている側は
ほとんど酔っぱらいだから。

岡村

酔っぱらい？

糸井

僕は最近、世の中は酔っぱらいばっかりだって
思うようにしているんです。
大人げない発言をしたり、
急に態度が変わることがあっても、
全員酔っ払ってるからしょうがない。
夫婦だって酔っ払い状態のときに、
突然機嫌が変わっちゃったりするんです。

岡村

いい考えですね、
酔っぱらい状態。

糸井

親子でもあると思います。
親が子どもに大人げない怒り方をしているのは、
あれはもう、親が酔っぱらっているんです。

岡村

なるほど。

糸井

そう思うと、
失礼なことを言われても
飲みこめるようになりましたね。
で、夫婦だとだんだん相手のことがわかってきて、
「ここは触れちゃダメなんだな」って
暗黙のルールができていくんです。

たまたまですけど、わが家はお互いの仕事を
褒めもしないし、けなしもしないですね。
結婚してから、ずうっと。

岡村

へえー。
仕事の話をしないことで
安定しているところがあるんでしょうか。

糸井

大いにありますね。

岡村

褒めもしないんですか？

糸井

ほんとうはもっと、褒められたい（笑）。
これまで間違って1,2度褒められた程度かな。
それはものすごくうれしかったですね。

岡村

糸井さんも奥さんのことを褒めませんか？

糸井

僕もほとんど褒めないですね。
ひとつだけ、うちの奥さんがやった仕事で
惚れ惚れしたのがあって、
それはヤクザ映画で自分の逃げ道を作るのに
ダイナマイトを投げながら、
走っていくシーンでした。
運動神経を感じて、
ものすごくカッコよかったですね。

岡村

へえー、いい話ですね。

糸井

「あれは好きだ」って本人に伝えたら、
ちょっと、ニマッとしてましたね。
「もし俺があの役を頼まれても、
あんなにカッコよくできない」って
言ったら「頼まれないよ」って言われた。
そりゃそうだ（笑）。

岡村

（笑）。

糸井

そんな風に、
「うれしい」という気持ちの手前の
「悪い気はしない」あたりのことを見つけて
褒めることは、お互いにします。
ただ、仕事の話をしないことで、
安定していることはたくさんあると思います。

岡村

なるほど。

糸井

岡村さんは言われたくないことはあるの？

岡村

ギリギリでいいので、
下品で品はないとは思われたくないです。
人としても、自分の仕事としても、
死守したいイメージなんですけど。
自信はないです（笑）。

糸井

僕は岡村さんに対して下品とは思わないけど、
もしかしたら違う見え方も
あるかもしれませんし。
そういうのも酔っぱらい理論だと飲み込めますよ。
まあ、でも根本的に価値観が一致しないからこそ、
仲が悪くなるんですよね。

岡村

そうですね。

糸井

サッと離婚する夫婦を見ると
「ああ、それは仲がいいんだよ」って思います。
別れようってところで
価値観が一致する仲の良さがあるから、
簡単に離婚ができるんだって。

岡村

ほお。

糸井

離婚がうまくできない人たちこそ、
価値観が合ってないのだから
別れるべきなんじゃないかなあ。
サッと別れた夫婦なら、
またくっついてもいいと思いますけどね。

岡村

ああー！

糸井

俺、いますごい、ためになること言った？

岡村

名言、いただきました。