ほぼ日刊イトイ新聞 すてきなふだん字。 葛西薫さんと「字」のことを話しました。

005)共通の友人、仲畑くんについて。
葛西 あれはいいコピーですね。
新潮文庫の「想像力と数百円」。

新潮社

糸井 うん。全体を文句言われないように
一本、骨組みを立てておいて、
「あと自由にすればいいじゃん、
 副ちゃん(副田高行さんのこと)」
って言って。
とにかく「想像力と数百円」
さえ置いておけば
絶対だいじょうぶだよって。
そのドラマのおかげで、
ぼくは、その力を本気で腰据えて、
発揮できたんでしょうね。

葛西 よく覚えてますよ。
あのとき、横で、
「どこまで行くんだろう?!」
と思ってました。
糸井 楽しかったよ。
葛西 楽しかったですよね。
でね、その頃、彼(副田さん)が、
ある方角を定めたんですよね。
これまでの広告デザインの常識を破るデザインに。
その方角へ突っ走ったんですよ。
ぼくは、(同じデザイナーとして)
同じ方角に行くわけにいかないから
逆方向に走ろうと思って。
ぼくは、そのころ
「樹氷」をやってたり、
ソニーの仕事とかやっていました。
糸井 「樹氷」といえば、
バロン吉元の描いた
風吹ジュンですよね。

「樹氷」

葛西 『昭和柔侠伝』の
「茜ちゃん」ですね。
糸井 あのコピーは仲畑(貴志)くんなんだけれど、
バロン吉元って
仲畑くんの文脈にないはずなんです。
ぼくと雑談したことが
ずいぶん役に立ってると思うんだなあ。
よけいな無駄話してると、
それを、すぐに、いかせるやつなんです。
ほかにもたとえば、
小沢昭一が性豪の人と対談してて、
それはすごいしょうもない話で、
ちんこ自慢なんですよ。
性豪の人が
「このくらいですよ」
って言うと、小沢昭一が
「ほお!」ってあんまり感心するんで
性豪の人はいい気になって
「それは、‥‥細いところが、ですよ」
って言うの。
葛西 はははは!
糸井 そうすると、
小沢昭一がまた、
「細いところが、お太いんですね」
って言うんです。
‥‥という話を仲畑くんに言ったら、
ものすごい喜んで、
新聞の活字が大きくなったときのコピーに
「小さいところが大きいんですね」って。
葛西 ああー、ありますねぇ!
仲畑さんの奥には糸井さんがいたんだ。
あの頃ね、仲畑さんと同じチームだったんです。
彼が、どこか外の世界行ってはね、
何か運んで帰ってくるんですよ。
あの頃、秋山道男さんだとか、
いろんな人と付き合ってましたよね。
糸井 しょうもない時間を過ごしては‥‥
葛西 おみやげを持って帰ってくるんです。
そういう意味でのおみやげを。
糸井 ぼくら、一人でやってるから
このおもしろいことをここに使うという、
アイデアはなかなか生かせないんですよ。
でも仲畑くんは仕事をいっぱい
持っていたから。
葛西 フル活用ですね。
糸井 あいつ、いいなぁ!
あの人はやっぱり、土建屋の大将で
「その機械、買うたるわぁ」
っていうやつですよね。
ぼくらは、「田んぼがないから
この機械使えないんだよね」
ってところがあって、
結局は無駄に流れていく時間の中で、
もう1回、再生産させるんですよ。
で、いまの「ほぼ日」に至るんですよ。
葛西 なるほどね。
糸井 ぼくは、ぼくの人生としてOKなんですよ。
葛西さんは、仲畑くんのコピーを
定着させたり
社会性を帯びさせたりすることで、
番頭さんみたいに
うまいこと利用してたはずですよ。
葛西 ああ、なるほど。
糸井 葛西がやってくれんねん、
オレがぐちゃぐちゃ言うても、みたいな。
葛西 そうそう、仲畑さんのコピーをデザインするとき、
仲畑さんはいっさい口を出さなかったですね。
おもいっきり、任されっぱなしでした。
糸井 だって、あの人さ、
漢字まちがってるコピーを
そのまま原稿にしてますよね。
へんとつくりを逆に書いても、
写植が直すからいいって言うんです。
葛西 ははは。確かにあまり漢字知らなかったかも。
いまだから言えるけど。
糸井 言葉は知ってるんですよね。
言葉は知ってて、漢字知らない。
葛西 覚えるスピードが速いんですよ。
そういう感じがありましたね。
おととい、まだ、こんなこと言ってたのに、
今日、もう、すごいこと言ってる。
すごいですね。
糸井 ぼく、夜中に仲畑くんとこ行って、
ほとんど哲学みたいな話を
素人なりにやりとりしてた時間が長いんです。
葛西 あの頃、仲畑さんの言葉さえ置けば、もう
広告になっちゃうから、
何もしなくていいんですよね。
下手なデザインなんかしないで
その言葉が生きるように
文字を置くだけでよくて。
仲畑さんは、
「困ったら文字大きく置いとけばいいんだ」
って言うんですよ。
まったくその通りで、
それがデザインになっちゃうんですよね。


(クリックすると拡大します。)


(クリックすると拡大します。)

糸井 そこは、やっぱり
そうなるようにコピーを書くということが
ぼくらの義務だったですね。
ノングラフィックに近い
タイポだけで持つコピー書けないと
かっこ悪いと思ってたんで。
葛西 そうですよ。

糸井 いずれは、まぁ、
コピーなんてなくてもいいというところに
どんどん行くんですけどね。

2007-12-20-THU

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