原作の漫画と、この映画のちがいについて、
もうすこしお話したいですね。

うん。

漫画の世界が実写になって
ぼくなんかは単純にわくわくしたんですけど、
小木曽さんはいかがでした？
漫画とのちがいを感じました？

わくわくしましたよお、ぼくも。
で、漫画とちがうと思ったのは、
あのね、「現実感」みたいなところ。

ああー。
映画のほうが、現実的な感じ。

そうですね。
たとえば、漫画の三平くんは
学校に行ってるの？　っていうのが（笑）。

はいはい、そうでした。
とにかく毎週釣りをしてましたから。
漫画の中で学校に行ってる様子が
たしか描かれてなかったので、
みんなで言ってましたよね。
「三平は学校どうしてるんだ」みたいな（笑）。

そうそう（笑）。
「釣りだけしてていいなあ」

夢のような世界というか、
やっぱり、ファンタジーなのかもしれませんね。
「この漫画の中は釣りだけですよ」という。

そうですね。
現実感がちょっと薄いから
読んでいて、しあわせなんだなぁ。

若い証券マンだったころの小木曽さんは、
喫茶店で少年マガジンを読んでは
ファンタジーの世界をさまよっていたわけですね。

そうそうそう。
仕事をサボってね（笑）。

で、一方この映画はというと、
「三平くんは夏休み」という設定でした。

だから、ふだんは学校に行ってます
っていうことだよね。
それをはっきり言ってた。

さらに現実の象徴のような役割として、
漫画にはない、三平くんのお姉さんが登場します。

東京に住んでいる愛子さん。

ものすごく仕事をがんばってるお姉さん。

このふたりのやりとりには、
ちょっと考えさせらましたよ。

はい。
監督は漫画を実写にするにあたって、
そういう現代との接点をまぜたんですね。
それは、ぼくが言うのも生意気ですが、
とても成功していたと思います。

そうですね、
ジーンとくるところもありました‥‥。

‥‥あの、小木曽さん。
小木曽さんにとって、釣りとは何ですか？

ん？　
難しいことを訊くねぇ（笑）。

ほら、この映画の中でも
そういうことを問いかけるシーンが
あったじゃないですか。

ああ、ありました。

小木曽さんにとって、釣りとは？

なんですかね、やっぱり‥‥
息抜きなんでしょうね。

息抜き。

糸を垂らして過ごす、あの時間‥‥。

はい。

ほんとに、無心になれるっていうか。
時間がどんどん過ぎちゃう。

そうですか‥‥。
最近は、どんな釣りを？

最近はね、イカ。

イカ。

イカ。

イカかー。

おもしろいよお〜。
実はこの週末も行くんですけどね。

この週末も？　いいですねえ。

ヤリイカを釣ってやろうと思って。

うらやましいなぁ。

この前はね、スミイカをやったの。
房総半島のほうで、スミイカをね。

大きかったですか。

あのー、あれですよ。
600グラムはあったかな？
こんな大きさのスミイカ。

へええ〜。

それ、ぼく、釣ったの。

いいなあー。

だから最近はイカなの。
おいしいしね。

奥さんが料理してくれる。

いやいやいや、自分でさばくんですよ！

あ、自分で。
奥さんは釣りの趣味については？

女房なんかに言ってもね、
まったく理解してくれないですよ？

ははははは。

彼女にしてみりゃ
おもしろくないんですよ。

ひとりでどんどん釣りに行っちゃうから（笑）。

まあ、行かせてもらえるから
あまり文句は言えないんですけどね‥‥（笑）。

そうですか。
‥‥あれですね、
またこうして釣りの話題だけになってしまう前に、
映画の話をしめくくっておきたいですね。

そりゃそうだ、
映画のコーナーですからね。

はい。
それでは最後に、
この映画のオススメ度のようなことを
小木曽さんから‥‥

あっ。

ど、どうしました？

いやぁ、釣りの話をしてると、これ、
時間があっという間に経ってしまう。

え？
まあ、そうですが‥‥。
はっ、もしかして！

うん（スタッと立ち上がる）、ベルサッサ。

はじめて目の当たりにしました。

もうしわけない、７時が定時なんで。

は、はい。

あとね、イカ釣りの道具をね、
ちょっと買いにいかないと。
店が閉まっちゃうんで。

はいはい、それはもう。

すみませんね、
あとはよろしくお願いしますね。

わ、わかりました。

じゃ、おさきにー。

お疲れさまでしたー。

‥‥‥‥‥‥。
ひゃー、これはえらいことだ。
こ、こういう場合は
どうしたらいいんだろう？
「ふたり感激団」がとうとう最後には、
「ひとり感激団」になってしまいました。
‥‥ＩＣレコーダーが回ってるので
なんとなくしゃべってますけど‥‥
これ、ラジオのデスクジョッキーのようです。
‥‥むなしい。

いや、でも、むなしいけれども、
ひとりぼっちの感激団、
それならそれで
最後にがんばらないとと思います！

えー、みなさん！
映画『釣りキチ三平』は、
ただいま公開中です！
くわしくは公式サイトをご覧ください！

で、あの、映画のオススメ度については、
そうですね、まず、
「悪いことはひとつもない」
とぼくは思いました。
難しい顔をして「映画とは‥‥」という気分で
観る作品ではないのです、たぶん。
監督もきっと、そこで勝負はしていなくて。
自然の映像はやっぱりきれいだし、
出てくる人々はみんな元気。
なので、あたたかくなってきたこの季節に
家族や友だちと観にいくのは
とてもしあわせなことなのではないかと。
強くではなく、しずかにオススメしたい感じです。

一方、リアルタイムで
原作漫画を読んでいたかたには、
けっこう強めにオススメしたいかもしれません。
三平くんが実写になっている様子は、
やっぱりそれだけで、
グッとくるものがあるのではないかと。
同じく原作漫画を読んでいた人と
いっしょに観にいくと、もっといいですよ。
映画を観たあとで、
今回の感激団のように
釣りの話や三平くんの話をするのは
ほんとうにたのしかったので。

‥‥と、いうところでしょうか‥‥？
だ、だ、大丈夫かな‥‥。
そ、それでは、ほぼ日感激団、
映画「釣りキチ三平」編、
このあたりで終了とさせていただきます。
ありがとうございましたー。

‥‥さ、さみしい。

（映画『釣りキチ三平』編はこれでおしまい。
　次回の感激団にもご期待くださいね）

（C）2009「釣りキチ三平」製作委員会