第3回 してやられたり!
シェフ
ベイちゃん、2回見た気分を
もうちょっと教えてほしいな。
どのタイミングで2回見たの?
ベイ
糸井さんが面白いというので
公開時、一度見て。
今回、DVDでもう一度見ました。
話を知ってる身で見ると、
2回目って面白いですよ。
最初から「あ! そうか! あ〜っ!」
の連続なんです。
一同
ああ〜。
山下
そうか。そうだろうねえ。
もぎ
やっぱそうか(笑)。
ベイ
1度目にちょっと
「なんだろう」と思ってしまった、
最初の30分もすごく面白いんです。
山下
2回目は神の目線で見れるわけだ。
全知だものね。
ああ、そういう見方も
おもしろいだろうなあ。
シェフ
でもさ、ほぼ、神の目線だけど、
1回目全部見終わったあと2回見たときに、
ほら、「謎」がさ。
一同
うんうん。
シェフ
だから、もう1回見る視点も
完全に神ではないという
しつこいくらいの仕掛けがあったよね。
あれは、2回見たときに面白がってもらえる
工夫というふうに思えなくはないよね。
なんこ
確かに。
山下
完全攻略できないような仕掛けを
置いてるのかも(笑)。
シェフ
真相が究明されないんですよ、これ。
ヤエ
されないですね。
シェフ
それ言っていいのかな?
山下
それは大丈夫だと思いますよ。
もぎ
言いた〜い!
ベイ
そもそも「キサラギ」って、
話は進んでいくんですけど、
何も事件は起きてはいないんですよね。
あそこで話してるだけで。
山下
回想と推理の会話劇。
すごい台詞の量です。
ヤエ
懐かしい映画で言えば、
黒澤明の『羅生門』がそれに近くて、
みんなそれぞれが同じ事件について語るけれども、
みんなそれぞれが違うことを言うから、
真相はこうであろうかもしれないけど、
そうじゃないかもしれないみたいな。
山下
『藪の中』ですね、原則は。
ヤエ
『藪の中』ですね、芥川龍之介の。
シェフ
教養の深いこと言ってますね。
ヤエ
いえ、年取ってるだけですー(笑)。
山下
「藪の中」はそれが語源なんですよ、確か。
ヤエ
あ、そうです、そうです、
「藪の中に事件が迷宮入り」みたいなときの
「薮の中」、
語源は芥川の『薮の中』です。
一同
へーえ!
もぎ
このあいだ直木賞をとった
吉原の女の人の小説、
松井今朝子さんの‥‥
シェフ
『吉原御免状』じゃなくて‥‥。
もぎ
それは劇団☆新感線、
ではなくて、『吉原手引草』。
それも主人公は語らない小説なのね。
「キサラギ」も如月さんは語らず、
周りの人の会話で
何があったか浮かび上がらせるっていう。
シェフ
ああ、そういう手法ありますよね。
そっか。
もぎ
その中でもすごくよくできている、
っていう感じでした。
山下
みっちゃんはどんな感想?
すこししゃべっていいよ。
やまかわ
あのう、主人公の女の子は、
‥‥そのう。
山下
主人公というか、
みんなが語る「如月ミキ」のことですね。
その女の子は?
やまかわ
あのう、‥‥、
本当におっちょこちょいですよね!
一同
うわー!
山下
そうだよね、それはある意味核心かも!
でもそれ以上は言えない!
やまかわ
すごくビックリでした、
本当に(笑)。
ベイ
ああ、確かに(笑)。
山下
情の部分で言うと、
そのおっちょこちょいな
見たことのないD級アイドルに対して、
ちょっと情が移りましたね、僕は。
シェフ
山下さんは
「もののあはれ」センサーが
敏感ですよねえ。
山下
いや、いい子なんだろうなあと思って。
ヤエ
そうかもしれませんね。
シェフ
僕はでも一番感情移入したのは小栗さんですよ。
あ、ルックスじゃなくてね!
一同
わかっとるわい。
もぎ
で、シェフはなぜ
小栗さんに感情移入したの?
シェフ
ややこしい話なんだけど、
見ているときじゃなくて、
見終わったあとに、
「ああーっ!」って思って。
最後のエンディングロールで、
もうビックリさせられたじゃないですか。
もぎ
うん、した!
なんこ
うん、しましたね!
ヤエ
はいはい、はい!
シェフ
ちょっと説明しましょう。
エンディングロールで
ある事実がわかるんです。
これ以上は言えないんだけど、
エンディングロールだからって
気を抜かないように! ってことですね。
で、そうすると前に見たシーンに
「こういう意味があったんだ!」
って、気づくんです。終演後に。
とくに小栗さんの役「家元」に!
もぎ
してやられたり! 監督に!
 
(つづきます)
 
※この記事の最後に、
 「エンディングロールである事実がわかる」
 とありますが、これは感激団の思い違いでした。
 「ある事実」がわかるのは、
 エンディングロールのすこし前、
 登場人物たちがプラネタリウムの星空を見ながら
 それぞれに自分のことを思うシーンでのことでした。
 そこで「うわあ、家元ってそんな境遇だったんだ!」
 とたいへんビックリしたのです。
 読者から「それ、エンディングロールではないのでは?」
 というご指摘をいただき、確認しまして、
 ぼくらの思い違いがはっきりした次第。
 ここはあえて、本文を書き直すのではなく、
 ぼくらのマヌケな思い違いはそのままに、
 ここで修正させていただくことにいたしました。
 まことに、申し訳ありませんでした。
 (2008年7月16日:記)
2008-03-19-WED
 
(C)2007「キサラギ」フィルムパートナーズ 
全国公開中/DVD発売中(発売・販売元:キングレコード株式会社)

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