彼方からの手紙
 


プロロローグ

—— 本日は、スチャダラパーの1993年のアルバム、
『WILD FANCY ALLIANCE』について、
とっくりと語っていただこうと思います。
糸井 よろしくお願いします!
ボーズ よろしくお願いしますー。
糸井 これはもう、ぼくの大好きなアルバムですからね。
ボーズ ありがとうございます。
糸井 もともとは、なんだっけ、
手に入りにくかった初期の何枚かが、
音がよくなって、出ると。
ボーズ そうなんです。
ソニーにいたときのやつが、
なんか、まとめてBOXとして出るっていう。
—— 具体的には、『タワーリングナンセンス』
『WILD FANCY ALLIANCE』『スチャダラ外伝』
『ポテンヒッツ』『サイクルヒッツ』の
5枚がいろんな特典付きで発売されます。
糸井 おおーー。
—— で、とりわけ、糸井さんの好きな
『WILD FANCY ALLIANCE』について
ボーズさんと語ってもらおうと。
ボーズ ありがとうございます。
糸井 これね‥‥ほんとに好き。
ボーズ (笑)
糸井 あのね、あのころ、
カーステレオの新商品で、
CDオートチェンジャーっていうものが
出たんだよ。なにかっていうと、
CDを10枚、いっぺんにセットして、
車の中で自由に聴けるっていうもので。
ボーズ はいはい。
糸井 なんか、メーカーの人が、
「こういうのが出るんですけど、
 おつけになりますか?」
みたいなことを言われたから
「つけます!」って即答してつけてもらってね。
そのときの10枚の中に入ってたんですよ、
『WILD FANCY ALLIANCE』が。
ボーズ へぇー、そうなんですね。
たしかに、まさにそういう時期のアルバムだし。
その10枚って、入れっぱなしになるんですよね。
糸井 なります。ずっと聴くんだ。
これと、あとなんだったかなぁ‥‥。
『9.5カラット』とかだったかな、(井上)陽水の。
ボーズ おおー。
糸井 それと、ジミヘンのベストみたいなやつ。
あと、レッド・ツェッペリンも入ってた気がするなぁ。
ボーズ そんな名盤たちのなかに、あれが。
糸井 うん。そういう位置づけ。
ボーズ あ、すごい。
そこに並ぶアルバムじゃないと思うけど‥‥。
糸井 いや、聴いてましたよ。
♪にゃおわーわん‥‥
♪にゃおわーわん‥‥
—— ‥‥それは?
糸井 1曲目だよ。
♪にゃおわーわん‥‥
ボーズ (笑)
—— しょ、少々お待ちください。
<1曲目『プロロローグ』を再生>
糸井 うん♪ 
ボーズ 今日、ぼくも何年かぶりで、
車で聴きながら来たんですけど、
ぜんぜん忘れてるとことかあって、
ちょっとびっくりしましたね。
糸井 え、そうなんだ。
ボーズ 細かいニュアンスとか、テンションとか。
ライブでやる曲も何曲かあるんですけど、
まったくやらない曲もあるんですよ。
ちょっとバカすぎる曲とか。
糸井 ははははは。
ボーズ バカっていうか、子どもっぽい曲は。
で、そういう曲を久々に聴いて、
ちょっと笑っちゃいましたね、
そのバカバカしさに。
糸井 ‥‥いや、そういうコメントはね、
オレが一般聴衆だとするとね、
いや、このアルバムに関しては、
オレは完全に一般聴衆だから言うけどね、
いまのボーズくんのコメントは、
「スターの発言」でしたよ。
ボーズ なんで(笑)。
糸井 つまり、自分が大好きで、
何度も何度も聴いた曲を作者本人が
「バカバカしいね」って言うわけだからさ。
ボーズ いやいやいや(笑)。
ほんとうに、純粋に、
「バカなこと言ってるな、この3人組」
みたいな気持ちになったんですよ。
糸井 たしかにバカなこと言ってるけど、
練りに練ったバカですよね。
ボーズ ああー、そうですね。
糸井 その練り具合が、やっぱりすごいですよ。
じっくり練った形跡もあり、若さもあり、
ある種の勘みたいなものもあり。
ツバは飛ばすけど、落ち着いてる、みたいな。
ボーズ ああ、そうですね。
だから、なんか、鼻息は荒いですよね。
糸井 うんうん(笑)。
ボーズ 気持ちは低いんだけど、
すごい鼻息は荒く、静かに考えてる、
みたいな感じなので、
なんか、トゲトゲしている部分があったり、
でも、とにかく、おもしろいことを考えたい!
みたいな、必死な気持ちが、すごい詰まってて。
糸井 うんうん。
ボーズ なんか、いまだったら、もう少しこう、
ゆったりとしたつくりになるんじゃないか、
1曲に内容、詰めすぎなんじゃないか、
とも思うんですけど。
糸井 詰まってるよねー。
‥‥あ、ここ、ここ、さっきの。
♪にゃおわーわん‥‥
♪にゃおわーわん‥‥。
—— え? ‥‥あああ。
糸井 これ、なんて言ってるの?
ボーズ 「waste your time」ですね。
糸井 ♪waste your timeー
♪waste your timeー。
ボーズ まさに、ヒマを潰す、みたいな。
糸井 はぁ、はぁ、なるほどね。
ボーズ 言葉的には、ちょっと
ネガティブな感じなんですけど。
この呪文っぽい感じがいいなあと思って
つかったんですよ。
糸井 ♪waste your timeー
♪waste your timeー
そう聴くと、このアルバムの
オープニングにぴったりだね。
でも、当時は、なに言ってるかとか
ぜんぜん考えなかったわ。
ボーズ でも、そのくらいでいいなと思うんです。
あんまりわかんなくていいや、
っていうぐらいのチョイスです。
日本語でしっかり言っちゃうよりは、
「なんて言ってるんだろう?」って
気になる人が調べるくらいの。
中学生のときとか調べるじゃないですか、
好きな曲に出てくる英語とかを。
その、ぎりぎりの子が気づくといいな
っていうくらいのことを、いつも考えてますね。
糸井 ああーー、なるほどね。
♪waste your timeー
♪waste your timeー。
   
(つづきます)

 

2010-08-13-FRI



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