わたしの言葉で書く、しゃべる。 秀島史香+糸井重里 わたしの言葉で書く、しゃべる。 秀島史香+糸井重里
「メモ魔です」と語る、ラジオDJの秀島史香さん。
プライベートでも、ラジオの生放送中でも、
思いついたことがあれば手帳やメモに
すぐに書き込んで頭に留めておくんだそう。
9月に銀座ロフトで開催したイベント
『書く!展』のトークイベントでは、
飾らない、本音の言葉のやりとりで
糸井重里とおおいに盛り上がりました。
「書く」ことから「しゃべる」ことへ、
テンポよく話題が転がるようすをおたのしみに。
全6回、銀座ロフトからオンエア!
ヤマザキマリさんのプロフィール
第1回
書いて頭を整理する
糸井
なにせね、ぼくらふたりとも
回す役をさせられるタイプなんで、
ふたりで互いに回していれば
何とかなるんじゃないかと(笑)。
秀島
トスの上げっこみたいな
トークショーですね。
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糸井
そうですよね。
どっちもスパイクしなかったりして。
秀島
スパイクをするのはお客様、
ということもあるかもしれませんよ?
糸井さん、先ほどご挨拶のときに
「はじめまして」と申し上げましたが、
じつは私、勝手にお見かけしているんですよ。
今から10年ぐらい前に、ここ銀座で。
糸井
銀座で?
秀島
歌舞伎座の前の横断歩道で、
すっと横に立たれた男性がいたんです。
カッコいいおじさんがいるなと思って
ふと見たら、糸井さんが
おひとりでいらしたんです。
糸井
映画か歌舞伎でも観に行ったのかな。
うーん、何の用だったんだろう。
秀島
「お声をかけたいなあ」と思いながら、
その勇気がなかったんです。
そのときのことを日記に書いていて、
そういったメモから、
今日のこの「ほぼ日手帳」のイベントに
つながってしまうというめぐり合わせ。
写真
糸井
あっ、急に手帳の話になった。
お見事ですね、その導入!
秀島
ありがとうございます。
ラジオ番組をやっていますので(笑)。
糸井
今日は、秀島さんに任せとけば安心ですね。
秀島
私が初めてこのコ(秀島さんのほぼ日手帳)と
出会ったのが、10年ぐらい前でしょうかね。
渋谷のセンター街にかつて、
J-WAVEのHMVスタジオというのがありまして。
道を隔てたところに渋谷ロフトがあったんです。
スタンバイの時間に買い物でも行こっかな、
というときに出会っちゃったわけですよ。
糸井
最初はどんな手帳を選んだんですか。
秀島
その頃はオリジナルのタイプでした。
ペンを差したら閉まる、
このサイズ感がすごくちょうどよくって。
当時「あらあら!」と思って手に取ってから、
今までおつきあいが続いているんですけども。
糸井
ほおー。今はweeksですね。
秀島
今はweeksを使うようになりましたね。
ここに私、書きまくっているんです。
紙の質が好きなんですよね。
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糸井
いくら手帳のイベントだからといって、
ずいぶん宣伝しやすいほうに
誘導してくださいますねえ(笑)。
秀島
チャリンチャリンって
何かが降ってくるんじゃないかと(笑)。
糸井
習い性になっているんでしょうね。
いやあ、いい紙なんですよ。
トモエリバーという紙です。
秀島
トモエリバーって、
なぜそんな名前なんでしょうか。
糸井
巴川製紙所という会社が作っているんです。
静岡に巴川という川があるから、トモエリバー。
ほぼ日手帳を作ってきたやりとりの中でも、
この会社との間には、いろんなドラマがあるんです。
秀島
『下町ロケット』や『陸王』みたいな
やりとりがあったんでしょうね。
糸井
ぼくらが足袋を作っている
会社みたいなもんですね。
つまりぼくは役所広司さんです。
秀島
糸井さんが役所広司さん!
糸井
役所さんの演じていた社長って、
けっこう感情的に動くんですよね。
秀島
糸井さんでも「アーッ!」って我を忘れて、
エモーショナルになることはあるんですか?
糸井
ぼくは、ひっきりなしにエモーショナルです。
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秀島
エモですか!
糸井
エモやんですよ。
秀島
エモやん!
糸井
我慢もよくしているんですけどね。
返す刀のようですが、
秀島さんは怒らないんですか?
秀島
‥‥怒ります。
糸井
怒りますか。
秀島
うーん‥‥、怒ってしまいますね。
人間、生きていれば、
嫌なことだって日々いろいろあるので。
そのときには「このこのーっ!」と
手帳に書いていまして。
糸井
激おこぷんぷん丸とか書いてあるの?
秀島
表現は若干変わりますけどね(笑)。
「今日、あの人にあんなことを言われたけれど、
大人だから言い返さなかった。グッジョブじぶん!」
みたいなことが手帳の中に書かれています。
ですから、今日のトークショーのために、
人に見られてもいいページと、
絶対に見られてはいけないページとで分けて、
ほぼ日手帳にテープで封をしてきました。
この封印が解けた瞬間に、
私は仕事を続けられなくなっちゃう‥‥。
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糸井
秀島さん、手帳がすごい厚みになってます。
秀島
つねに何かを書くことで、
気持ちの整理をしているんです。
人間の脳みそには限りがありますよね。
嫌なことは、じぶんの中から
いったんこの手帳に全部出しちゃって、
外付けハードディスクみたいに使っています。
トモエリバーが破れるぐらいの勢いです。
糸井
そういう使い方の発表をされる方と
はじめて会いました。
秀島
あっ、そうですか?
デスノートでもなければ閻魔帳でもないし、
なんと呼んだらいいのかわかりませんが。
糸井
ゲスノートですね。
秀島
あははは、ゲスノート!
呼び方が決まりましたね。
私は聖母マリアでもないから
怒るときには怒りますし、
仏の顔も三度じゃきかずに、
二度目でブチってなるときもあります。
怒れるときにバーッと書いておくと、
手帳に書いたことでいったん
「ゴミ捨て場に置いたもん。もう知ーらない」
みたいになるから楽になれるんですよね。
もうすっかり、儀式みたいになっています。
糸井
じぶんの代わりに、
手帳が汚れまくっていくんだ。
秀島
あっ、あのー、糸井さん‥‥。
誤解のないように言いますけれど、
私、悪いことだけを書くんじゃないですよ?
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(つづきます)
2018-10-22-MON