モノマネができちゃう理由
担当・カワノリナコ

第5回 質問なんか、なんでもいい
- 糸井
-
で、清水さんの文章は文章で面白いんですよ。
言っては悪いですけど、
文章の修業をしたつもりは全然ないわけだから。
「修業したつもりのない人がこんな文章を書けることに、
もっとおののいてください」って社内で言ったことありますよ。
- 清水
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わあ、うれしい。頑張ろう。

- 糸井
-
うちで子どものこととか書いてる時代があったじゃないですか。
あのときに、いつもいいなあと思ってて。
ご本人は、文章は何だと思ってんの?
- 清水
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ブログなんかはやっぱり、1日、寝る前に、
こういうふうだったって書くとスッキリして寝られるので、
トイレみたいな感じですかね。排泄(笑)。
- 糸井
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ほう。でも、何も思わないで生きてたら、
書く段になって書けないじゃないですか。
例えばアシスタントの子が気が利くなあって思ったから、
そのことを書けるわけじゃない?
- 清水
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うん。
- 糸井
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思ってる分量は多いよね。
- 清水
-
きっと多いと思う。
高校のときに面白ノートというのがあって、
それに真面目なエッセイ欄があって、
「今回も書きましたけど、どう? 読む?」って回して、
その人が笑ってると、もうすごい幸せみたいな。
- 糸井
-
話聞いてると、ちょっと似てるんですよね。
生い立ちというか成り立ちが、さくらももこさんに。
あいつがこうした、おかしいことしてるなあって見てて(笑)。
頭とんがらせたりなんかしながら描いて。
今の清水さんの話も、周りの人が面白がるみたいなのが原点。

- 清水
-
そうですね、うん。
- 糸井
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そうそう。
芦田愛菜ちゃんと話をしてるときに、ふっと思ったんだけど、
インタビューの質問なんか何でもよくてさ。
「好きな花は何ですか」って聞かれたことある?
- 清水
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ない(笑)。そういえばないね。
- 糸井
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「ぼくインタビューなんかできないですよ。好きな花とか、
好きな色は何ですかとかしかできないから」って言うけど、
聞いてみたら面白いんだ、それは。
「好きな色は何ですか」だけでもさ、何とでもなるんだよ。
- 清水
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そうか、きっかけだけで。
- 糸井
-
こっちの腹次第だよ。
- 清水
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ほう。いい対談になりましたね(笑)。
- 糸井
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(笑)。いや、その好きな花でお茶を濁そうとして、
通り一遍に聞かれると答えたくないですよね。
でも、好きな花は何ですかっていうのを、
おまえにだったら言ってみたいって思わせればいいわけだから。
- 清水
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この話を録音して何十人の人が書くわけじゃないですか。
変わらないって私は思うんだけど、変わるんですってね。
- 糸井
-
変わる、変わる。
- 清水
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それも不思議ね。
「好きな色は何ですか」だけでも変わるっていうのがね。
編集のし方っていうこと?
- 糸井
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うん。台詞をそんなに変えてるわけではない。
だから、そのまんまのやつがバーンと飛び込んでくるのを、
どうしましょうかねっていうふうにするわけで。
若手のときは、余計なこと言っちゃった
みたいなところを喜んで拾うやつもいるんだよ。
- 清水
-
ああ、私に毒舌頼むみたいなことかな。
- 糸井
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そうそう。取材されたことがあるから、わかると思うけど、
これ嫌だなっていうのあるでしょ、やっぱり。
自分がえばってて、ぞんざいな人に見えるときがあるんですよ。
そんなつもりないのに。
- 清水
-
ご意見番とかね(笑)。
- 糸井
-
それってやっぱり腕で、実は技術が要るわけですよね。
矢野顕子がミスタッチOKでコンサートするかもしれないけど、
ミスタッチが売り物になったらみっともないじゃないですか。
同じようなことがこういう仕事では起こりますね。
いや、俺、ずいぶんちゃんとしゃべって。
- ――
-
面白いです。
- 糸井
-
インタビューされて‥‥
- 清水
-
そんなことないよ(笑)。
- 糸井
-
もっとなんか、ちょっとほっとくから自分語りをしてごらん。「私はね」って(笑)。

- 糸井
-
別にいい話で終わらせるっていうテーマではないんだけど、
清水さんも、いい気にならないモードを保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか(笑)。
- 清水
-
いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
- 糸井
-
役割としてさ、多少偉ぶってくれないと困るんですよねっ
て場面に呼ばれることはないですか。
それを経験すると、そういう人にどんどんなっていっちゃう。
- 清水
-
こんな面倒くさいことあるかねっていう思いになりますよね。
糸井さんも、そう、やっぱり?
- 糸井
-
うん。だって俺、大体どこ行っても今、年上になってるしさ。
自分は多分‥‥いい気になってないと思うんです。
なんないようにしようとしてるからだと思ったんですよ。
で、清水さんもなってないのは、理由の一つはやっぱり、
失われるものが大き過ぎるからだよね。
- 清水
-
ああ、そうかもね、うん。
しかも、モノマネしてる人間が(笑)
「ちょっとつかみがね」とか言われたら、本当腹立つと思う。
- 糸井
-
でも、ちょっとなっちゃう人もいるじゃないですか。
誰でもいい気にはなれるじゃない? 28、9だって。
何回も機会があっても、逃げてきた人はちゃんと逃げてるし。
- 清水
-
そうね。
でも、気がつかずになってたかもしれないけどね。
- 糸井
-
なるほど。
こういうとこなんだよ、この人の面白さは!
なってたんだ。証拠写真はここにあります。
- 清水
-
しまったー、自白した(笑)。
あとやっぱりほら、
自分を客観的に見てナンボの商売だから、私たちは。

- 糸井
-
そうだ、そうだ。なるほどね。
「こう見えてるよ」っていうの、実はプロデュースの原点だね。
モノマネがプロデュースの原点です。
ほら、終わった。
- 清水
-
やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
- 糸井
-
やめてよ、軽薄、までで(笑)。
いや、面白かった。
- 清水
-
あっという間。
- 糸井
-
こういう会話は仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。