私は大学入学を機に、
地元福岡から上京した。
同じ県内に住む料理上手の祖母に、
初めて料理を習ったのが、上京する直前のこと。
その時に習ったのが、今回作った「がめ煮」、
そして「かぼちゃの煮物」「大学芋」だった。

一人暮らしだからといって、少量作るのは効率が悪い。
けれども、沢山作っても、一度で食べきるのは難しい。
煮物は数日、日持ちがするので、多めにつくれる。
なおかつ、野菜も沢山取れるというのが、
祖母がこの3品を選んだ理由だった。
先日、その失くしたと思った懐かしいレシピを、
偶然、片付けの最中に発見した。
大学卒業を機に引っ越した際に紛失していたので、
実に10年ぶりの再会だ。
今回、3品の中で「がめ煮」を作ろうと思ったのは、
がめ煮が福岡の郷土料理で、
名前にインパクトがあるのが理由の一つだった。
けれども、一番の理由は、
がめ煮が最も思い出深かったからだ。

がめ煮は、我が家では正月料理の位置付けで、
祖母も母も、日常的に作ることはなかった。
けれども、野菜がたっぷりで、
今回使った人参、いんげん、さといも以外にも、
ごぼうやれんこん、たけのこなど、
季節の野菜で好きなようにアレンジができると、
祖母は料理をしながら教えてくれた。
一人暮らしの私を気にかけて、
正月料理としてではなく、
日常的に食べられるようにと教えてくれた。
そんな祖母のやさしさが思い出に残り、
懐かしく、作りたくなったのだ。
祖母の料理はいつも美味しい。
遊びに行き、
「おばあちゃんの料理が食べたい」とリクエストすると、
「せっかく遊びに来たとに、
こんな田舎料理で、ほんとによかったと?」と
嬉しそうに返しながら、料理を作ってくれる。
福岡に帰るのは、今では年に1回程度。
いつも祖母の料理を食べるばかりだったが、
今度会う時は、もう一度祖母に、料理を習おう。