もくじ
第1回aikoとインターネット 2019-02-26-Tue
第2回aikoとはじめてのライブ 2019-02-26-Tue
第3回aikoと仕事とわたしの夢 2019-02-26-Tue

88年生まれ。渋谷でライター・編集の仕事をしています。aikoのことが大好きです。

私の好きなもの</br>aikoのある生活

私の好きなもの
aikoのある生活

担当・フクオヨウコ

第3回 aikoと仕事とわたしの夢

aikoの話をする上で、
「恋愛」は欠かせないキーワードだと思う。

aikoは1998年にメジャーデビューをしてから
現在に至るまでに、230曲以上の楽曲を発表しているけれど、
そのほとんどが恋愛ソングだ。

恋のはじまりから終わりまで、
恋愛のなかで生まれるあらゆる感情を
知っているんじゃないかと思うくらい、
aikoは恋する人の気持ちを丁寧に掬い上げる。

わたし自身も例にもれず、
恋をしているときこそaikoの歌は心に沁みるし、
10年以上聴き続けてきた曲の歌詞の意味が、
あるとき急に理解できるようになる瞬間もあった。

こんなにも胸がしめつけられる想いを、
aikoはずっと前から知っていたのか。

そう思うと、今の自分の苦しさを
aikoは理解してくれているんだという安心感と、
まだ、わたしの知らない痛みを
aikoはたくさん知っているんだという切なさが、
いっぺんにからだのなかに押し寄せてくる。

aikoの恋愛ソングは、
aikoのこれまでの人生に起きた出来事や、
心に生まれた感情と向き合い続けてきたからこそ、
生み出すことができたのだろうと想像する。
そうやって届けられた歌の数々に、
わたしは確実に救われながら生きてきた。

だけど、と同時に考える。

わたしがaikoを好きな理由は、
aikoの歌う恋愛ソングが好きだから、
というのでは全然足りない。

数年前に行われたライブツアーの公演MCのなかで、
忘れられないaikoの言葉がある。

「こうやって、20年近くライブをやらせてもらっていると、
お客さんのなかには、結婚したり、子どもができたりして、
しばらくaikoのライブから離れる人もおると思うねん。

でも、そういう人が久しぶりにaikoのライブに来たときに、
変わらずに歌っていられたらいいなって、
『あぁ、aikoは全然変わってないな』って、思ってもらいたい。
aikoはね、みんなが帰ってこられる場所になりたいんです」

なんて、強くて孤独な決意だろうと思った。
待ってもらえる人は安らぎのなかにいられるけれど、
待つ人はいつだってさみしいと、わたしは思っている。

aikoが変わらず歌い続けるということは、
変わらず仕事をやり続けるということだ。
aikoのように、一度のライブで何千、何万人ものファンに
歌を届けるアーティストが変わらず活躍し続けるには、
どれほどの熱意と努力と、覚悟が必要なんだろう。

わたしはaikoの、
ひたむきに仕事と向き合う姿勢が好きだ。
歌が大好きで、歌い続けることを選んだ自分を信じ、
自らが選んだ道を正解にしていくaikoの強さに、
わたしはいつも背中を押してもらっている。

わたしはもう、何年もライターの仕事をしているけれど、
才能、という言葉が頭をよぎるたびに、
今いる場所から逃げ出したくなってしまう。
自分よりずっと若くて、能力のある人に出会うたびに、
どうせわたしなんて、と卑屈な心にのまれそうになる。

だけど、そのとき思い出すのがaikoの姿で、
自分がやりたいと思ってはじめたことなのだから、
あきらめたくないなら、続けるほかないんだと
自分自身を励ましてきた。

aikoがこの先も歌い続けることを決めたように、
わたしも書き続ける覚悟を持って、
いつかaikoと仕事ができるくらいの力をつけたい。

だからわたしは、今日も明日も明後日も、
aikoの背中を追いかけながら、書く仕事を続けていく。