一般に、人形で遊ぶような年齢を過ぎた
小学5年生の頃だったろうか。
当時仲の良かった友人が、
何かの時に1冊の本を見せてくれた。
「ジェニー」というタイトルの本だった。
ジェニーに着せる服を手づくりできるその本は、
ページをめくるだけでもワクワクする。
ちょうど家庭科で裁縫を習い始めた頃だったころもあり、
私は久しぶりに引き出しからジェニーを引っ張り出し、
持っている道具を駆使して、洋服をつくった。
あまりに夢中になり、
ジェニーのファンクラブにも加入する。
ちなみに、私がファンクラブに入ったのは、
後にも先にも、この1回だった。
そして、洋服づくりとともにハマったのが、
ジェニーの友だち集めだった。
ジェニーは父母兄弟の人形は
生産されていなかったのだが、
友だちの人形が数多く存在した。
その数ざっと50人以上。
男の子の友だちも何人かいた気がするが、
基本は女の子ばかり。
とりわけ心を掴まれたのが、世界各国の友だちがいた点だ。
日本はもちろん、アメリカ、中国、ヨーロッパ各国。
肌や瞳の色も、髪型も違う。何より好きだったのが、
「設定」が出身地や年齢、趣味程度で、
それほど細かくなかったこと。
リカちゃんよりも、勝手に想像を膨らませられたし、
友だちの人形の出身地にあわせて民族衣装をつくり、
それを夏休みの自由研究にしたりもした。
そんなジェニーの服づくりに夢中になった
小学校高学年から中学時代。
服をつくり、お小遣いを貯めては友だちの人形を増やし、
気がつけば、実家の人形ケースには30以上の
ジェニーとその友だちが並ぶようになった。
大学進学を機に、地元を出ることになり、
私は東京の小さな部屋へと移り住んだ。
都心まで30分以上かかる23区外のその街に、
私が連れていったのは、一番のお気に入りだった
ジェニーの友だちマリーンと、
ジェニーにハマった後、
1体だけ購入していたリカちゃんだった。
実家にある30以上の人形を持って行くには、
東京の家は狭すぎるし、ホコリをかぶらないように、
大切に並べることも難しい。
そんなこんなで、実家には、
残してきたジェニーとその友だちが、
今も大切にガラス張りの人形ケースの中に飾られている。