もくじ
第1回ホラー嫌いの私がゾンビ映画を好きなわけ 2019-02-26-Tue
第2回“特別な人”へのコンプレックスがあった 2019-02-26-Tue
第3回そんな自分がやっていくしかないのだ 2019-02-26-Tue

1995年うまれ。おいしいご飯と謎解きとゾンビが好きです。

私と、とあるゾンビ映画の話

担当・リコタカハシ


「私の好きなもの」をテーマにエッセイを書く。

そう聞いて、何を書こうかなと考えたとき
頭の中にポンと思い浮かんできたのが
とあるゾンビ映画のことでした。

もともとホラーは大の苦手で、
人が死ぬ話も悲しいので好きじゃない。

そんな私がどういうわけだか好きになってしまった
ゾンビ映画の話をしたいと思います。

第1回 ホラー嫌いの私がゾンビ映画を好きなわけ

「ゾンビ映画が好きなんです」

こう言うと、大体の人からは
「じゃあホラー映画が好きなんですね」
と返されます。

違うんです。
私、昔からホラー映画は大の苦手なんです。
なのにゾンビ映画は好きなんです。
幽霊がだめでゾンビはOKだなんて、
自分でも、ちょっと変かなと思ったりもします。

そんなちょっと変なゾンビ映画好きの私が
ゾンビ映画を好きになったきっかけの一本のことを
お話したいと思います。

みなさんは
『ゾンビーワールドへようこそ』
という映画を知っていますか?

原題は
『SCOUTS GUIDE TO THE ZOMBIE APOCALYPSE』

拙い英語力の私が日本語してみると、
「ゾンビによる世界の終わりを、スカウトたちがご案内します」
みたいな意味だと思います。

この映画はそのタイトルの通り
ゾンビとボーイスカウトをかけあわせたもので、
ボーイスカウトに所属する主人公たちが
突如発生したゾンビによるパニックに巻き込まれるも
その中で生き残るためになんとか頑張って戦うお話です。

私が生まれて初めて観たゾンビ映画です。

今まで、友人とホラー映画を観る機会は何度もありました。
友人宅やサークルの部室、旅行先の宿などで。
映画は大好きだし、いわゆる“名作”と呼ばれているものを
観てみたいという気持ちは強く持っていたので
途中まで観ることは何度もあったのですが
やっぱり幽霊が怖すぎて無理でした。

仮にその場をやり過ごせたとしても
その後に私を待っているのは
ひとりぼっちで行かなければならないトイレやお風呂。

そう考えると、とてもじゃないけど怖くて無理でした。

思えば小学生の頃も、学校の怪談がトラウマで
放課後は学校のトイレに行けなかった私です。

みんなが良いと言っている名作ホラー映画を楽しむことは
私にはきっと一生できないのだ。

そう思っていた矢先、この映画に出会います。

そして確信しました。
私、ゾンビならイケる、と。

なぜ幽霊がだめでゾンビならイケるのかというと、
ゾンビには物理的な攻撃が可能だからです。

幽霊は突然消えたり壁をすり抜けたり
登場人物たちを呪ったりするので、もう勝てっこありません。
現実に出てきてしまっても、
おそらくその超自然的なパワーの前にはなすすべなし。
無事では済まないでしょう。

しかしゾンビはどうでしょうか。
ゾンビは基本的に、土葬されていた死者が蘇ったり
普通の人間がウイルスへの感染でゾンビ化したものです。
つまり、自分と同じように肉体を持っているわけですね。

これならゾンビたちが大挙して押し寄せてきても
物理的にどう切り抜けていくかを考えれば大丈夫です。
実際にゾンビが発生しても、こちらに呪いをかけてきたり
壁をすり抜けたりはしないので大丈夫です。

今自分の手元にある材料でこの状況をどう切り抜けるか考える。
ゾンビには、論理パズル的な要素もあるのです。
そう考えるとゾンビ映画、ちょっと楽しそうじゃありませんか?

そしてゾンビ映画の中でもなぜこの作品が好きなのかと言うと
主人公たちがボーイスカウトで学んだ技術を生かして
ゾンビパニックを切り抜けていくさまが見事だからです。

主人公たち男子高校生3人組は、
幼い頃からともにボーイスカウトで活動しています。

学校では「イケてない」と鼻で笑われ異性にモテることもなく、
新入部員もなかなか入ってくれません。

「このまま活動を続けていたらずっと彼女ができない」
なんてことを考え、将来を嘆くシーンもふんだんに
散りばめられています。

そんな風にスカウト活動へのネガティブな意識が拭えない
お年頃の主人公たちですが、
そのスカウト活動の一環であるキャンプの途中で
ゾンビたちの襲撃を受けます。

はじめは突然のことなので命からがら襲撃を退けますが
さすがそこは年季の入ったボーイスカウト。
幼い頃から鍛えていたその技術が生きてくるのです。

襲ってきたゾンビを縛り付けるのに
スカウトで学んだロープの結び方を使ったり、
爆弾に火をつけるときには火おこしの技術が役立ったり、
ホームセンターではそのクラフト技術を生かして
その場にある商品で自分の武器をこしらえたりもします。

普段周りのイケイケな同級生たちに引け目を感じながら
おこなっていたスカウト活動で身につけた技術で
迫り来るゾンビの大軍を倒したり、
そのゾンビから他人を助けてあげたりするわけです。

最初は「スカウト活動なんてダサい」と
脱隊すら考えていた主人公たちが、
戦いの中で自分の持てる技術を最大限に使って
ゾンビを倒していくようになる姿を観ると感動します。

ボーイスカウトをめぐって心のすれ違いも起こる3人ですが
それでも最後には力を合わせて敵を倒そうとするんです。

足が速くて力も強くて、自分のことを食べようとしてくるゾンビ。
そんな恐ろしいゾンビたちを前にして
勇気をもって立ち向かう主人公たちの成長には
思わず胸が熱くなります。

第2回 “特別な人”へのコンプレックスがあった