ここまで読んでくださった方がいるのであれば、
私の綴る爽快感に、共感してくれたのか、
もしくは相当の物好きかであろう。
ラストとなる今回は、これまで以上に、
キレイでない場面での爽快感の話。
ここまで来たら、ラストまで、
どうかお付き合いをお願いしたい。
(無理は言いません)
最後に語りたい、爽快感が生まれるシーンは、
ずばり、「とりのぞく」行為のとき。
幼少期、母の膝枕で耳かきをされる
姉の姿を見るのがすきだった。
私とは異なり、耳あかカサカサ派の姉。
広げたティッシュの上に、取り出される耳あか。
「大きいのが取れたよ〜」
「わぁ。まだ潜んでいるかも。もう少しで取れそう」
「おぉー。こんなのが出てくるとは」
母の一言ごとに、姉の耳に出入りする耳かきの尖端と、
ティッシュに並ぶ収穫物をじっと見ていた。
「次は私の番!」と、母にねだり
耳かきをしてもらうも、ベタベタ派の私。
耳かきの先には、申し訳程度に
ペタっとしたものが残るのみ。
ティッシュの上には、勿論、固形の収穫物は並ばず、
申し訳程度に黄色っぽいシミができるだけだった。
あんな風に耳あかを取り除けるなんて、
さぞ、取る方も、取られる方もスッキリ爽快なんだろうなぁ。
幼い私には、強烈に「耳あかカサカサ派」に憧れた。
格別の爽快感が得られるものなのであろう、
「耳あかカサカサ派」に焦がれるようになった。
成長し、自分で耳かきをするようになると、
その想いは一層増していく。
転生するなら、耳あかカサカサの人間に。
結婚相手に求めるのは、耳あかカサカサの遺伝子を。
そうすれば、こどもは1/2の確立で、耳あかカサカサに?
我が子が念願のカサカサ耳あかなら、耳かきし放題!
と妄想は加速していた。
あの、幼少期に目にしていた、
姉の耳かきでの爽快感を
どうにか私も味わってみたい……。
今は味わえないのであれば、せめてその光景を
また目にして、そこから爽快感を得たい……。
その想いが行き着いた先は、YOU TUBEだった。
「耳あか ごっそり」で一度検索をしてみてほしい。
そこには、めくるめく耳かきの世界が広がっている。
信じられないかもしれないが、
世の中には耳かき動画を投稿する多くの人がいるのだ。
ずらりと並ぶ動画たちは、
題名からして、私にはまさに垂涎もの。
一部、紹介を。
・巨大耳あか摘出スッキリまとめ〔閲覧注意〕
・最凶、最大な耳あか除去3連発
・これはもはや耳あかではありません。●年もの発掘!
こんな感じである。
これを「ear cleaning」で検索をすると、
また世界は更に広がる。
具体的には割愛するが、やはり国境を越えた先には、
耳かき、耳あかの概念を覆すようなものが目白押しである。
では、この耳かき動画の楽しみ方を紹介したい。
それは最初に耳孔から耳あかが片鱗を見せた瞬間から、
耳あか全体像を思い描き、
完全に取り除くまでの手順を想像すること。
私だったら、この角度からアプローチする、
だとか、
このターゲット(耳あか)の場合は、ピンセットにチェンジだ、
などと、
画面の中の耳あかにどう対応するか
シミュレーションを行うことは、
耳かきを新たなエンターテイメントに昇華させた。
現実には、耳あかベタベタ派の私でも、
動画の世界では、そこから得られるであろう
爽快感を基準に、好みの耳あかをいくらでも探せた。
動画を鑑賞しているときのわたしの姿、表情を
客観的に見たことはないのだが、
真剣に食い入るようなときもあれば、
恍惚と、腑抜けた顔をしているときもあるだろう。
それは、耳かきにあらゆる感情が詰まっているから。
「喜」
予想通りの展開で、スッキリ取り除けた!
「怒」
この場面(耳あか)にこの道具を!? 違うだろう!
「哀」
ここまで溜めこんでいて、どれだけ聞こえ辛かったのだろう。
「楽」
でもこれだけ取り除けたら、劇的な変化で幸せだろうな。
そして
「悦」
巻き貝の身を取るように、ゴロンと耳あかが取れるなんて。
ひたすらに、うっとり……。
といった具合だ。
カサカサ耳あかでの爽快感に焦がれた
幼少期の私に伝えたい。
「自分でカサカサ耳あかを取り除く爽快感は
まだ手にしていないけれど、
大人になったあなたの世界には、
画面を通じて、その爽快感をシェアしてくれる、
見ず知らずの物好きな仲間が大勢いるよ」と。
そして、「とりのぞく」ことでの爽快感は、
耳かきから更に広がる。
YOU TUBEには
「この動画を見ている人には、こんな動画もお薦め」
と推奨動画がいくつも表示される。
勘の鋭い方は察しているかもしれない。
耳かき動画を見まくっていた私のもとには、
耳かきにとどまらず、
あらゆる「とりのぞく」系の動画が推奨されていた。
例えば、
・粉瘤の治療
・魚の目の処置
・埋没毛の対処
その中でも強烈に惹かれたのが、
角栓を取り除くこと。
毛穴があるところには、必ず発生すると言える角栓。
背中や頬、耳の角栓を取り除く動画と一線を期したのは
「鼻の角栓を取り除く」動画たちだった。
というのも、もともと、自身の鼻の角栓に
前述のニキビと同等に、
並々ならない興味関心を持っていたことに起因する。
だが、このこの鼻の角栓にまつわる爽快感話は、
またいつか、別の機会に……。
共感してくれた、そこのあなた。
ぜひ今後、一緒に
「鼻の角栓にまつわる爽快感」について
語り合いましょう。
このエッセイのトップ画は、
ニキビにも、角栓にもまだ無縁の、
そして憧れのカサカサ耳あかを持つ、
最愛の姪っ子の鼻を拝借したことを、
ここに感謝と共に記しておきたい。
姪っ子よ、ありがとう。
今度、会うときには、耳かきをさせてほしい。