本当の「頷き」のうれしさ。燃え殻さん×糸井重里対談
第3回 書くっていいよね。
- 糸井
-
今日は手帳のイベントなのもあって「書く」
って話になるんじゃないかと思ってて。
何かを終わりにするのは
ちょっともったいないような気がしたら
「書く」っていうことに繋がって。
思ったときにすぐ書くとは限らないんだけど、
なんか覚えとこうと思うだけで、
なんかいいですよね。

- 燃え殻
-
そうですね。
- 糸井
-
で、なんでその
「思うだけじゃなくて書きたいんだろう」
っていう話をしてみましょうか。
- 燃え殻
-
しましょうか。

- 糸井
-
例えば、
「やせ蛙まけるな一茶これにあり」
っていう俳句は短い形式だけど、
「やせ蛙」っていう見方をしたな
っていうのが、まずうれしいじゃないですか。
今まで自分で蛙に対して痩せてるか太ってるか
っていうのを思わず、「ただの蛙」
って思っていたところに、
「やせ蛙」って言っただけでもう‥‥
あ、いいなって(笑)
- 燃え殻
-
ああ。
- 糸井
-
で、そこに、
「負けるな」って気持ちが乗っかって、
「負けるな一茶これにあり」っていうのは、
自分に言ってるんだか、
蛙に言ってるんだかわからない。
どっちが応援されてるのかわからないけれども、
うれしくなるみたいな。
やせ蛙を見たことっていうのを
「書くという」形にしたんですよね。
燃え殻さんがゴールデン街で横になって、
やせ蛙を見つけたみたいな(笑)
何かを書いてみるっていう、うれしさっていうの。

- 燃え殻
-
うん、そうですね。
ぼくだけが見てる景色‥‥

- 糸井
-
そうそうそう。
- 燃え殻
-
「書く」事でそれを切り取れた、
喜びみたいなものだったりとか。
- 糸井
-
でも、そういう、
「これは俺しか思わないかもなみたいな風景」が、
みんなに頷かれた時って、
「悔しい」じゃなくて「うれしい」ですよね。
- 燃え殻
-
はい。
すごくうれしい。

- 糸井
-
だから、
小説の中で燃え殻さんが書きたかった、
ゴールデン街で酒飲んでそのまま寝ちゃって、
起きたときにこういうお天気だったなという話は、
多分、同じこと経験してないけど、頷けるという人は
けっこういると思うんです。
- 燃え殻
-
そうですね。
「経験してないけど、わかるよ」
っていうところで
頷いてもらえると嬉しいですね。