- 糸井
-
ひとつのことを深く考えたことがある人に質問すると、
「それは何回も考えたんだよ」ってことを一生懸命答えるの。
燃え殻さんからもそういうのを感じる。
- 燃え殻
- そうですか。
- 糸井
-
その答えは絶対におもしろいんですよ。
燃え殻さんの、考えたことがあるっていう証が
小説やエッセイになったりしてるわけだから。
それについては答えがないけど考えたんだよみたいな(笑)
- 燃え殻
-
そうなんですよ。
考えてるっていうことをそのまま出してるというか。
- 糸井
- そうですよね。
- 燃え殻
-
悩みもそうですよね。
悩みが変わったり、それが解消してなくても
いつしか悩みの枝葉が新しく分かれていて、
それがいいか悪いかもわからないんですけど、
きっと先には進んだ。ずっと同じところで
同じ悩みを抱えているっていうよりはいい。
- 糸井
- ええ。温泉入って麻雀したらなんか治ってたみたいなね。
- 燃え殻
-
悩みを悩みで消すようなことはあります。
ずっと悩んでいると病むので、
永ちゃんの「楽しめ」じゃないですけど、
ほかのことを悩んで解消する。
「もっとほかにおもしろいことないの?」って
自分に問いかける。おもしろいことは悩みですよ。
- 糸井
-
自分でも、難しいと思ってることがあると、
ついそっちに引かれて行って余計ややこしくなる。
- 燃え殻
-
それ本当に分かります。
面倒くさくしちゃったほうがいいときだってあるんです。
だから、悩みを手元に置くことをおすすめしたい。
そうすると、それに集中しなきゃいけなくなるので。
ちょっと遠い悩みって、お酒飲むと言いがちなんです。
ロマンチックに「やっぱり人生ってさ」って(笑)
「人生ってさ」っていうのは、過去を振り返って言う話なので
大上段に振りかぶって言うのはいけないなって思います。
- 糸井
-
僕もそう思いますね。
形になりようがないものについて考えるのは
楽しみとしてある。
だから、こっちに行ったらうまくいくとか、
あっちに行った人は失敗するとか、
そういう不平等があるというのを
急に言われても困るじゃないですか。
- 燃え殻
-
そう。絶対的な真理とか言われても困るんですよ。
そうすると、何かどうでもよくなって、
目の前の努力もやめてしまいそうになる。
ずっと意味もなくボトルシップを作ってるみたいな。
でも、ひとつはずっと作ってたほうがいいんです。
- 糸井
-
そういう傾向のある男は、だいたい家庭を持って、
目の前の忙しさが増えていって、
解消したんだか何だかわからないっていうふうに
まとまっていくんじゃないですかね。
- 燃え殻
- それはひとつのいい答えですね。
- 糸井
-
だから、現役でボトルシップを作り続けている人から見ると
子供のよだれを拭いて時間が過ぎていくなんて
信じられないと思うかもしれないけど、
そのよだれこそがボトルシップ。
- 燃え殻
- まさに。
- 糸井
-
ただ、それだけでは自分の幅が狭まるから、
燃え殻さんのようなタイプの人は、
悩みを手元にたくさん置きますよね。
- 燃え殻
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うーん。でも、ひとつ大きな悩みがあると
それはそれでいいのかもしれないなと
いま話しながら思いました。
(つづきます)