- ――
- メロディと歌詞はどちらが先にできますか?
- 大久保
-
どっちかって言うと歌詞かな。
でも歌詞も「こういうの書こう」って書くんじゃなくて、
フレーズのストックがあって、
曲を作ったときになんとなく
「この雰囲気にはこれを歌おうかな」って決めて、
その前後をつくっていく、みたいな。
- ――
- 元のフレーズがサビになるとは限らない?
- 大久保
- 大抵サビにはならない。
- ――
- でもそこに一番言いたいことがあったりする?
- 大久保
- いや、あんまり「言いたいこと」がない。
- ――
- 「戻りたい」っていうのは言いたいことじゃないの?
- 大久保
-
でも、歌詞にメッセージ性はない。
基本的には
刹那的なシーンをどう美しく表現にするか、
とかそういうとこだから。
- ――
- 「表現にする」ことなんだ。
- 大久保
-
「振られた」とか「悲しい」とか
「失恋した」とかいう絶望的な状況も
音楽にしたらさ、芸術‥‥美しいものになるわけで。
なんかその変換作業が楽しいって感じかな。
だから基本的には楽しい、作ってるときは。
- ――
- 失恋と向き合う作業でも?
- 大久保
-
うん、楽しい。というか充実感がある。
「あ、これはよく書けた」とか
「これはすごく今の気持ちを言えてるな」とか、
そういうのが。
多分、俺すごくロマンチストで、
“自分の失恋体験をよりドラマチックにしてくれる音楽”
をつくってる感じだと思う。
- ――
-
でもそれの失恋体験を聴いた人が
「これは自分の体験だ」って重ねられるのが
大久保くんの歌詞だよね。
歌詞、褒められるでしょ?
- 大久保
-
そうね。でも最初は歌詞を意識してなくて。
2ndアルバム(『DRILL』)に入ってる
「OK(2006)」って曲を書いたときに、
実際書いたのは1stアルバムより前だったんだけど、
初めて歌詞を褒められて。
そのときに詞で表現することの喜びを感じた。
- ――
- 最初の頃からずっといい歌詞だと思う。
- 大久保
-
もう忘れられないシーンとか、
焼き付いてる瞬間とかを、
言葉にできたときの快感はある。
ある風景を自分の中で
映画のワンシーンにできる、みたいなさ。
- ――
-
ちなみに歌詞の話で言うと、
アイドルユニットlyrical school(リリカルスクール)の
「夏休みのBABY」や「CALL ME TIGHT」などの
作詞も手掛けてますけど。そこは何か違う?
- 大久保
-
そこは全く違う、感覚が。
どちらかって言うとコピーライターのほうの
能力を使ってるイメージ。
(※大久保くんはコピーライターでも活躍中)
- ――
-
彼女たちを生かすにはどんな歌詞がいいだろう、
みたいなところ?
- 大久保
- うん。
- ――
- そこに自分の経験は乗せないの?
- 大久保
-
女の子の歌だし
あんまり具体的な自分の経験は乗らないけど、
恋に関する感覚は
時代とか世代が変わっても一緒な気がする。
ただ、音楽の聞き方とか言葉の使い方は確実に違うから、
そこは技術的にやってる感じかな。
- ――
- 今までの話に比べると“仕事として”感があるね。
- 大久保
-
でも基本的にはメンバーやお客さんを
思って作ってるから、思い入れは強いよ。
やっぱりメンバーの夢がかかってるし、
頼まれたからには結果を出さないとって思うしね。
だから自分“ふたり”でやってるようなイメージがある。
- ――
-
コピーライターとしての大久保くんと、
ミュージシャンの大久保くんと。
- 大久保
- そう。それができるのは自分の強みだと思うしね。
- ――
- アナのときは?
- 大久保
-
アナはやっぱり超個人的で、
失恋とかなにかを表現したいって
欲が出てきたときに書く感じ。
思ってるのは、好きな子のことだけ。
(つづきます)