もくじ
第1回『遥かなる時の彼方へ』 2017-11-07-Tue
第2回スタッフロールの向こうがわ 2017-11-07-Tue
第3回記憶に残る体験をとどけたい 2017-11-07-Tue

こどもの医療機関で広報・PR・Webサイト運営、ファンドレイジング(寄附あつめ)に従事しています。

私の好きなもの</br>クロノ・トリガー

私の好きなもの
クロノ・トリガー

担当・佐藤 徹

第3回 記憶に残る体験をとどけたい

当時、自分はYAMAHAのエレクトーン教室に
通っていました。

ずっと練習曲として課題にされていた曲を
弾くだけだったのが、
『クロノ・トリガー』という作品との出会いを経て
「この曲が弾きたい!」という気持ちを惹き起こし、
先生に楽譜を買ってもらって一生懸命練習したことを
憶えています。

自分に大きな影響を与えた楽曲たちを演奏することで、
自分だけでなく他の人にも同じような感動をとどけたい。
そう思ったのです。

しかし、『遥かなる時の彼方へ』という曲は、
弾くことができませんでした。
単純に曲が難しかったということもありますし、
自分が曲に込められた想いを前にしたときに
腰がひけてしまった、というのもあります。

あれから、早20年が経ちました。
いま、ゲームは大きく変わったのだと思います。
TVゲームは主流ではなくなり、
僕たちが毎日手に持つ液晶画面の中で
いつでも手軽に遊べるようになりました。

思い出補正、と指摘されるかもしれません。
しかし、ゲーム作品の幻想的なストーリーに
こころ動かされて、
まるでほんとうに物語の中に自分がいるかのような
あのころの没入と感覚と感動は、
もう二度と感じることはできないのだと思います。

そこには、
漠然とした将来への不安と希望が綯い交ぜになった
当時の自分の精神状態も大いに影響していたことでしょう。

それでも、いまだに『クロノ・トリガー』の曲を
僕は聴き続けていますし、
曲を聴くと、自ずとそのころの自分の気持ちが
甦るかのようです。

ひょっとすると、どこかで時を超えて、
あのころの自分に出逢える時が来るんじゃないかと
思っているからなのかもしれません。

何者でもなく、社会的な役割を持たずに
漠然とした未来への不安を抱えていた自分が、
自発的に生まれた欲求を自ら実現しようとするような
原体験を齎した作品として、
現在も『クロノ・トリガー』は
自分の胸の中にあり続けています。

(おわり)