もくじ
第1回チェロに一目惚れ。 2017-11-07-Tue
第2回「好き」って強いんだ。 2017-11-07-Tue

1994年生まれ。学生です。
水泳、空手、チェロ、生徒会活動、
シンガーソングライター、広告会社のインターン。
今日まで色々なことに挑戦してきました。
今度は「書くこと」に挑戦します。
よろしくお願いします。

わたしの好きなもの</br>チェロ

わたしの好きなもの
チェロ

担当・川西

第2回 「好き」って強いんだ。

チェロはジュニアオーケストラを運営する財団から
貸してもらえることになりました。

チェロを受け取る日。
頑丈そうな紺色の楽器ケースに入って、
わたしの相棒となるチェロが運ばれてきました。

おそるおそる、楽器ケースを開けると
中には栗色をした立派なチェロが。
そのチェロからは鼻の奥にスーッと
ぬけていくような木の香りがしたことを覚えています。

いよいよ、はじめてチェロを弾く瞬間です。
弓を弦にのせて、ゆっくりと弓を動かしました。

ヴォーーン。

ずっと憧れていた、あの音です。

チェロは抱きかかえるように持つので、
音を鳴らすと、木が振動していて
じぶんの体にも、その揺れが伝わってくるんです。
痺れました。

借りたチェロは家に持って帰ってからも
ずっと弾いてました。
弾くといっても、「レ」や「ソ」といった音が
どうしたら出るのかが分からないので
1番高い音が鳴る弦と低い音が鳴る弦を
交互に鳴らすだけなのですが。

「どっちも好きだな。ほんとにいい音だな。」
と思いながら。

弾かずに、ケースから出して
ただチェロを眺めてみたりもしました。
ずっと見ていられるんです。

そして、あるときに
スクロールと呼ばれるチェロの頭の部分にある
パーツが、とびきり好きなことに気づきました。

基本的にチェロは「かっこいい」と思うのですが、
このパーツだけは「かわいい」と思ったんです。

おしゃれでいうところの差し色のようなものでしょうか。
1箇所だけ、かわいいところがあるなんて反則です。

今のスクロールは音への影響やバランスを考えて、
リスの尻尾から着想を得たという
うずまき柄になっていますが、
昔は装飾として、女性の顔や竜の形に
彫られているチェロもあったようです。

リスの尻尾のような、あいくるしさがあるから
かわいいと感じたのかもしれません。

とはいえ、
そんな余裕を持ってチェロに接していたのは
オーケストラの練習がはじまる前までのこと。
毎週末、行われる練習はとても厳しかったです。
ましてや、わたしはチェロを弾くメンバーのなかで
ひとりだけ未経験者だったので、
他の人よりも何倍も練習しないといけませんでした。
しんどかった時もあります。

それでもチェロが好きだったから、突き進めました。

きらいだった音楽の授業で挫折した楽譜の読み方を
いちから勉強して、読めるようにしました。
チェロを弾けるようになりたかったから。

つまらなくても毎日、必ず
基礎練習のフレーズを何度も弾いて練習しました。
チェロを弾けるようになりたかったから。

下手くそで、悲しくなることもあったけれど、
ただ、チェロを抱かえているだけで楽しかった。
チェロの音が鳴っているだけですごく、うれしかった。

「好き」はじぶんを強くする。
「好き」はじぶんを前向きな気持ちにさせてくれる。

「好き」って気持ちは強いんだと、
その時に気づきました。

その後、ジュニアオーケストラのコンサートで
スタニスラフ・ブーニンさんという
世界で活躍されているピアニストの方と
一緒に演奏できるぐらいまで上達。
高校卒業を機にジュニアオーケストラを退団しました。

ポップス、ジャズ、カントリー、ヒップホップ。
チェロをきっかけに、音楽を好きになってからは
クラシック以外の曲も聴くようになりました。

いろいろな音楽を聴いて
いろいろな楽器を知っても、
やっぱりチェロが大好きです。

チェロを弾く機会がなくなった今も
流行りのポップスや映画音楽から
流れてくるチェロの音を聴くたびに
幸せな気分になれるのです。

それはたぶん、これからもずっと。

(お読みいただき、ありがとうございました。)

これを読んで、チェロってどんな音だろうと
思ってくださった方におすすめしたい曲があります。

・バッハ 無伴奏チェロ組曲1番
・ドヴォルザーク チェロ協奏曲
・映画「おくりびと」のメインテーマ

どれも、すごく有名な曲です。
なんの目新しさもない選曲ですが
やっぱりチェロの魅力が伝わる曲たちだと思います。
聴いてみてください。

(おしまい。)