もくじ
第1回チェロに一目惚れ。 2017-11-07-Tue
第2回「好き」って強いんだ。 2017-11-07-Tue

1994年生まれ。学生です。
水泳、空手、チェロ、生徒会活動、
シンガーソングライター、広告会社のインターン。
今日まで色々なことに挑戦してきました。
今度は「書くこと」に挑戦します。
よろしくお願いします。

わたしの好きなもの</br>チェロ

わたしの好きなもの
チェロ

担当・川西

「好きなもの」のなかで
もとは「きらい」だったものが1つだけありました。
「音楽」
その「音楽」を好きにさせてくれたのが「チェロ」です。
佇まいと音色に一目惚れ。

どうしてもチェロを自分で弾いてみたい。
その想いから、中学3年生のときにあるチャレンジをします。

そんなわたしがチェロに魅了されていくさまを
それにまつわる出来事とともに書いてみました。

「音楽は好きだけど、演奏のことやクラシックは分からないよ。」
という読者の方にも、お楽しみいただけるように
むずかしい音楽用語は使っていません。

しばし、お付き合いいただけると
うれしいです。

第1回 チェロに一目惚れ。

“もうすこしがんばりましょう。”

これは小学校の通信簿でいちばん低い評定です。
小学校3年生から6年生まで
わたしが、この評価をとり続けた唯一の科目。
それは「音楽」です。

ピアニカの演奏も。リコーダーの演奏も。
合唱も。ぜんぶ、きらい。

音楽の先生のところに楽譜を持っていき、
音符の下に「レ」とか「ソ」とか、
ふりがなのように音名を書いてもらう時間が
すごくイヤだった感覚を
いまも、よくおぼえています。

相変わらず、音楽はきらいだった中学1年生の秋。
あるドラマが始まりました。

「のだめカンタービレ」

クラシック音楽をテーマにしたラブコメディー。
「新しくはじまった月9だから、とりあえず観よう。」
という、かるい気持ちで観はじめました。

とてもおもしろいドラマで、
音楽がきらいなことを忘れるほど楽しんで観ていました。

「クラシックってお金持ちの人か
おじさん、おばさんの聞く音楽でしょう?
なんかダサい!」と思っていたのに、
ドラマが最終回を迎える頃には
かっこいいと感じるようになっていました。
特に劇中でオーケストラが演奏するシーンは
群を抜いて、かっこいいと。

そのうち、
「オーケストラを生で観たい。」
と思うようになったのです。

母親に何度もおねがいをして、
オーケストラのコンサートチケットを取ってもらいました。

コンサート当日、
襟のついたシャツを着て、
いつもより入念に歯磨きをして、
やや緊張しながらコンサートホールへ。

客席は5000席もあり、
こんなにたくさんの人が観に来るのだと
とてもおどきました。

開演を知らせるブザーが
すこし荒々しく鳴ったあと
100人近いオーケストラのメンバーが舞台上に現れました。
それぞれが着席して楽器を持つと、
チューニングという音合わせがはじまります。

ヴァイオリンを弾く人や
見たことのない赤い竹のような楽器を吹く人。

それぞれ、特徴ある楽器を持った人たちが
いっせいに決められた音を鳴らしはじめました。

100人近い演奏者がせーので同じ音を出すと、
その音は波のようにステージから
客席の方へと、やさしく広がっていきます。
まだ曲を弾いてないのに、鳥肌が立ちました。

チューニングが終わると、
燕尾服を着た指揮者が登場。

オーケストラの奏でる音が
ホール内にあますことなく響き渡りはじめました。

「こんな音、聴いたことない・・・。
 あまくて、豊かさもあって、
 そのうえ、なんて力強い音なんだろう・・・。」

それは良い音というよりも、”美しい”音でした。

そして、ステージにいるオーケストラの迫力。
優雅な雰囲気をまといつつも、
パワフルに楽器を鳴らす姿に圧倒されました。

演奏はどんどん華やかになり、熱を帯びていきます。
そんなステージを観ていて、
心を撃ち抜かれた楽器がありました。

チェロです。

とにかく、ルックスがかっこいい。
チェロの大きなボディーから
威厳や貫禄のようなものを感じました。

例えるならば、ヴァイオリンは端正な顔立ちをした青年で
チェロはダンディーなオジ様のようなイメージです。

その渋さに惚れ惚れします。

もちろん、音も素晴らしい。
ふくよかで、聴いてると心が落ち着くような低音。
のびやかで、温かみのある高い音。

チェロはとても音域が広い楽器なので、
いろいろな音を鳴らせるのです。

見かけも良し、性格も良しという
理想の恋人に出会ったような気分。
「チェロと出逢うために、今日ここに来たんだ。」と
おおげさでなく思いました。

このコンサートに行った日が、チェロのことで
頭がいっぱいになる日々のはじまりです。

チェロが主役になっているクラシックの曲を
毎日、聴くようになったり。
買うことはできないけれど、
銀座の楽器屋さんにチェロを見に行ったり。
有名なチェロ奏者のコンサートにも行くようになりました。
とにかく一度でもおおく、
チェロを観たくて、聴きたかったんです。

1年ほど時は流れ、
「観ているだけでなく、
自分でもチェロを弾いてみたい。」
と思うようになっていました。
とても高価な楽器なので
買うのはむずかしいですし、
学校の音楽室に置いてあるような
楽器でもありません。

それでも、一度でいいから触れてみたい。
鳴らしてみたい。

そんな気持ちが肥大していたとき、
わたしの住んでいる地域で
ジュニアオーケストラが創設され、
メンバーの募集があることを知りました。

「これはもはや運命なのではないだろうか?」

経験者でないことに不安を抱きながらも、
ありったけのチェロへの思いを込めて、
応募書類を送りました。

「合格」
書類選考と面接を経て、
ジュニアオーケストラに入団が決定したのです。

ついに、憧れのチェロが弾ける!
これが、中学校3年生の春のことでした。

(つづきます。)

第2回 「好き」って強いんだ。