もくじ
第1回「好き」ってなんだろう。 2017-11-07-Tue
第2回固定観念で、決めつけてるの? 2017-11-07-Tue
第3回人をJudgeしてはいけない理由 2017-11-07-Tue

25歳の女性です。
この春、東京のIT企業に新卒入社して、
編集者になるべく修行を積んでいます。
反省も多い毎日ですが周囲に恵まれて、
とっても楽しく仕事をしています。

私の好きなもの</br>ニューヨーク

私の好きなもの
ニューヨーク

担当・あゆみ

第3回 人をJudgeしてはいけない理由

他ならぬ、ニューヨークの持つ多様性。

それが、彼らが”judge”を嫌う根本的な理由です。
「違い」があるから、
”judge”してはならなかったのです。
LGBTQなどのマイノリティーの文化が根深いのも、その証拠。

バックグラウンドが違う者同士が集まって暮らす時、
相手を受け入れ、違いを尊重し、助け合おう、
という姿勢がきっとなにより大切なのです。

私は日本の田舎の
似たような価値観を共有した集団のなかで育ちました。
ニューヨークの人が当たり前に持っている価値観に
気づけませんでした。

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ようやく地下鉄に乗り込み、座席に座ると、
痩せた40代に見えるちょっと小汚い男性が、
なにか文字が書いてあるカードと
なんの変哲もないポケットティッシュを
車内の空いた座席にひとつずつ置いていきます。

カードには、こうあります。
「こんにちは、邪魔をしてごめんなさい。
私には2人の娘がいますが、
食事に困るほどお金がありません。
このナプキンの代わりに、
なんでもいいので、あなたが出来ることで
私を助けて下さい。
どうもありがとう、このカードは返してくださいね。」

日本の地下鉄でこんなことが行われたとすると、
正直、この状況で自分が出来ることをする人は
一人いれば良い方なんじゃないかなと思いました。

しかし、そこに居合わせただけの5、6人が
お金を払ってそのティッシュを買ったり、
鞄からおもむろに未開封のスナック菓子を取り出して、
彼に手渡していきます。
手を差し伸べた人には、
ビジネスマンに見えるスーツの男性も居ましたし、
主婦のように見えるおばさまも居ました。

「ティッシュ、欲しかったんだよね」とでも
言わんばかりにナチュラルな動作で、5ドル札を手渡します。
「助けてあげよう」なんていう上から目線も特になさそう。

彼も「ありがとう、ありがとう」とそれらを受け取り、
残されたティッシュとカードを回収して、
次の車両へ向かいます。

全くの他人に、なんの抵抗もなく力を貸せる人は、
やさしいよな、と思った瞬間でした。
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アメリカに、トランプ大統領が誕生して、約1ヶ月。

ニューヨークでは8割以上の人が
クリントン大統領候補に投票していたそうなので、
ニューヨークの人々の多くは
未だに「信じられない」という気持ちを持ちながらも、
次々に発表される大統領令に不安を感じ、怒っていたようです。

私のインターン先のオフィスでは
「今週末のデモは行く?」
「行くよ、娘も連れて行く」
そんな会話をよく耳にしました。

私はいつも通りインターンを終えて、
地下鉄に乗っていました。
スーパーマーケットに寄って帰るため、
降りたユニオンスクエアの駅。
電車を降りて階段をかけのぼると、
目に飛び込んできたのはカラフルな付箋。

そこには、思い思いのメッセージが書かれています。
「女性の権利は、人権だ」とか、
「アラブ人だけど、テロリストじゃないよ」とか、
日頃から思っていることを、
吐き出せる場になっていました。

「こんなときだからこそ、愛を」と
訴えるメッセージが目立ったように思います。

この活動はSubway Therapy(サブウェイ セラピー)といいます。
チャベスさんという男性が始めました。
サブウェイセラピーは、
人々の抱える感情が溢れる前にはけ口を作り、
ストレスを軽減する営みです。

このポストイットの張られた廊下を歩くたび、
私は誰かの愛を目にし、
じんわりとあたたかい血の通ったような気持ちを貰って帰ります。

自分じゃない誰かのために愛を願う気持ちは、
やさしいな、と思いました。

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私がニューヨークを好きな理由は、
オシャレなお店やなく、
都会的な部分でもなく、
多様性でもなく、
ここに住む人が持つ「やさしさ」でした。

きっと半年だけでは、気づけなかった「やさしさ」が
まだまだ存在する街です。

人をJudgeすることなく、
違いを受け入れるやさしさを身につけたい。
そう強く思った、半年間でした。

私的な話にここまでおつきあいくださって、
本当にありがとうございました。