スピッツを聴くようになった高校生の私は、
だんだんと楽曲の歌詞に惹かれるようになっていきました。
スピッツのほとんどの楽曲の作詞作曲は、
ボーカルの草野マサムネさんが手がけています。
一見聞き心地が良いながらも実は難解な歌詞が、
キャッチーで爽やかな、もしくはロック調のメロディーに乗せられ、
草野さんの、甘く透き通る声で歌われます。
あるシチュエーションをつらつらと歌うのではなく、
断片的なセリフがぽつんとあったり、
人やモノ、景色と溶け合うような、相反するような形容詞があったり。
そうしたことばが重なって、フレーズとフレーズの間に、
聞き手に想像させるイビツな空白があります。
そんな、これまで私の価値観になかったような
言葉合わせでありながら、スッと心に馴染みます。
PUFFYに楽曲提供もしている『愛のしるし』では、
ヤワなハートがしびれる ここちよい針のシゲキ
理由もないのに輝く それだけが愛のしるし
愛を綺麗なだけのものではなく、
ちっぽけな感じを含めた表現に、人間らしさを感じます。
人の気持ちをすでにある単語一言で正確に表すことができないように、
草野さんの書く歌詞は、一つの言葉で表すことの出来ない
モヤモヤした人間の「愛」を、巧みに描いています。
『愛のことば』では、聴く人の心をザワッとさせることばがあります。
まず、
限りある未来を 搾り取る日々から
脱け出そうと誘った 君の目に映る海
という歌い出しです。
学校で授業を受け、部活に出て、家に帰ってきて寝る、
そんな同じ毎日を繰り返し、ぼんやりと過ごしていた高校生時代、
この曲に心を揺さぶられたのを覚えています。
たった2行の歌詞とメロディーで、
ここまで世界観に引き込むことができるのか、と思うほどに
ピリリとした緊張感のあることばが、心に迫ってきます。
私たちの心にある「好き」の気持ちには、
「嬉しい」があることもあれば、「苦しい」も「悲しい」もあります。
この課題でも、私を含めて塾生が表現したい「好き」の気持ちは、
同じ「好き」という言葉でも一人一人大きく違っていると思います。
だからこそ、私の「好き」がどういうものなのか、
どうすれば伝えられるのか、試行錯誤してことばを尽くしています。
スピッツの繊細なことばに興味を持ったから、
言葉の意味に感情を区画整理されずに、
自分の気持ちを複雑に捉えることが好きになったような気がします。
そして、それを嘘なく伝えることに興味を持ったのかもしれません。