田中泰延×糸井重里アマチュアのその先に
担当・コットン
第4回 会社を辞めた理由は「ブルーハーツ」
- 田中
-
糸井さんと初めて京都でお会いした時に、「ほぼ日という
組織をつくられて、会社を大きくしていって、その中で
好きなものを毎日書くっていう状態にすごい興味が
あります」って言ったら、糸井さんが、「そこですか」って
おっしゃったんですよ。それが忘れられなくて。
- 糸井
-
ずっと電通の人だと思ってたから。「あれ?この人、
電通の人なのに、そんなこと興味あるのか」って。
- 田中
-
僕も辞めるとはまったく思ってなくて。
実際に辞めたのが12月末なんですけど、
この間も、たまたま辞めた理由を書いたん
ですけど、理由になってないような理由
なんですけど、やっぱり、
- 糸井
-
ブルーハーツ?

- 田中
-
ブルーハーツですよ。50歳手前のオッサンになっても、
中身は20代のつもりだから、ブルーハーツを聞いた時の
ことを思い出して、「なんかもう、このように生きなくちゃ
いけないな」って。かと言って、伝えたいこととか、
「熱い俺のメッセージを聞け」とかないんですよ。
何かを見て聞いて、「これはね」ってしゃべるだけなん
ですけど、なんか、「ここは出なくちゃいけないな」って
なったんですよね。
- 糸井
-
どうしてもやりたくないことが世の中にはあって、
そこを僕は本当に逃げてきた人なんです。
だから、広告も、どうしてもやりたくないことに
似てきたんですよ。
- 田中
-
とはいえ、糸井さんの広告のお仕事を見ていても、
「この商品の良さを延々語りなさい」とかのリクエストに
応えたことはないですよね?
- 糸井
-
うん、ないね。「受け手として僕にはこう見えた、」って
思いつくまでは書けないわけで。だから、僕、結構
お金のかかるコピーライターで、車の広告を担当
する度に1台買ってましたからね。
- 田中
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すごい。

- 糸井
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「いいぞ」って思えるまでが、ちょっと大変っていうか。
だから、どこかで受け手であるっていうことにものすごく
誠実にやったつもりではいるんです。
- 田中
-
はい、はい。
- 糸井
-
ただ、誠実にやりきれなかった仕事っていうのは
混じりますね。「これはチャチャっとやったけど、
できちゃった」っていうのは時にはありますから。
だから、「こういう時代にそこにいるのは絶対嫌だ」
と思って。僕にとってのブルーハーツに当たるのが
釣りだったんですよね。そこでは、誰もが平等に、
コンペンションをして、その中で勝ったり負けたりで
血が沸くんですよ、やっぱり。
- 田中
-
この間してくれた話しがおかしかった(笑)。
「釣りを始めた頃は、ちょっと水たまりを見ても、
魚がいるんじゃないか」って(笑)。
- 糸井
-
そう見えたの(笑)。
正月は正月で、温泉旅行に行った時に、まったく
根拠なく、海水浴やるようなビーチで、一生懸命
投げてる。
- 田中
-
(笑)何か釣れましたか、その時は?
- 糸井
-
まったく釣れません。
- 田中
-
(笑)

- 糸井
-
根拠のない釣りですから。
でも、根拠がなくても水があるんですよ。
あのね、僕にとってのインターネットって、
水なんですよ。
- 田中
-
なるほど!
- 糸井
-
今、初めて説明できたわ。
水があれば、水たまりでも魚はいるんですね。
それが自分に火を点けたところがある。だから、
僕の「リンダリンダ」は、水と魚です(笑)。
初めて釣れた1匹っていうのが、田んぼの間の
水路みたいな静かな川で、突然ひったくりに遭って
「俺の大事な荷物が今盗まれた!」っていう瞬間
みたいに、パーッと糸が引かれるんですよ。
その喜び。これがね、俺を変えたんじゃないですかね。
- 田中
-
なるほど。その話が、まさかインターネットにつながるとは。
- 糸井
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「広告から逃げ出したいな」っていう気持ちと同時に、
「水さえあれば、魚がいる」っていうような、期待する
気持ちに、肉体が釣りでつなげたんでしょうね。
- 田中
-
なるほど。
僕が思ったのは、肉体の重要性がすごく大事だなと思って。
- 糸井
-
「ご近所」って、物理的な「ご近所」もありますよね。
- 田中
-
そう。だから、ちょっとね、体を動かそうと思ってきましたね。

- 糸井
-
もしかしたら泰延さんは、バンドを組むことなのか。
- 田中
-
バンドを組む(笑)。
「高校時代やってたバンドの名前は、
「ヒロノブ&ジ・アザーズ」ですから。
- 一同
-
(笑)
- 田中
-
「これは誰が聞いてもひどいと思うから、ひどい中で
不機嫌に弾いてるお前たちは、たぶん『最高』って
言われるよ」って(笑)。
- 糸井
-
あぁ、すごいね、それは。
- 田中
-
俺が、「どうも、ヒロノブ&ジ・アザーズです」って言うと、
みんな、「チッ」って言いながら演奏始めるわけですよ(笑)。

- 糸井
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その発想は、1回やったことがあって、イッセー尾形さんの
会社が、「株式会社ら」っていうんですよ。
- 田中
-
ら?
- 糸井
-
「イッセー尾形・ら」。
- 田中
-
あぁ、その他の人たちなんだ(笑)。それはひどい(笑)。
- 糸井
-
独り芝居で、全部イッセー尾形が前に出るわけですから、
「それでどう?」って言ったら、「最高」って言って。
- 田中
-
すごいですね。
- 糸井
-
アザーズどころじゃないか(笑)。
<つづきます>