もくじ
第1回IKEUCHI ORGANICを選んだ理由 2017-05-16-Tue
第2回モノづくりで一番大切なこと 2017-05-16-Tue
第3回これからのモノづくり、人づくり 2017-05-16-Tue

「40歳は、戸惑う」に共感する39歳のタオルソムリエです。メーカーでマーケティング・広報を担当しています。妻がジャイ子です。

長く愛されるモノづくり

長く愛されるモノづくり

担当・コットン

第2回 モノづくりで一番大切なこと

池内計司さんは1949年、愛媛県今治市で生まれます。
大学卒業後は先代の父が興した会社である「池内
タオル(現・IKEUCHI ORGANIC)」ではなく、松下
電器産業(現・パナソニック)へ入社。パナソニック
で、テクニクスというオーディオブランドの営業企画
として配属されます。

「当時のパナソニックは事業部が51あって、オーディオ
部門は下から2番目に利益が出ていない部門でした。
入社して最初の一年はいろいろなところに配属されて
実習を受けるのですが、オーディオの仕事ができない
なら、会社を辞めますと言い続けていたら、こんなに
人気がないところに来たがっている奴がいると珍し
がられて運良く配属されました。そして、当時の
上司が、君をこうやって育成するよと10年分の
スケジュールをくれたのです。」

入社して3年以内に30%の人が転職してしまう今の
世の中から考えると、1人の新卒にたいして、上司が
入社後10年間のキャリアプランを考えてくれるなんて
、時間軸が違いすぎて驚いてしまいます。

パナソニックの創業者・松下幸之助さんの考え方も
深く影響していたのかもしれません。
「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら、
松下電器は人をつくるところです。そのついでに、
電気器具もつくっている」と答えたと言います。

テクニクス担当として配属されてからは10年間の育成
プランに基づいて、見習いから始まり、営業、広報を
経験して、最終的には、一番大事な製品の価格決裁
まで関わるようになります。


池内さんが担当した、テクニクスのターンテーブル
SL-1200は、70年代から80年代のクラブ・ミュー
ジックとDJカルチャーに欠かせない機材となり、
音楽シーンの発展に大きな貢献を果たしました。

2010 年に生産終了を発表した際は、
「大好きなテクニクスへ最後の手紙」
という特設サイト
にあるような、たくさんのユーザーから感謝の声が
届いたようです。テクニクスはレコードプレーヤーなどの
オーディオ機器としても名機として評価が高く、
国内外問わず数々の賞を受賞します。

「テクニクス製品のコンセプトは、原音忠実。
アーティストという芸術家がいるのに、芸術家に対して
僕らオーディオが色付けするって芸術に対する冒涜
でしょ?アーティストの音をそのまま伝えるのが
テクニクスの心ですって説明していました」

この話を聞いて、元の素材から厚化粧をしてまで、商品を
よく見せようとしない点がIKEUCHI ORGANICの考え方
に似ていると感じました。

「あんまり意識してなかったんだけど、あるとき
テクニクスの連中に、今、池内がやっていることは、
テクニクスそのものだと言われて、そういえばそうかも
しれないと。」

今日、池内さんに一番聞きたかったことを質問して
みました。モノづくりで一番大事なことは何ですか?

「それはもう、作り手の想いを伝えることでしょう。
僕がパナソニックで働いていたときは、企画系の部署
が商品企画と営業企画という2つにわかれていて、
商品企画は完璧に技術の中の企画なんですよ。
営業企画のほうに、商品企画の言っていることを理解
できる人間が常にいなくてね。技術だけ考えているのも
悪くないんだけど、微妙に市場にあわないところが
あったり、技術の想いを営業が理解できなかったり。
だからよく、営業企画の仕事は何?と聞かれて、
通訳ですって答えていました。」

工場と技術の想いをエンドユーザーに伝える。当たり前
のような答えかもしれないけど、作り手は、技術の想い
を伝えるだけの製品にしないといけないし、想いを
伝える側は技術的な側面まで理解しないと、作り手の
想いを伝えることはできません。
簡単なようでいて、ものすごく難しい、
重みのある一言です。

<つづきます>

第3回 これからのモノづくり、人づくり