もくじ
第1回天職に出会いたかった 2017-05-16-Tue
第2回天職はゴールじゃない 2017-05-16-Tue

IT企業での勤務を経て、フリーのライターに転身。様々な媒体で執筆を経験したのち、現在はスタートアップ企業で活動中。

「天職」ってなんだろう?

「天職」ってなんだろう?

第2回 天職はゴールじゃない

指標にしていた天職の定義が、ぼやけてしまって、
進む方向がわからなくなっている。

これはもう、自分のなかだけでは、答えがみつからないとおもった。
だから、思い切って聞いてみることにした。

「天職って、なんだとおもいますか?」

同じ時期に社会にでて、同じように紆余曲折しても進み続けている
友人3人に、メッセージを送った。

3人とも、数年前までは、就活生なら誰しもが憧れるような企業で、
会社員をしていた。

だけど、みんな気持ちがいいくらい潔いよく、すっぱりと仕事を辞めた。
そして、自分らしく生きられるフィールドへ軸をずらし
いまも奮闘している。
わたしにとっては、眩しい存在だ。

実は、メッセージを送ることを、ちょっとだけ躊躇した。

わたしは、就活生でもない。
できれば、はたらくについて、教える側に立っていたい年齢だ。
はたらくに悩むには、遅すぎる。
いまさら、何言ってるの?とおもわれても仕方ない。
多忙な毎日を送っているのに、付き合ってもうのも悪い気がした。

だけど、やっぱり話を聞いてみたい。
ドキドキしながら、送信したメッセージに、
みな次々と、しっかりと返信をくれた。

マッサージ師として活躍している、じゅんこさん。
難しいね……という前置きがあったうえで、こう続いていた。

『天職とは、自分が続けていきたいと思えて、人の役に立てること。
あとは、やっぱりある程度はうまくいっているという実感も必要。』

人の役にたてること。
わたしは、そこまで意識が向いていなかった……。

今の仕事は天職だと思う?と、聞いてみる。
はたから見ていて、好きなことを仕事にしていて、
ノビノビと心地よくはたらいているようにみえていたから、
どう感じているのか知りたかった。

『うーん……。
やりたいことをやっているとは、思う。
やりたいことから目をそらしていないから、気持ちも楽だし、
仕事の内容も、あっている気がするし。
とはいえ、今の仕事が天職かどうかは……正直、わからない。
もう少し続けてみたら、答えがでるかもしれないな。』

地元に戻って、ライターをしているりえさん。

彼女が東京にいたころ、仕事終わりに会っては、
お互いの近況を、よく話した。
まだ、彼女は企業の一員で、次の道を模索していた。
悩むよね、でもがんばろうね。
そう言いながら、帰路についた日々を思い出す。

『今の仕事は、胸を張って「天職です」って言えるほどの確信は、
実は全然ない。

18歳のころ、自分が求めていたおしゃれで、かっこいい世界とは
真逆のところにいるしね……。
18歳の自分に、今の状態を伝えたらショックをうけるかも(笑)

だけど、不思議と、充足感はある。
それは、わたしが持っている想いを、仕事を通して、
きちんと果たせているからだとおもう。
人の役に立っているし、結果になっているっていう
実感もある。

もちろん、理想としているかっこいい世界でも
今と同じように仕事ができれば完璧だけど。

たぶん…それぞれがもっている、本質的な使命とか、
ミッションみたいなものを、埋められるようなものがみつかると、
それが「天職」になっていくのかもしれないと思う。

もしかすると職種は、なんでもいいのかもしれないね。』

最後の一言が、ずんと胸に響いた。
理想とする職種に囚われて、仕事内容よりも
職種を優先してきたことがよみがえる。

彼女が地元に戻ってから、送られてくるメッセージや、
たまに会えたときの笑顔には、余裕や充足感があって、羨ましかった。
その理由が、わかったような気がした。

『自分がやりたいこと、自分ができること、自分が求められていること。
この3つが全て揃っていたら、間違いなく天職だと思う』

こう教えてくれたのは、友達と企業をしたヤマザキくん。
バリバリの営業マンで、華やかな世界にいた彼。
楽しそうに仕事をしていたから、会社をやめるといったときは
心底驚いた。

『でも、3つが全部そろう人って、現実には、すごく少ないと思う。
とくに、自分がやりたいことが、他人にも求められるって、
難しいし、幸運なことだと思ってる。
俺は、自分のやりたいことが、いまは求められていることではないって
わかっているんだよね。』

今でも覚えている。
明日、仕事やめるんだ。
そういったときの、晴れやかな顔。
やりたいことに進むんだなと、そうおもっていた。
だけど、その裏にあった葛藤をはじめてしった。

「だから、自分ができること、
そして求められることを仕事にしようとおもったかな。
それなら、マッチする可能性って高いし、達成感とか、
誰かの役に立っているって実感も得られる。
そうすると、モチベーションもあがる。
本人が、どう思うかは別として、客観的にみた場合は、
それも天職だと思うんだよね。」

そして、最後に記されていた一言は、
まだまだ頑張らなくちゃ、と背中を押してくれた。

『とはいえ、やっぱり自分がやりたいことを
充したいっていう気持ちは忘れてない。
自分の仕事の領域が、少しでもそこに届くように、
頑張っているよ』

3人のメッセージを、何回も何回も何回も、読み返した。
葛藤を抱えても、そこから逃げずに、ちゃんとむきあってきたからこそ、
出てきた言葉たちの数々。
3人とも、「仕事」を他者との架け橋として捉えていて
やりたいことをしながらも、自己満足になっていない。
自分も、周りも変化していくことを、受け入れていた。

そして、なによりも「好きなこと」という言葉が
誰からもでてこなかった。
「やりたいこと」という、前向きな言葉がつかわれていた。

好きは、自己完結でもいい。
だけど、やりたいこと、になると現実的な要素も行動力も必要になる。
近いようで、まったく別世界だとおもう。

好きなことを聞かれたら答えられる。
だけど、やりたいことは?と聞かれると、答えに窮してしまう。
わたしのイメージする「天職」は、
ずっと「好き」の世界にとどまっていた。

メッセージを送る前よりも、恥ずかしかった。
天職という言葉を、キャッチコピーとしてとらえていたように、
理想像ばかりが先走っている、現実がおいついていない自分に
がっかりした。

結局のところ、自分が満足するかどうかしか、考えていなかった。
求められないと意味がない、という当たり前の事実も
つごうよく、端においやっていた。

似合っていないし、求められてもいない着心地の悪い服を
ずっと着ようとしていたのだ。
違和感だらけで、仕方なかったのかもしれない。

社会人11年目の春。

必死になって、天職を求めてきたけど、
天職はゴールじゃなくて、結果的についてくる、
おまけのようなものなのかもしれないと、考えている。

それに、たとえ今「天職」だとおもったとしても、
10年後には違かったと思うかもしれない。

ずっと、それが許せなかった。
天職ならば、職人さんのように、一直線に進みたかった。
だけどやっと、変わっていくことも面白いと、思えるようになった。

正直、自分の中で天職の姿が明確になったわけではないし、
一朝一夕で、答えがでるとも思わない。

だけど、
「どうやって、はたらいていきたいのか」
ということが、自分の生き方を表していて、
その生き方と、きちんと向き合っていければ、
最終的に天職に繋がっていくような気がしている。

そして、「天職」とは、辞書にのるような言葉の意味とは別に、
それぞれが、意味をもたせ、成長させていく言葉なのかもしれない。
わたしは、わたしなりの「天職」の意味を、
みつけていきたいと思っている。

(おしまい)

【最後に】
今回、わたしの質問につきあってくれた3人の友人。
それ以外にも、このタイミングでわたしに会うことになってしまった
知り合い知人、全員に「天職」について質問させてもらいました。
全員が、丁寧に、そして、心の中の本音をだしてくれたことに
改めて感謝します。

そして、この機会をくださった、ほぼ日の皆さんに、
最後まで読んでくれた皆さんに、感謝を伝えたいです。

ありがとうございました。