もくじ
第1回「夫さん」の、つかいかた。 2017-05-16-Tue
第2回アラサーの「女子会」の、つかいかた。 2017-05-16-Tue
第3回「役に立たない」の、つかいかた。 2017-05-16-Tue
「あのことば」を</br>つかうなら

「あのことば」を
つかうなら

担当・榮田佳織

第2回 アラサーの「女子会」の、つかいかた。

こんにちは。

三回にわたるエッセイ、
「『あのことば』をつかうなら」の
第二回目です。

この第二回目の記事は
いちばん気楽に書いたので、
この記事を読むために
貴重なお時間をくださっている
みなさまにおかれましても、なにとぞ
ひまつぶしになるかならないか程度に
気楽に読んでいただけますと幸いです。

唐突ですが
女性のみなさん、「女子会」してますか?

わたしは、
女子会をしていると言えるのかどうか、
ビミョウなお年頃になってきました。

この文章を書いているいま、
わたしは31歳。

わたしはわりと友人から
つっこまれやすい性格なこともあり、
もしもわたしが「昨日、女子会で〜」なんて
友人に言おうものなら、すかさず
「おまえもう女子じゃねえだろ!」という
全力のつっこみを受けてしまいそうです。

なんて暴力的。

こちとら、自分の年齢と
社会的な見られかたくらいは
うすうす気づいているのです。

それでも「女子会」ということばを出すのは
ただ、
「女性同士でこんな楽しい会合をしたのですよ」
という話を報告して、
楽しい気持ちを分かち合いたいだけなのです。

わたしはいやなことは
すぐ忘れてしまうので
あんまり覚えてないのですが、
たぶん
「もう女子じゃねえだろ」つっこみを
受けたことがある気がします。

そんなつっこみを避けるために、
女友だち同士でごはんを食べに行ったことを
誰かに報告しようにも、
「女子会」というワードを
つかうことを自粛してしまう
お年頃になってしまった
30オーバーのわたし。

まあ、
女子会ということば自体がそもそも
流行りが少し過ぎてしまった感も
あるのですが‥‥。

たぶん、すこし待ってたら
消費意欲旺盛なわたくしども
アラサー以上女性でのお食事会を
言いあらわす
「女子会」よりも
もっとぴったりなことばが、
どこぞの広告代理店さんか
どこかのマーケティング専門家さんから
生み出されそうですね。

こちら(アラサー女性)の
承認欲求も満たしながら、
世間の「イラッと」もうまない
絶妙でキャッチーなことばがあれば
きっとわたしなどは喜んで
そのことばをつかいますので。

それでも、そんなわたしでも今
「女子会」ということばをつかいたい!
「女子会」ということばをつかわないと
この会合をうまく言いあらわせない!
‥‥なんてときに、どういうふうに
「女子会」をつかえば
「もう女子じゃねえだろ!」の
返り討ちに合って、
無用な傷を負う、なんて事態を
避けられるのか。

考えました結果、
「女子会」と言うことばを出すときには
「もう女子じゃねえだろ」を
あらかじめつぶすための
文句を添えたいと思います。

カウンターとしての添え文句の
肝となるのは、
ズバリ
女子、ということばに含まれる
若さ、少女性、きゃぴきゃぴ感をつぶすこと

そのために、
詭弁をもちいたいと思います。

女子プロゴルフ、とか
女子短距離走、とか
スポーツはおとなになっても
年齢関係なく
「女性の部」みたいな意味合いで
「女子●●」と言いますよね。

これと同じ意味なんだよ、
女子会は、で通そうと思います。

スポーツはそれ自体が
若さを象徴するもの側面もある
気はしますし、
しっかりとことばの成り立ちを
調べたとしたら不都合な事実が
出てくるかもしれませんが
あまり深く考えずに
早口でまくしたてれば
煙にまけそうな気もします。

では、じっさいに
言う場面を想定して
シミュレーションしてみます。

「昨日、女子会したんですよー!
あ、女子会っていっても
この場合の女子っていうのは、
女子プロゴルフ、とかと同じ
『女性』っていう意味での女子会ですよ。

あれって、別に若い女性のみが
しているわけじゃないじゃないですか。

女子、って言ったときのことばの意味合いには
ふたつあって、
ひとつが『若い女性、少女』の意味。
もうひとつが、『女性全般』の意味。

ひとつめの意味の女子で
わたし若いですよ、まだ女子ですよ、っていう
アピールで言っているじゃないですからね。

『女性だけであつまって飲み食いする会』を
いちばん端的にあらわすことばが
いまのところ『女子会』しかないんで、
女子会って言ってます。
それでね‥‥。」

どうでしょうか。

このセリフを早口で言えば、
おそらくたいがいの相手はもう
ぽかんとあっけに取られるか
たいそうかたい苦笑の表情を
浮かべるかしかなくなり
「おまえもう女子じゃねえだろ」口撃を
繰り出してこないのではないでしょうか。

この添え文句を出すことにより
こいつヤバい、と思われて
うらで変なあだなつけられたり、
話しかけても「ちょっと忙しいんで」とか言われて
あんまり話を聞いてもらえなくなったり、
とかするかもしれません。

ですが、
たいそう強力な
「おまえもう女子じゃねえだろ」口撃を
未然に防げる奥義ですので
その代償として受け入れざるません。

では
「女子会」のつかいかた、まとめ。

アラサーの「女子会」の、つかいかた。
「女子会」という響きで
聞き手が想像する
若さ、少女性、きゃぴきゃぴ感をつぶす
添え文句を早口でまくし立て、
「女子じゃねえだろ」口撃を受けることを
未然にふせぐ。

そうしながら
「女子会」よりも自分たちにフィットすることば、
つまり
おそらくそのうちマーケティングのために
生み出され広められる、
自分たちをターゲットとした
あらたな「女性の会合」をあらわす
トレンド用語の登場をまつ。

第3回 「役に立たない」の、つかいかた。